第一章 42 春乃の宣誓
3人でファミレスを目指す道中はかなり異様な空気だった。
春乃はアピールするように俺と腕を組んで歩き、紗希は少し後ろで能面のような笑みを湛えてついてくる。
会話は勿論、目線さえ誰も合わせずに無言で歩を移す様は少し笑いが込み上げてくる程だった。
ファミレスの店員さんは、俺達の組み合わせを少し不思議そうに眺めて、一寸遅れて席へ案内してくれた。
春乃は腕を組んだまま、俺の隣に座り、紗希は対面に腰を下ろした。
「何をそんな警戒しているのか分からないけど、この前言った通り、私は千枝さんのことを応援しているから安心してほいのだけれど」
タッチパネルで注文を終えると紗希が口を開いた。
「そんなのなんとでも言えるよ」
春乃の言葉にあらあらと首を傾げた。
「腕を組んでるところを見るに、めでたく七海と付き合うことになったのでしょう?」
「そうだよ」
「なら、彼女として大きく構えていればいいじゃない。狭量だと嫌われるわよ」
「……普通、付き合っている人が異性と二人っきりで会っていることを認めるなんてありえない」
「どうして?」
「どうしてって……」
「何故、付き合っている程度の関係性で相手を縛ることができると思えるのかしら。私からすればその思い込みの方がおかしく映るわね」
「……あなたは何を言ってるの」
春乃は構っていられないといった風に頭を振った。
「七海くん、縛るわけじゃないけど、わたしは他の女の子と二人でいることには耐えらないよ。やめてほしい」
紗希は俺の返しを予想しているのか、心底楽しそうに笑いを堪えている。
若干、やつの考え通りに動くことを嫌に思ったが、仕方ないと諦めた。
「それは聞けないお願いだな」
春乃は俺の言葉に固まった。
「別に紗希のことは幼馴染としか思ってないし、春乃が気にすることはないよ」
「……それならなおのこと!」
「だから俺は紗希の行動にとやかく言うつもりもないし、俺の気分次第で誰と過ごすかは決めるさ。それが嫌なら付き合う話はなかったことにしてもいいよ」
「なんでそんなこと言うの……」
懇願するように、俺の手を強く握りしめてくる。
「フフ、付き合った当日に別れ話なんて傑作ね」
「………っつ!」
人を煽らずにはいられない紗希に、春乃は怒りの形相で立ち上がろうとしたが、俺は膝を押さえてそれを止めた。
「なんで雨倉さんの味方をするの……」
「味方をしたわけじゃないよ……それでどうする?」
「……」
春乃は血が出そうな強さで唇を噛んでいたが、俺の手を握る力を緩めて、決意を宿した瞳で俺を見る。
「雨倉さんのことは好きじゃないんだよね?」
「まぁな」
「……地味に傷つくわね」
「なら、大丈夫。他の人と会う暇がないくらい、わたしと七海くんが一緒にいればいいもん」
春乃の宣言は意外にも凛として、俺の耳朶を打った。




