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冒険の拠点

 いい感じに泊まれる場所が見つからないレミは魔剣の提案を聞きハルに相談しに来ていた。


「安くて泊まれてセキリュティがちゃんとしてる場所ですか?……思い当たるところがひとつだけありますけど……」


 レミが提案したような施設に心当たりがある様子だが言いづらそうにしているハル。


「めんどくさいですねー! 心当たりがあるなら早く教えてくださいよー!」


 ハルがなかなか言わないので催促をする魔剣。


「 わ、わかりましたよ……ギルドの上の空き部屋です……案内しますね」


 ハルに連れられてギルドの上に行くレミ。



 ギルドの上にはいくつかの部屋があり長い廊下で繋がっている。

 ほとんど空き部屋のようだがいくつかの部屋にはネームプレートがかけられている。


「ここです! 多分今ある空き部屋の中で1番綺麗で広い部屋ですよ!」


 ハルに案内された部屋は広い窓側の部屋だった。

 綺麗な夕日の光が差し込む部屋に入るレミ。


「なかなかいい部屋ですね〜アイテムも結構置けそうですし鍵も付いているのでセキリュティもちゃんとしてると思いますよー70点ぐらいってところでしょうかね〜」


 勝手に部屋に評価をつける魔剣は無視して部屋の中を見るレミ。

 見渡す限り特に問題点もなくレミがなぜ言いづらそうにしていたのかわからない様子のレミ。


「普通にいい部屋なんですけどなんで紹介するのをためらってたんですか〜? まさかレミさんに隠して困る様子を見たかったんですか〜! 何という鬼畜!」


 勝手に心を読んで質問し挙句意味のわからないことを言い出す魔剣を軽く睨むレミ。

 あんまり好き勝手に行動されるのは嫌なようだ。


「違いますよ! この部屋を使うのはいいんですけどギルドに住む場合ギルドの仕事を手伝ってもらうことになっちゃうんですよ……しかも結構めんどくさい仕事が多いのであんまりおすすめしてなかったんです……ただ仕事さえ手伝えば無料で住めますよ! 私も部屋ひとつ持ってますしね」


 ハルから一通り事情を聞いたレミは少し考えるような仕草をした後ハルに向かって頷いた。


「どうやらレミさんはここを気に入ったみたいですねー

 私も文句ありませんしここで決定でいいですよー」


 魔剣の言葉に同意するようにもう一度頷くレミ。


「わかりました! じゃあこちらの紙にサインを書いていただければあとは自由に使っていいですよ!」


 レミが受け取った紙にサインを書いて渡すと部屋の扉にネームプレートが現れた。

 ハルはネームプレートを確認するとまだ仕事があるからと部屋を後にした。


「やりましたねレミさん! 私とレミさんの愛の巣ですよー!」


 気持ち悪いことを魔剣が言い出したので一旦ベッドの下に魔剣を投げる。


「レミさん!? 何するんですかー! こんな暗くて埃っぽいところに居たくないですよー! 出してくださいよー!」


 魔剣が必死に訴えかけるがレミは無視してスライムを抱えたままベッドにダイブする。

 どうやら初めてのクエストで疲れていたようだ。


「レミさん!? ベッドにダイブしてないで早く出してくださいよー!」


 魔剣がうるさすぎて寝れそうにないので仕方なく魔剣を取り出すと部屋の隅の方に置く。


「ちょっと私もベッドに入れてくださいよー! レミさんの相棒なんですからそれぐらいの権利はあるはずですよー!」


 まだ何か言っている魔剣を無視して眠りにつこうとするレミ。

 少し硬めの枕に頭を乗せて寝ようとするが現実世界で使ってる枕が柔らかめなのでなかなか寝つけないようだ。


「レミさんー寝れないんですかー? 私の能力で枕を柔らかくすることもできますけどMPが回復しきってないからもうしばらく待ってくれると助かるんですけどー」


 魔剣がそんな提案をするが今すぐ寝たいレミは魔剣の提案を無視して別の方法を考える。

 その様子を見ていたスライムは何やら考え込んだ様子を見せるとレミの枕を布団から弾き飛ばし枕のあった位置に移動する。


「何やってるんですかー? そこにいるとレミさんの睡眠の邪魔になるから早くどいてくださいよー! というか何で私が部屋の隅でスライムはレミさんと同じベッドの上何ですかー! 私の扱いスライムより下なんですかー!」

「ムッキュッキュッキュッキュッ!」


 スライムがベッドにいることに怒る魔剣だがそんな魔剣をあざ笑うかのように鳴き声をあげるスライム。

 レミはそんな2人?を無視してスライムの上に頭を乗せる。

 スライムはちょうどいい柔らかさだったようであっという間に寝てしまうレミ。


「寝るのはや!? まぁ初めてのクエストでたからていたでしょうしMPの消費も激しかったので仕方ありませんね〜」


 夢の中に旅立つレミなのだった。



 しばらくして目が覚めたレミ。

 ゲームの中で寝るのはなんだが変な感じだが現実の時間だともうすぐ11時になってしまうので仕方がないだろう。


「起きましたか〜レミさん! レミさんが寝てる間にハルさんが渡したいものがあるから受付に来てって言ってましたよー」


 魔剣の話を聞き受付に向かうレミ。



 受付に行くとハルが依頼書とお菓子を持って待っていた。


「あ! レミちゃん! よく眠れましたか? とりあえずこれがさっき言ってたギルドの仕事です! あとこっちはレミちゃんの部屋が決まった記念に私が作ったお菓子です! よければどうぞ!」


 ハルから依頼書とお菓子を受け取るレミ。

 依頼書の内容を確認しながらお菓子を頬張る。

 その様子を見て満足気な様子のハル。


「そういえばスライムの名前は決まりましたか? 一応明日までなので早めに書いてもらえると助かるんですけど……」


 そういえばそれも決めないといけなかったことを思い出したレミ。

 少し考えているとまた魔剣が勝手に喋り出した。


「あんな魔物の名前なんてなんでもいいじゃないですかーというか私の名前も決めて欲しいんですけど!」


 魔剣が愚痴を言うがスライムの名前を考えるレミには聞こえていないようだ。


「……マクラ」

「マクラですか! なんだか……いえいいと思います!」

「あーさっき寝るときにスライムをマクラにしてたからですね〜あのスライムにはピッタリな名前でしょう〜それより早く私の名前を……」


 魔剣が再び愚痴を言う前に登録用紙を書きハルに渡す。


「はい! 登録しました!」

「……マクラよろしく」

「ムキュー!」

「ちょっと私の名前は!? レミさん!? ちょっと〜!」


 スライムに名前をつけたレミは次のクエストに向かうのだった。



「ムキュ〜」

「くー! スライムに先を越されるなんて……レミさん酷いですよ〜! まぁ私は心が広い魔剣ちゃんなので許してあげますけど代わりにかっこいい名前をつけてくださいね〜!」

「ムキュキュ!」

「先に名前をもらったからって調子に乗らないでくださいよー!」


なかなか名前をもらえない魔剣はスライムに嫉妬するのだった。

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