第一章 13 趣味友がみつかるのは財産
学年集会に身体測定と必須行事をこなして昼休みになった。
体操着から着替えて教室に戻ると千枝さんは既にヘッドフォンを装着し、カロリーメイトの袋を開け、ブロック状の非常食をぽりぽり食べ始めていた。
俺は机を逆に向けて千枝さんの席とくっつけた。
教室に戻る際に売店と自販機で買った焼きそばパンとコーラを置く。
昨日の教訓を生かして、話しかける前に千枝さんの目の前で手を振りながらヘッドフォンを外す動作をした。
千枝さんは存外早く気づいたようで、カロリーメイトを袋の中に戻し、ヘッドフォンを取った。
「お昼一緒していい?」
「ん、べつにいいよー」
昨日の塩反応が嘘のように快諾してもらえた。
「昨日はテンション低い時に声かけてごめんね」
「あーただの休みぼけだったから大丈夫」
「わかる。俺も休みが長かったからずっと昼夜逆転生活だったし」
焼きそばパンのラップをはがして口に入れる。
「俺、音楽聞くの好きでさ。千枝さん、何聞いてるのかなーって気になっちゃって」
「昨日すきって言ってたもんね。えーと」
「伊達っていうだ。よろしく」
「伊達くんはどんな曲聞いてるのー?」
音楽友達を探す時の難所である。
共通の好きなアーティストを探る上で、自分の趣味に走り過ぎると話は終わるし、されどメジャー過ぎるアーティストを挙げるとお互いの趣味が分からず、上辺だけの会話で終わってしまう可能性もある。
有名だけど深く話せば音楽トークが盛り上がり、かつ、外したとしてもそのジャンルが好きなんだという好意的な印象でまとまる一手。
俺はこういうシチュエーションで挙げるべきバンドを熟考の上、用意しているのだ。
しかし、それを披露するのは今回が初めてなので緊張している。
「mobってバンドの曲をよく聞いてるかな」
千枝さんの死んだ目に少し光が宿った。
「あ、わたしも聞いてるーあれいいよねー」
「おー!千枝さんも共感してくれて嬉しい!なんか透明感のある中に変な力みたいなのがあって、どっか連れてってくれる感じがたまらなく好きでさ」
「めっちゃわかる。それでなんか心地よくなってたら、アルバム一枚聞き終わってるんだよねー」
「そうそう!あれ?もう1時間経ったん?みたいな」
「mob好きならカムカムとかも聞くの?」
「それ大好き。やば、千枝さん音楽めっちゃ聞いてるね」
もしかしたら音楽の趣味が合うかもしれないと話かけてみたが、予想以上に趣味が合ってテンションが上がる。
「そうでもないよー」
千枝さんも話せるやつがいたと思ってくれたのか、少し口角が上がった。
目は相変わらず死んだままだったが。
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