第一章 60 クラブセキュリティの人イカツすぎ
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イベント会場であるクラブの前にはthe パリピといった風体の若い男女が列をなしていた。
場内に入る為にはセキュリティのボディチェックと身分の確認を済まさなければならず、そこで凶器を所持していたり未成年とバレた場合は、入り口で弾かれてしまうのだ。
俺は春乃を連れ、並んでいる人を無視して入場口まで進むと、胸元に白字でSecurityと書かれた黒いTシャツを着ているゴリマッチョのイカツイ人に声をかけた。
「すみません」
「あ?」
仕事中になんだこの餓鬼はといった表情を露骨に浮かべるセキュリティのお兄さん。
かなり威圧感があった。
「龍くんの招待で来たものなんですけど、入れてもらっていいですか」
マジマジと俺の顔を凝視した後、後ろで終始ビビり気味の春乃の顔も確認し、トランシーバーで何やら喋り始める。
少し経ってお兄さんが確認を終えたのだろう、態度を軟化させてニカっと笑った。
「七海くんで間違いないか?」
「はいそうです」
「後ろの子は彼女の春乃ちゃん」
「……はい」
「了解。龍からうちの会社に依頼があって、君達二人を安全に楽しませてくれとのことだから、気兼ねなく楽しんでいってくれ」
「ありがとうございます」
「それと今日の俺は二人の専属みたいなものだから、何かトラブルがあったらすぐ教えてくれ。ま、殆どは春乃ちゃんへのナンパくらいだろうけどな」
イカツイお兄さんは筋骨隆々の巨躯で先頭を歩き、エントランスの受付に話しをすると、そのまま俺達を会場に案内してくた。
今日のトランスイベントは2つのフロアに別れていて、メインフロアではDJとダンサーのパフォーマンス、地下にあるサブフロアではラッパーやシンガーによる演奏で、どちらのフロアにも行き来が出来た。
イベントは既に始まっていて、地下壕のような場内をサイケデリックな照明とスモークで演出し、ステージではDJが再生機とミキシングコンソールを操って、ドラッグのような電子音と体が揺れる重低音を爆音で流す。
広い会場は人で埋め尽くされていて、思い思いに踊ったり、酒を呷っていたりしていた。
激しい明滅を繰り返す照明、耳をつんざく電子音、狂乱する若人。
面白い空間ではあるが早々に疲れを感じるし、春乃に至っては熱に浮かされたようにポケーっとしている。
俺はセキュリティの今別府さんにドリンクを買いたいと伝えると、ついてこいと目の前の人を蹴散らしながら最短距離でバーカウンターに案内してくれた。




