はじめてのクエストと魔剣の能力
レミは村の近くの平原に向かっていた。
「クエストに書かれてる場所はこの先の平原ですねー!
はじめてのクエスト……ワクワクしますね!」
道中も変わらず喋る魔剣を無視しながら黙々と平原を目指す。
どうやらレミははじめてのクエストで少し緊張しているようだ。
「大丈夫ですよ〜スライムなんて私の能力があれば楽勝ですよー!」
謎の自信を見せる魔剣。
そういえばこの魔剣、さっきから私の能力がどうとか言っているがどんな能力なのかここまで一切の説明はない。
よく喋る剣だが重要なことはあまり喋らないタイプのようだ。
「もしかして私の能力知らないのですか!? あれ私言ってなかったんでしたっけ? 私の能力は反転、簡単に言うと物事を入れ替える能力ですよ〜例えばコインの裏と表を入れ替えるとかそんな感じです〜まぁレミさんの認識次第で入れ替える対象が変わりますし何を入れ替えるかでMPの消費量も変わるのでなかなか使い所が難しいかもしれませんね〜」
と一通り能力の説明をする剣。
能力のことはわかったがまだ気になることがある。
ひと言も口に出していないのにまるで心を読んだかのような反応を見せるこの剣は一体どうなっているんだろうか?
「それはわかりますよ! なんてたって私はレミさんの相棒なんですから! その辺はバッチリですよ〜!」
よくわからないことを言う魔剣のことはもう考えるのをやめてレミは再びクエストに意識を向けるのだった。
平原につき早速スライムと戦い始める。
剣の振り方など知らないレミはアニメなどで見たものを参考に剣を振るがイマイチ上手く扱えない。
「レミさん剣を振るの下手ですね〜初心者にしてはましかもしれないですけど仮にもこの優秀な魔剣ちゃんの使い手なんですからもっと頑張ってくださいよー!」
戦いの最中にそんなことを言う魔剣にレミはムッと膨れた表情を見せるとスライムめがけて剣を投げた。
「レミさん!? 流石にこの扱いは酷すぎますよ〜!」
スライムめがけて飛んでいく剣。
うまくスライムに命中しスライムを倒すことに成功したのを見てレミは満足そうに頷いた。
「もぉーひどいですよ〜今ので倒せたから良かったですけど倒せなかったらピンチになるのはレミさんですよー!」
少し怒った様子の魔剣をしまいながらレミは次のスライムを倒しに向かう。
「また無視ですか! というか私の能力も使ってくださいよー! これじゃあその辺の剣と同じだと勘違いされるじゃないですか!」
文句を言う魔剣だがレミはそもそもこの魔剣の能力の発動方法を知らないので使うことができないのだ。
「そういえば言ってませんでしたね〜私の能力はレナさんが入れ替える対象を認識した状態で剣を向けて反転といえば使えますよ〜本当は色々複雑な工程があるんですけどこの有能な魔剣ちゃんがその辺はやっておきますので簡単に使えますよ〜魔剣ちゃんに感謝してくださいねー!」
能力の使い方以降は全く聞いていないレミはさっそく次のスライムと戦い始めた。
クエストクリア条件まであと一体となった頃。
「結局私の能力使ってないじゃないですかー!」
だってMP使うの勿体無いし使う必要ないんだもんと思うレミは次のスライムに攻撃を仕掛ける手を止める。
「お!やっと使う気になってくれましたね! 確認しておきますけど入れ替える目標に剣を向けて反転って言うだけですからねー! 今のレミさんのMPだと……敵対してるスライムの心を友好状態に入れ替えることしかできませんね……ほんとMP少なすぎですよー!」
文句を言う魔剣を無視してスライムに向けて剣を向ける。
「ムキュー!」
飛びかかるスライムに向けて剣の能力を発動する。
「いっきますよ〜レミさん!」
「……反転」
レミがそう言った途端剣から光が放たれた。
光はスライムに当たるとスライムは動きを止めしばらくしてレミに寄ってきた。
「ムキュ〜ムキュ!」
「……可愛い」
「このスライム! レミさんに可愛いって言われるとかずるいですよ! 私もまだ言われたことないのに〜!」
スライムに嫉妬する魔剣を無視してスライムを抱きかかえるレミ。
どうやらこれもスライムを倒したことに入るらしくクエストクリアとなったようだ。
「はじめてのクエストお疲れ様でした! はじめてのクエストでスライムを仲間にするなんて凄いですねレミちゃん! こちら報酬です! お疲れ様でした!」
ギルドに戻りハルから報酬をもらう。
「私の能力のおかげですからね! もっと褒めてくれてもいいんですよー? ほらほらー」
調子にのる魔剣を無視してギルドを後にしようとするレミをハルが呼び止める。
「いい忘れてました! 仲間にしたスライムに名前をつけて登録しないといけないんですよ! 明日までにこちらの書類にスライムの名前とステータスを書いてもらえればあとは私がやるので! お願いしますね!」
登録用の書類を受け取るとレミはギルドを後にして休憩することにした。
「ムキュ!」
スライムと一緒に食事をとりつつ少し考え事をする。
「レミさん〜やっぱりどこか部屋を借りないと持ち物の管理とかめんどくさくなっちゃいますから借りましょうよーそれにこのゲームは現実の時間より早く進んでますから睡眠も取らないとー」
魔剣が何度も部屋を借りろというのでいくつか部屋を見つけるがどこのするか悩んでしまう。
「……お金ない」
そもそもどこを借りるにもお金が足りない。
クエストクリアでいくらか入ったが初心者用のクエストなのでそんなにお金が入らなかったのだ。
「そうなんですよねーハルさんに相談すれば少しは安いとこが見つかるかもしれませんよ? どうですこの案! 優秀な魔剣ちゃんの完璧すぎる提案ですよー!」
今回ばかりは魔剣の言うことを聞くことにしたレミは再びギルドに向かうのだった。
「ムキュ〜」
「あー! レミさんに近づきすぎです! 寝てるレミさんに手出しはさせませんよ!」
「ムキュ!」
「何です? あなたの方がレミさんの相棒にふさわしいですって! 新入りのあなたが調子に乗らないでくださいよー!」
「……うるさい」
「ごめんなさい……」
「ムキュ……」
レミが疲れて寝ている側で言い争いをするスライムと魔剣だった。