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ヤンデレの時代は終わりだ!!!  作者: 松岡由樹
第一章 千枝春乃
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第一章 39 泊まっても発展できないけどネ

3階の部屋に戻り、ベッドに腰掛ける。


春乃は階段を上る時も俺から離れようとはせずに抱きついたままだった。


「おーい、そろそろ暑いから離れてくれんかい?」


「…………」


俺の言葉に返事をせず、代わりに抱きつく力を更に強めた。


仕方ないと諦めて、春乃の頭に手を置く。


「七海くん、あったかい……」


「まぁ、生きてますから」


「……そーいう意味じゃないよー」


俺の太腿に頭を乗せてベッドに横たわる春乃。

クスクスと笑いながら俺の手を一本一本愛おしそうにもて遊ぶ。


「だれかと絆を結べるって、こんなに嬉しいことだったんだね」


「大袈裟だな」


「んーん、大袈裟じゃないよ。わたしは、初めて空気じゃなくなった気がするもん」


「透明人間もこれにて廃業かぁ」


「……七海くんってやっぱり、ちょっといじわるだよねー」


春乃は体を起こしてジト目で俺を見る。


「そうかな?」


「そうだよー」


俺は足が痺れたと春乃に言い、椅子に座り直した。


名残惜しそうに春乃が俺を目で追う。


「親に無視されてたのは分かったけど、今まで友達とかはいなかったん?」


春乃が俺との関係をかなり重い位置に据えていることを感じ、予想はつくが一応聞いてみた。


「いなかったかな。たまに話かけてくれる人はいたけどねー」


春乃は特に何の感慨も無さそうにそう言った。


「わたしのことより七海くんのこと、もっと教えてほしいなー」


「俺のこと?」


「うん。ご両親のこととか、お友達のこととか」


春乃は枕を抱きながらこちらに顔を向ける。


「そーねぇ…………母親は早くに死んで、父さんがずっと育ててくれてるな」


「……そうなんだ」


「ほんで、父さんは全国津々浦々を走り回るトラック野郎。いつもサングラスをかけてるちょっと痛いオッサン」


「ふふ、七海くんのお父さんだからカッコいい人なんだろーね」


「まぁ趣味はどうあれ感謝はしているかな」


久々の休みで、今頃何をしているのだろうか。

いつも通り、焼酎をお供にトラック野郎の映画を見返しているのかもしれない。


「でも、トラックの運転手さんだったら凄く忙しそうだねー」


「働き方次第だけどな。うちはバリバリ働くタイプだから結構家を空けてたよ」


「そっかぁ」


春乃は嬉しそうに笑っている。


「どうしたん?やけに嬉しそうだけど」


「……だって、わたしと七海くんの環境が少し似ているなと思って」


俺はちょっとしたことで共通点を見つけようとする春乃に思わず吹き出した。


春乃は笑うことないでしょーと甘い声で抗議しながら枕をポスポス叩いている。


「まー俺の場合は、紗希とみこがいたからな。あいつら、ガキだったくせになんやかんやと俺の世話を焼きにきてたからなぁ」


「……………雨倉さんはわかるけど、みこってだーれ?」


「ん?俺の元カノ。フラレたけどな」


「……………その人は今、どこにいるのー?」


声のトーンが低くなる。


「芸能事務所に入って、単位の緩い高校に行ってる。家も一人暮らしになったから最近全く会わんなぁ」


「そっか」


春乃はほっとした様子でため息をついた。


「まぁそのうち色々紹介するよ。さっき言ったバイト先にわりと集まってるからさ」


「……うん、わかったよー」


俺は話がひと段落したので、立ち上がって椅子を戻した。


「今日は帰るよ。父さんも久しぶりに帰ってきてるし」


「え……明日休みだから泊まっていけばいいのに」


「それはまた今度な」


春乃に近づき、軽くキスをする。

ぽっと頬が赤く染まった。


「うぅっ……ズルいよー」


「付き合ってるんだから焦らなくて大丈夫だよ」


俺の言葉に渋々頷くのを確認して、部屋を出る。


春乃は恨めしそうに俺を玄関先まで見送ってくれた。


外に出ると少し暑い。


日は傾き始め、夕暮れ時に近づいていた。

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