第一章 44 電話ってたまにタイミングが被るよね
紗希と別れてからスマホを確認すると、龍くんから着信があった。
折り返し連絡するとワンコールで繋がる。
「お前明日予定ある?」
挨拶も抜きで早速予定を聞かれ、俺は別に何もないですよと答えた。
「そしたら落ち着くまででいいからさ、18時に出勤してくれない?団体の予約が入ったから湊と二人じゃ捌ききれそうになくてよ」
「何名くらいですか?」
「30人。準備終わってファーストドリンク作ったら後は大丈夫だから頼むわ」
「おけっす」
「助かるぜ〜」
「その代わり給料多めに頼みますよ」
「勿論」
俺は電話を切ると、そのタイミングで春乃から着信があった。
先程別れたばかりなのに何用だろうかと電話に出る。
「もしもし」
「七海くん。今大丈夫ー?」
「大丈夫だよ」
「ありがとう。さっき言いそびれちゃったんだけど、もしよかったら明日どこかにお出かけできたらなーって」
「すまん。明日はバイトだわ」
「あ、そーなんだ……なんかいきなりでごめんね」
「別に構わないよ」
「…………もしよかったら七海くんのバイト先、行ってみてもいいかな?」
「明日は予約で埋まってるからフリーの客は入れないね」
「……!ごめんなさい、忙しいのに無理言っちゃって。明日のバイト頑張ってねー」
「おう、サンキュー」
春乃は申し訳なさそうに電話の切り際にも謝り続けていた。
スマホをポケットに戻すと、すぐにまた携帯が鳴る。
表示されている名前を確認すると亮からの着信だった。
「何回も何回もしつけーんだよ!!!!」
「えぇ!!!?な、なに!!?ご、ごめん!」
俺の怒声に亮はビックリしたようで平謝りしている。
「あ、いや悪い。何度も電話を鳴らされちゃったからついキレちまったよ」
「こちらこそ何度も電話しちゃってごめ………いや?うん?今日初めて七海に電話したはずなんだけど……」
「お前からはな。それ以外に2人も連続で電話かかってきてたからさ」
「それって俺関係ないよな?」
「そうだな。んで何用よ」
「お前絶対ロクな死に方しねぇからな」
亮は電話越しにデカいため息をつく。
「……明日さ、ボウリング行くんだけどよかったら来ない?」
「明日ねぇ。何時から?」
「昼過ぎくらいからだね」
「ふーん。昼間だけだったら別に構わないぞ」
「お、ノリいいね。じゃあいつも通り場所はLINEで送っとくわ」
「おっけー」
俺は電話を切って帰り道を急ごうとすると、また電話が鳴った。
発信元は丸からだった。
俺はめんどくさかったので、そのまま応答しないボタンを押してスマホをしまった。
家に帰宅すると流しに残っていたコーヒーメーカーを片付けて自室に戻る。
俺はパソコンを起動してから音楽をランダム再生にセットして、自室を音で満たした。
念のためアラームもセットする。
ベッドに横になると存外疲れていたようで、微睡みの中、何もかも忘れて音楽に身を委ねたのだった。




