第一章 7 チャラそうなやつは大体いいやつ
視線を前に戻すと紗希が廊下側の自席からこちらにやってきた。
俺の隣まで来ると後ろの千枝さんを一瞥してふむと頷いた。
「早速女の子に声をかけたようね」
「なんか人聞悪いぞ、それ…………」
紗希は腕組みしながら微笑した。
「でも会話はそれほど弾まなかった様子だけど」
「今日はモチベがないんだってさ」
「モチベ?…………確かにとてつもなく無気力な顔をしているわね」
「さすがに失礼だろ……いや、そうなんだけどさ……」
紗希の包まない発言は初対面だろうと関係がない。
「まぁいいわ。七海、昨日言っていたハンバーグを作りにいくから学校終わりに夕飯の買い物に付き合って頂戴」
「あーそれなんだけど」
俺は紗希に急用が出来てしまったことを伝えようとしたところ、一人の男子生徒が俺達に声をかけてきた。
「おいっすはつよろ〜!今ちょっといい?」
歯並びの良さを見せる満面の笑み。ピアスがチラリと覗く。
「よろしく。どうしたん?」
「今日の放課後、クラスで親睦会をやろうって話になってんだけど、よかったら二人とも参加せん?」
「親睦会かぁ。いいね」
「お!そしたら……伊達だっけ?と雨倉さんも参加ってことでいい?」
「あー折角誘ってもらって悪いんだけど………」
「私達はいかないわ」
紗希がすげなく断った。自然と俺も含まれている。
「えぇ!!まじかぁ〜。俺、雨倉さんと話してみたかったのに……」
「紗希だけかよ……」
「おー……ついでに伊達も仲良くなれたら最高だよな!」
「取ってつけた感すごいなおい……」
チャラそうなやつだが、悪くない印象だ。俺が言うのもなんだけど。
「うーん、じゃあ二人とも不参加って感じか」
「ごめんな。折角だけど今日、予定あるんだわ」
「…………予定?」
紗希が少し不機嫌そうに俺を見る。
「紗希ごめん。今日、龍くんに呼ばれてるから飯は大丈夫」
「…………………あ、そ」
紗希は踵を返すと返事を待つことなく自分の席へ戻っていった。
「あー………よかったのか?」
「まーしゃーないよ。そのうち機嫌を直すさ」
「ふーん。雨倉さんってすげー可愛いけど性格きつそ」
「ノーコメントで」
紗希は地獄耳の為、不用意な発言をしないよう心掛けねばならない。幼少期からの鉄の掟だ。
「あ、俺井口亮。亮でいいよ。LINE交換しようぜ」
「伊達七海。改めてよろしく」
俺と亮が今度遊びにいく約束をしたところで、チャイムが鳴った。
紗希はチャイムが鳴るとすぐに帰ってしまったようだ。
俺は今度埋め合わせをすると紗希にLINEを送り、家に一度帰宅してから龍くんの店へ向かった。
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