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1,000文字シリーズ

鏡の中の雪だるま

作者: おかやす
掲載日:2021/12/06

 月の光が踊る庭の片隅に、ひっそりと佇む雪だるま。

 壁にかけた鏡に映ったそれを見て、笑みがこぼれる。


 子供が遊びにでも来たのだろうか。


 生垣に隠れるように作られた雪だるま。この部屋の窓からでないと見えないところが、まるで真雪(まゆき)の心のように思えた。


 「どうしたの?」


 急に微笑んだ僕に、真雪が静かな瞳で問いかける。

 なんでもないよ、と答えて、僕は真雪を背中から抱きしめた。


 すっかり冷えたその体に、僕の温もりの全てを与えたくて、強く強く抱きしめた。真雪が喘ぐように息をつき、僕の手を緩めようと自分の手を重ねた。


 「苦しい……」

 「冷たいね。寒かった?」


 首筋に唇を這わせると、小さく震えて吐息を漏らす。頰に唇を当てると、恐る恐る振り向いて、僕の唇に唇を重ねる。


 「すごく、寒かった」

 「寒いのは苦手?」

 「苦手。夏の方が好き」

 「真雪、て名前なのに?」

 「名前負けしてるの」


 いつもツンと澄ましている顔がほころんでいた。潤んだ瞳で僕を見つめ、熱い吐息とともに僕の唇を軽く噛んできた。

 真雪の服のボタンを外し、そっと手を入れる。


 「手、温かい……」

 「君が冷たいんだよ」

 「雪の中、歩いて来たんだもの」

 「じゃ、温めてあげる」


 一つ、また一つとボタンを外す。

 ふと壁の鏡に気づいて、真雪が恥ずかしそうに身じろぎする。


 「カーテン……ないの?」

 「日の出と共に起きる主義なんだ。でも……そうだね、明日、買いに行こうか」


 これからは、君も一緒だから。

 僕の言葉に、真雪は潤んだ瞳で笑顔を浮かべ、安心したように僕に身を委ねた。


 「真雪、愛してる」

 「ふふ……知ってる。あなた、私が大好きよね」

 「真雪も、僕が大好きだよね」


 真雪は無言で、僕の背中に手を回した。


 僕たちは肌を重ね、温め合った。

 真雪の体が温まり、次第に熱を帯びていく。

 その熱に溶かされて。

 ツンと澄ました顔がほころんだように、真雪の心は、僕の腕の中でほぐれていった。


   ◇   ◇   ◇


 目が覚めたのは、随分と日が高くなってからだった。


 ぐっすりと眠る真雪。

 その穏やかな寝顔に、僕は自然と笑みを浮かべた。


 「何も心配はいらないよ……真雪は、僕が守るからね」


 真雪の頭を撫でながら、壁にかかった鏡に目を向けると、半分以上溶けた雪だるまが見えた。


 「……明日には、溶けてしまうかな」


 青空を見て、僕は笑う。


 溶けたところで大丈夫。

 真雪の心は、もう僕の腕の中にあるのだから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] きゃー!大人~! 色気が感じられる表現にスゴい!と思いながら、物語に引き込まれました~。 こんな大人に雪だるまの使い方もあるんですね♪
[良い点] 『瓢箪の巫女』の続きを読もうマイページにお邪魔して、タイトルが気になって拝読しました。 ……きゃ(>_<)♪ 間咲 様 の感想に同じです! 彼女の心と雪だるま、ゆっくり溶けていく感じに心…
[良い点] ある物語のワンシーンを切り取った感じでしょうか? 1000文字だと物足りなく感じます。 [一言] 読ませて頂きありがとうございました
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