一章/#1 女神との出会いと異世界転生
三年と二ヶ月ちょいぶりです。今作はTSモノを書いてみました。
傍点もそこそこ多くなってしまいましたが、そこはご愛嬌で……。
では、本編をお楽しみ下さい。
追記:ステータスに『INT』を追加しました。
1/15修正ステータスの「ATK、MATK」を「STR、MSTR」に変更しました
「……何処だ、此処?」
俺、神楽坂瞬人は無機質で何処までも果てが見えない空間で目を覚ました。
「あら、もう起きたの?」
目の前には整った顔立ちでプラチナブロンドの綺麗な髪の女性がふわふわと浮遊しながら話しかけてきた。
「あの、すみません、此処って何処ですか?俺、確かさっきまでゲームしてた筈なんですが」
いきなり知らない場所で知らない人に聞くのも変な感じだが、気になったので嫌な聞いてしまった。
すると、女性は言い辛そうにしながらも教えてくれた。
「ごめんなさい…………貴方はちょっとした事故によって死んでしまったの」
「……………はっ?」
内容は簡素かつ衝撃的なものだったけど…………。
そもそも何故こうなったのかと言うと──
神楽坂瞬人ことハヤトは『ロストエデン・オンライン』通称『LEO』と呼ばれる、フルダイブ型VRのオンラインゲームにハマっていた。
このゲームは既存のフルダイブ型VRMMOと比べ、#途轍__とてつ__#もなくリアリティが高く、『生命の数だけ拡がる無限の可能性が紡ぐもう一つの世界』をキャッチコピーとしたゲームで、途轍もなく多い種族選択や職業の組み合わせの自由さ、NPCの会話の自然さ、更にはスキルや魔法の創作と言ったニッチなものまで。そんなゲームの範疇を超えたシステムが全世界のプレイヤーを魅了した。
そして、サービス開始から三年。ゲーム内ギルド世界ランク一位を維持していた、ギルド《大罪の賢王》が魔王を討伐した。
「よっしゃぁぁぁ!!やっと倒せたあぁぁあ!!」
「もう三年か……」
「ええ。でもこれで《終焉世界の物語》は終わりなのよねぇ…………」
《終焉世界の物語》と言うのは、簡単に言えば全プレイヤー間で進行度が共有されるストーリーで、この『LEO』のストーリーシステムは《終焉世界の物語》のみである。
数多くの良質なシステムの中に存在する酷いシステム、つまり俗に言う『クソシステム』がこのゲームにも二つある。
一つはこの《終焉世界の物語》。
そして最後の一つはリアル故の弊害、ゲームにあるまじきシステム『死んだらそのプレイヤーデータが全ロス、及びその脳波の人間のデータを作くることが出来なくなる』と言うものだ。
「まあ、ストーリーが終わっても魔法やスキルの創作とか未踏破のダンジョンとかあるし、そう気を落とさなくてもいいんじゃね?」
「……そうね。その通りだわ」
そう言ってギルドメンバーたちは魔王討伐の余韻と共に談笑していた。
──その時だった。
バキッ、バキィィィィィン!!!とけたたましい音を立てながら先程まで魔王がいた辺りの空間を割って巨大な黒い龍が顔を覗かせていた。
「!!?」
この場にいる全員が一斉に龍に向けて警戒をする。
しかし、黒い龍は破れた空間から全身を出した後、その巨大な尻尾を薙ぎ払った。
「ぐあっ?!」
「くっ…………!」
「チィ!!」
その一撃だけでこの場の《大罪の賢王》のメンバーたちが戦闘不能まで追い込まれた。
(こいつは一体…………。ステータスを図るために……)
「『鑑定』」と一言呟き、龍のステータスを確認する。が、見たものは──。
『告死龍クロノ・ウロボロス Lv?1??6
HP:9??36??? MP:7????73?3
STR:?7?9? MSTR:??56??
DEF:??6?? MDEF:?59????8?
AGI:47???7 INT:????
LUK:0
スキル:告死ノ牙、??、?????、????、??告??滅び?詠、etc...』
「な、んだこれ……………?!」
「なんか分か──」
俺はあまりのステータスの出鱈目さに他の言葉が出てこなかった。
『LUK』以外のステータスがめちゃくちゃだったからだ。そして、少しの間固まってしまったハヤトは瞬時に考えを切りかえる。
「みんな、転移の水晶は持ってるか?!」
メンバーの一人の質問に被せるように大きめな声でこの場の全員に忠告とも言えないような忠告をした。
「あるけど、どうしたって言うのさ!?」
他のメンバーにも聞かれ、それに答える。
「あいつ……『告死龍クロノ・ウロボロス』って名前らしいんだけど、『LUK』以外のステータスがここにいる俺ら全員のステータス併せても勝ち目が無いくらいには強いな……それに所々が見れねえんだよ」
「ええ…………?何それ?」
「いいから、早──」
ハヤトが「早く水晶を使って逃げろ」と言おうとした瞬間、ハヤトは『告死龍クロノ・ウロボロス』の大きな牙に貫かれたかと思ったら、HPが0になり、目の前が真っ暗になった。
◇◇◇◇◇
そして、目が覚めるとこの空間にいたのだ。
「あの、俺らが見た『クロノ・ウロボロス』って一体なんだったんですか?読めなかった部分も含めたらLv一万を超えてたんですけど……そして一瞬にして俺のHPを全損させたあれは……………?」
「先ず、貴方を殺したあの攻撃は死龍ノ牙と言って、『クロノ・ウロボロス』しか使えないスキルなの。そして『告死龍クロノ・ウロボロス』は元々は私たちと同じ『神』だったモノよ」
「──っ!?」
あまりにも衝撃的で、思わず絶句した。正直、死んだって聞かされた時よりも驚いたかも知れない…………。
「いえ、正確に言うなら『告死龍クロノ・ウロボロス』の方ではなくて、その元となった死と再生、そして輪廻を司る蛇神『ウロボロス』の………ね」
「…………?」
俺は余計に分からなくなった。勿論『ウロボロス』と言う神については、神話などに語られている範囲でなら分かるのだが、『告死龍クロノ・ウロボロス』と『ウロボロス』の関連性が見えなかった。
「まあ、今は分からなくても時が来たら嫌でも分かるわ。…………とりあえず今は瞬人のこれからについて話しましょう」
(……今話題を逸らされた気がしたが、これ以上粘っても答えてもらえなさそうだし、まあいいか)
本当はもう少し詳しく聞きたかったが、これ以上聞いても無駄だろうと考えを切り替えた。
「………そう言えば俺ってこの後どうなるんですか?」
「瞬人には私が管理している世界に転生して貰おうかなって思ってるんだけど、どうする?このまま魂ごと天界に送るって事もできるけど……」
女神様は少し悲し気な雰囲気を感じさせる表情で此方に問いかけてきた。
(まあ、まだ死ぬにしてもやり残したこととかあるしな……いや、死んでるんだっけか。でも、もう一度チャンスがあるなら………)
瞬人は「よしっ」と覚悟を表すように一言呟き、女神に向き合う。
「転生でお願いします。……正直、まだ生きていたかったってのもあるけど、何より憧れていた異世界ですから!」
それを聞いて女神は心の底から安心したように微笑んだ。
「わかったわ。此方としても転生してくれた方が都合が良かったから」
「……?都合が良い……?」
女神の呟きに瞬人が反応すると、ゆっくりと話し始めた。
「貴方やその仲間たちが出会った『告死龍クロノ・ウロボロス』が、元『神』だという事はざっくりと話しましたよね?」
瞬人はそれに頷く。
「通常、『神』や『使徒』関係は我々の仕事なんだけど、地上にいる者に深く干渉することはご法度なのよ……そこで白羽の矢が立ったのが、あの私が管理しているもう一つの世界である『ロストエデン・オンライン』内でもトップで全ステータスが高かったハヤト、貴方よ」
「……………………は?」
今度こそ理由が分からなかった。
(は?え、今何て言ったこの人!?『LEO』が管理していたもう一つの世界!?確かにやけにリアリティが高いなぁとは思ってたけど……!!いや、でも実際ゲームで死んだ後自分の部屋で目が覚めることもなく此処にいた訳で………)
瞬人が色々と情報を整理していると、それに続くように女神が先程の話を話し始める。
「神々は地上の出来事に直接干渉できないのはさっきも説明したからわかると思うけど、間接的には干渉出来るの」
そこまで言われて瞬人は目の前の女神が言わんとすることを察した。
(なるほど、つまり力を与えて転生なりさせて地上に干渉し、元凶を倒させるってとこか?)
「半分正解って感じかしらね」
瞬人が推測していると、女神は満足そうにしながらも辛口な評価をしていた。
「んん?半分ですか?もう半分はなんです?」
考えても答えが出ない瞬人は正直に聞くと女神は答えてくれた。
「瞬人を転生させる理由としては、可能であれば倒して欲しい対象がいるのと、その他にもあと二つ……」
女神は少し溜めてから、続きを発した
「一つは貴方に今度こそ自由な人生を楽しんで欲しいのと、もう一つは貴方のスキルからの頼みもあるの」
「……え?スキルに意思が………人格があるんですか!?」
(そんなの聞いたことないぞ………いや、『LEO』でも確かにスキルにしてはテキストとか不自然なところがあったりはしたけど……!!)
瞬人は初めて聞く事に更に混乱した。スキルに人格があることもそうだが、そのスキルからの願いをこの目の前の女神が叶えようとしていることにも驚いていた。
「そのお願いがねぇ……転生体はその子の言う通りにして欲しいって言うのよ……。まあ、容姿や元々あったスキルとかにはそこまで指定はしないらしいから良いんだけど……」
「はあ……あ、そうだ。転生後のステータスみたいなのはどうなるんですかね?」
(純粋に気になるんだよな……あまり弱くなりすぎるのも大変そうだし)
瞬人が心配そうに聞くと、女神はコロコロと笑いながら言った。
「ステータスに関してはちょっと弄るだけにするから安心して。少なくとも最低限生きていける程度は残すつもりよ。それに……私、自分の子供が欲しかったのよねぇ……きっと綺麗な娘になると思うの!だから、容姿は私に任せて!」
(………今、変な変換が入った気がするんだけど…………)
女神の言った容姿について違和感を感じ、嫌な予感を拭いきれない状態の瞬人を他所に、妄想を膨らませる女神。
すると、瞬人の身体が少しづつ光と共に薄く消えて行くのを見て、女神は少し寂し気な表情をしながら手を瞬人に向け、言葉をかけた。
「瞬人、これからあちらに転生させます。新しい身体に慣れないと思うから、補助用のスキルを幾つかと、ナビゲーター代わりのスキルも与えるわ。だから、楽しんで来なさい?」
瞬人は完全に消える前に、聞き忘れていた事を聞いた。
「あの!聞き忘れていましたが、女神様、貴女の名前は…………!」
声も段々と発し辛くなりながらも、必死に声を絞り出す。
「私……?…………私の名前は───」
『──ステラフィールよ』
最後、殆ど聞こえなくなった声を聞き取り、瞬人は女神『ステラフィール』のいた空間から完全に消失した。
◇◇◇◇◇
(…………あれ、地面が柔らかい……下は草原か………?俺は確か…………てか、息が苦しい様な……)
意識が少しずつ回復してきた瞬人は、未だに若干朦朧としながらも重い瞼を開け、起き上がろうとし…………違和感がある事に気付いた………………主に胸と下半身に。
(いや、胸が…………重い…………?いやいや、そんな訳……………あっ)
そこまで考え、先程までいた女神の空間で『ステラフィール』が言っていた言葉を思い出した。
──『もう一つは貴方のスキルからの頼みもあるの』
──『そのお願いがねぇ……転生体はその子の言う通りにして欲しいって言うのよ……。まあ、容姿や元々あったスキルとかにはそこまで指定はしないらしいから良いんだけど……』
───『それに……私、自分の子供が欲しかったのよねぇ……きっと綺麗な娘になると思うの!だから、容姿は私に任せて!』
「いやいや、まさか……ねぇ………?」
つい独り言の様に呟いてしまい、気づいてしまった。声が男の物とは違い、透き通った綺麗な……そう、例えるなら、女性の声の様な──。
(ま、まさか…………!!?)
その疑問に気付いた途端、瞬人は未だに慣れない身体を無理やりに動かし近くの湖を覗いた。しかし、そこには、女神『ステラフィール』と同じ美しいプラチナブロンドの腰まで伸びた髪とこれまた精巧に整った顔立ち、大きすぎず、小さくもない胸、引き締まった腰、細い手足の美少女が映し出されていた。
そして、それを認識した瞬人は───。
「な、な…………」
「何ですかこれぇぇぇぇぇぇ(なんじゃこれぇぇぇぇぇぇ)!!!!」
森に美しい声の絶叫が木霊したのだった…………。
はい、お久しぶりでございます。朧月です。前作の11部投稿&修正から何年経ったのかなぁと恐る恐る確認してみたら三年と二ヶ月ちょい経ってしまってました。「いや、前のやつ早く出せや」と思っている方もいると思います。言い訳をすると、何度も何度も書こうとは思ってました。が、勢いで書いていたせいか、続きが思い浮かばず色々考えた結果「別の作品出して、その合間に書こう」となりました(なぜそうなったのかは自分でも分かりません)。
取り敢えずは、こちらの作品をメインで書きつつ、前作の最終話を投稿していきたいと思っております。
やっと投稿されたと思ったらいきなりTSモノが出てきて驚いたかもしれませんが、今作も暇な時にでも読んでくださると飛んで喜びます(笑)
そして、Twitterで何度か呟いてはおりますが、今作からはアルファポリスにも投稿していきますので、そちらの方もよろしくお願いします。
では、また次話でお会い(?)しましょう!