魔剣に名前を、鍛冶屋に仕事を
「やっと夏休みだにゃ〜これでのんびりできるにゃー!」
長すぎる終業式が終わりミケと一緒に家に帰るレミ。
「レミはあのゲーム買ったのかにゃ?」
コクリと頷くレミは目を輝かせている。
「よっぽど面白いゲームなんだにゃ〜それにしても全NPCに人工知能を搭載するなんてとんでもないことしてるにゃ〜あとデザイア武器? ってやつもすごいにゃ! 人の願いを武器にするとか面白そうだにゃー」
ミケの言葉に同意するようにコクコクと頷くレミ。
無表情で感情がわかりにくいが長い付き合いのミケにはレミがかなり楽しんでいるのがわかるようだ。
「レミがそんなに気にいるなんて珍しいにゃ〜!
そういえばレミはどんなデザイア武器を手に入れたんだにゃ?」
ネコミミカチューシャを直しながらミケが聞くとレミは少しテンションが下がったのか下を向いてため息をつく。
「んー? あんまり良くなかったのかにゃ? 基本は願い事に準ずる武器が手に入るって話だったけどにゃー?」
不思議そうに首を傾げるミケ。
レミのテンションが下がるのも無理はないだろう。
なんてったってレミの魔剣は……
「レミさん! 遅いですよー! 今日こそ私の名前決めてもらいますからね!」
ログインするなり喋り出す魔剣に嫌そうな顔をするレミ。
正直願いに対応してるのか疑問に思うレミだが実際に自分の願いである今と反対の自分になるという願いで発生する人格をこの剣は宿している。
つまりレミの人格が反転するとこの魔剣と同じような感じになってしまうとなんとなくわかってしまうレミはため息をつく。
「ふふ〜ん! そうですよ! 私は実質レミさんの理想の人格なんですよー! だから早く名前をつけにいきましょ〜!」
うるさい魔剣を落ち着かせるために仕方なく名前をつけることにしたレミは鍛冶屋に向かった。
「あー! レミちゃん! 」
鍛冶屋に向かうレミを呼び止めたハル。
「レミちゃんこの前はごめんなさい……これお詫びのお菓子!」
レミはハルからクッキーを受け取った。
「私の手作りですからおいしいはずですよ!」
眩しいぐらいの笑顔を浮かべながらハルはギルドに戻っていった。
レミはクッキーを口にくわえながら鍛冶屋に向かう。
村の中で異質を放つ鉄の大扉を開けるレミ。
どうやらここが鍛冶屋のようだ。
「ここは複数の鍛治職人がいるみたいですねー!
どうやら鍛冶屋になったプレイヤーもいるみたいですね!」
SDOは基本的にどの職業につくのも自由だが特殊な職業の魔王や勇者などは条件を満たさないとなれない。
鍛冶屋については条件が特になくその鍛冶屋を仕切る親方から許可が得られれば鍛冶屋の一角を借りて商売をすることができるシステムのようだ。
「どうやらあの奥にいる悪魔がプレイヤーみたいですね! まだなりたてですからあの方はやめておきましょうか……ってレミさん!?」
魔剣の言うことを完全に無視してプレイヤーの鍛冶屋の元に足を運ぶレミ。
「い、いらっしゃいませ! わ、私は初心者なので別の人のがいいとお、思います!」
かなり緊張している悪魔はビクビクと震えている。
「ほら〜この人ダメですよレミさん! 名前をつけるだけですし別の人にしましょうよー」
魔剣が忠告をするがかまわず目の前の悪魔をじっと見つめるレミ。
「わ、私でいいんですか!? そ、その、わ、私が作る武器とか防具は私のデザイア武器 混沌の槌のせいで変な効果がついちゃうんです! 名前をつけるだけでもその効果が適応されちゃうんです!そ、それでもいいんですか?」
正直剣に名前をつけにきただけのレミには関係ないがとりあえず頷くレミ。
「え!? レミさん本気ですか!? 私に変な効果つくの嫌なんですけどー!」
そんなことを言う魔剣のことなど関係ないと言わんばかしにレミは鍛冶屋に剣を渡す。
「わ、わかりました! が、頑張ります! あ、私の名前はベルです! わ、私にとってはじめてのお仕事ですが……が、頑張ります! そ、それでは名前をこの紙に……」
ベルから紙を受け取るレミ。
「かっこいい名前にしてくださいよね! この魔剣ちゃんに合うかっこいいやつですよ! あのスライムにつけたみたいに適当につけないでくださいね〜!」
その声が聞こえたかはわからないがレミは名前を書き始めるのだった。
「あれ? 私の名前は?」
「……眠い」
「え? せめて名前を書いてからって……レミさーん!」
「……」
「ちょっとレミさん? レミさん? 聞いてますかー! 名前書いてる途中で寝ないでくださいよー! 鍛冶屋の人も困っちゃうじゃないですかー!」
「わ、私は暇なので、い、いくらでも寝て大丈夫ですよ!」
「えー!? ベルさんがそんなこと言ったらダメですって! 起きてくださいよーレミさーん! ほらベルさんも起こすの手伝ってくださいよ!」
「む、無理です……じゃ、準備があるんで!」
「あ、ちょっと!…… 逃げましたね! レミさんこんな暑いところで寝たらダメですから早く起きてくださーい!」
鍛冶屋の暑さにも負けずに眠るレミなのだった,。