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ヤンデレの時代は終わりだ!!!  作者: 松岡由樹
第一章 千枝春乃
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第一章 21 本来の目的

最高部高度70M、時速125kmの謳い文句通り、ウルトラサバンナはレールを縦横無尽に走行した。


隣にいた塩見は終始キャーキャーと黄色い声を上げながら慣性に身を委ねていた。


俺も久しぶりのジェットコースターは思っていた以上の爽快感で、悪くない気分だった。


ウルトラサバンナから降りると、対照的に千枝さんは青ざめた顔色でかなりヘロヘロになっていて、俺と亮の助けを遠慮しつつ覚束ない足取りで歩いていた。


俺達は近くのテラス席に千枝さんを座らせると、飲み物を購入してテーブルの上に置いた。


「ごめん!完全に選択ミスったかも……ジェットコースター苦手だったんだね……」


亮は申し訳なさそうに頭を掻いた。


「そしたら丁度一息つきたいし、軽く休んでこーぜ」


「……そうだね!俺もめっちゃ喉かわいてたし!」


「えー別に千枝だけ休んでて、よくなった後で合流すればいいじゃん」


塩見は頬を膨らませながら不満げにぶーたれた。


「みんな……ごめんね。ほんとうにわたしのことは気にしなくて大丈夫だから……」


目を閉じながら消え入りそうな声で謝る。


「……てかさ、千枝も苦手なことがあったら遠慮なく言いなよ。我慢される方がダルいし」


「ごめん……ジェットコースター、乗ったことなくて……」


千枝さんの初体験宣言に塩見は目を丸くした。


「え?マジ??…‥怖いから今まで乗んなかったの?」


「…………ちがうよ」


「……ふーん。ま、千枝も気にしないでって言ってるし、変に気を遣う方がダルいっしょ。二人ともいこ」


塩見は俺と亮の腕を取って歩き始めたが、それを振り払う。


「俺は千枝さんといるよ」


塩見は興がそがれたといった面持ちで嘆息した。


「えー……まぁしゃーないか。亮、いくよ」


「え、あ、あ、おう」


チラチラこちらを見る亮を塩見は引きずりながら雑踏の中へと消えていった。


「わたしなんか気にしないで、伊達くんも遊びに行ってきて…….」


「うん、気が向いたらそうする」


俺は買ってきたコーヒーをストローで吸いながら背もたれに深く寄りかかった。


園内を歩く人々はとても楽しそうだ。


子連れの家族や仲睦まじ気なカップル、猫耳犬耳をつけた女子グループに男くさい、されど底抜けに明るい笑顔をたたえた男子の集団。誰も彼もが笑顔で今日という日を満喫しているようだった。


日は高く、春の残り香を漂わせ、たまに撫でる風が心地いい。


ふと、千枝さんと溜池のある公園に行って、ベンチにでも座りながら一つのイヤホンで音楽を一緒に聴いてみたい心地になった。背景は夕暮れがいい。


夕映えの湖畔……とまでは贅沢言わず、溜池の、少し腐った藻の臭い。


流す曲は何がいいだろ。ブルース?それともシャンソン……は、さすがに気取りすぎかな……


「……ぇくん」


「ほえ……?」


白昼夢が霧散した。


恐らく何回か呼びかけてくれたのだろう千枝さんを見ると、蒼白した顔色から血色を取り戻していた。


「おきてるー?」


「ごめんごめん、ぼーっとしてた」


氷が溶け切って、水滴が垂れているプラカップを置いた。


「気分よくなった?」


「ん、ありがとうー。大分よくなったよ」


千枝さんが初めてニッコリと笑った。


「ねぇ」


「?」


「遊園地飽きたからさ、どっか外で昼飯でも食べに行こうよ」


千枝さんは戸惑ったように俯いた。


「……さすがにみんなに悪いよ。井口くんにも申し訳ないし………」


「大丈夫大丈夫。なんとなく察してるでしょあいつらも。いこーぜ」


俺は千枝さんの手を取って立ち上がらせる。


千枝さんは放心した様子で俺をぼーっと見つめていたが、特に抵抗する様子はなかったので、そのままゲートを目指して歩いていった。


途中、亮に電話をかけて帰ることを伝えると、おっけー今日は来てくれてサンキューという言葉をくれて、ますますいい奴だなと改めて思ったのだった。


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