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ヤンデレの時代は終わりだ!!!  作者: 松岡由樹
第一章 千枝春乃
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第一章 62 不幸は突然降ってくる

一応彼氏である手前、何も言わないのも悪いかなと思い、間に割って入る。


「すみません、この子俺のツレなんで他あたってもらえます?」


顔の左半面にタトゥーが入っている細身の男が初めて俺に視線を向け、威圧的な態度で一歩詰めよってきた。


「おお。君が彼氏。それは分かったわ。で?」


「いや怖がってるし、あなた達にはついてかないと思うんで時間の無駄だと思いますよ」


「あ、そ。話はそれで終わり?」


「終わりというか……」


「んじゃ、邪魔だから引っ込んでろよ。テメェみたいな奴といるより俺達と遊んだ方が楽しいっしょ」


俺を突き飛ばし、ゲラゲラ笑う細身の男。

片割れの方が俺に向くと、少し驚いた様子を見せ、ニタニタと嫌な笑みを浮かべた。


「あれれ、彼氏くん結構イケメンじゃん」


「あ?それがどうしたんだよ」


「ほら、ジャジーさん呼べば喜ぶんじゃねぇかと思ってよ」


「……あぁ、なるほどなぁ」


襟足が長い男はスマホを取り出し電話をかけ始める。

春乃は俺の背後に回って逃げようと囁いた。


「予定変更。折角だしみんなで楽しく遊ぼうや。彼女ちゃんもそれだと安心だろぉ?」


俺の頬をペシペシ叩きながら肩に手を回し、動けないようにしてくる。


片割れは俺達の背後にポジションを移して、春乃に触れようとしながら抵抗を見せている姿を楽しんでいた。


どうしたものかなと考えているところに、襟足が電話で呼んだ新手だろう、太った髭面スキンヘッドの男がノシノシやってきた。


「お前達のトチ狂った女癖にゃ閉口してたが、たまには役に立つじゃねぇかぁ」


「ジャジーさんちわっす。いや、ぜってぇタイプだろと思いまして」


「俺達、ジャジーさんには世話になってますから!」


襟足は、欲望がそのまま体を成したような油ぎった男に諂いながら、俺の肩に回している腕の力を強めた。


「…………おうおう。これは、確かに上玉……い、いや……さ、最高にタイプじゃねぇか!!!」


ジャジーさんと呼ばれる髭面のデブが俺に顔をぐっと寄せ、舌をチロチロさせながら頬を赤く染める。

俺はその吐息の臭さに顔を顰めた。


「う、う、く、くせぇ」


「ゲフヘフ!いい反応するなぁオメェ。やばい、楽しみに取っておこうと思ってたけど、ちょっと味見ィ!!」


そういうとジャジーとかいう男は、顔を更に近づけたかと思うと、俺の頬を両手で挟み、こともあろうか、俺の唇に、糞髭デブの唇が、貪るように当てられたのだ!


「ンンンンんンンンンンンンンっっつ!!!!!?」


「じゅぶじぇべじぇぶじぇべべぢゅぱじゅば」


「い、いやぁぉぁぁあ!!!ななななみくーーーーーーーん!!!!!?」


「「ギャハハハハハハハハハハハ!!!!」」


春乃の悲鳴とタトゥーコンビの笑い声が聞こえる。


え、うそ、何くさい、きもちわるい、え、ボォえええええええええ!!


「んーーーっぼ…………ふぅ。ヤバいヤバい、すげぇ興奮してきだぞぉ」


永遠とも思われた無間地獄。

まだはっきりと現実が認識できない。


「うそ、わ、わたしの七海くんが汚されちゃったぁ……」


春乃の声が薄ぼんやり聞こえる。

意識は遥か遠くに、飛んでいたが、口元の悪臭で冷水をぶっかけられたが如く、唐突に覚醒した。


このド腐れ外道、お、俺にキスしやがった!!?


「ヴォォエエ!!………こ、このゴミ屑野郎、お、俺になんてことしやがる!!」


「おいお〜い。こんなの序ノ口の序ノ口だぞぉ。お前は今から立派な雄豚に生まれ変わるんだからなぁ」


「ジャジーさん、やっぱりパネェわ。早くこいつらの意識刈り取って運んじゃいましょうよ」


「な。俺もこの可愛い子ちゃんで楽しみてぇしな」


ゲラゲラ笑っている姿に、俺はかつてないほどの怒りを覚えた。

刺し違えてもいい、絶対に殺す。


俺は拳を握りしめ、こいつらに殴りかかろうとした瞬間、細身の男が吹き飛んだ。


「グェ!」


それに続き髭面と襟足も立て続けに吹っ飛び、泡を吹きながら仰向けに気絶した。


「過激なナンパ行為は強制退場。お前ら出禁な」


ま、聞こえてねーかと今別府さんは首に手を当てながら、伸びている3人を運ぶよう部下に指示を飛ばした。


「遅くなって悪いな」


「…………………いや、ありがとうございます」


俺の死んだ目と下を向きながらぶつぶつ言っている春乃を見て、何かを察したように俺の肩を優しく叩いた。


「泥酔者の介抱だと薬で眠らせた獲物を外に連れ出すっていう悪質な奴等がいるけど、こいつらもその手の輩だな。こういうクズは警察に突き出したいがそうもいかねぇのがクラブセキュリティの泣き所よな」


「……………」


「あーまぁ、人生色々あるから。そこまで気を落とすな。犬に噛まれたとでも思っとけ」


「…………………………………うす」


俺は腹からブルブルと震える不快感を押し殺して、記憶の底に封印することにした。


俺は俯いている春乃に声をかけて地下のフロアに行こうと声をかけた。


「七海くんは女の人だけじゃなくて、男の人にも狙われちゃうんだね…………わたしの認識が甘かったよ……こんなんじゃわたし、七海くんを守れない……やっぱりこうなっちゃうなら……」


「男の人に狙われるとか、い!う!な!」


ぶつぶつ言い続ける春乃にチョップを入れて現実に引き戻し、龍くんがいる地下フロアへ移動した。

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