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本能

 ミケ達がバグった魔物の相手をしてる間にレミに攻撃を当てるクロネ。

 すぐさま眠気でレミの体がふらつきはじめる。


「それじゃあ作戦通りにお願いしますよー! ぼっちでも準備時間ぐらいは稼げますよねー?」


「もーうるさいわね! とっとと準備しなさいよ!」


「それじゃあお願いしますね〜! 五分ぐらい時間稼いでくださいねー!」


 レミはクロネ達の後ろに行くとふらふらしながらも魔剣を構えて反転を使う準備を始めクロネ達が時間を稼ぐために武器を構える。


「無茶言うわね……」


「仕方ないにゃ〜! 耐性がついてるから寝るまで時間がかかるからにゃー! それじゃあにゃーの武器は頼むにゃ!」


「ま、任せてください!」


 ミケから猫の手の形をした武器を受け取りベルはハンマーの力で爪に混沌の効果をつけるために一旦後ろに下がった。


「あんた武器なしでいけるの?」


「大丈夫にゃー! しばらくは獣人の能力でなんとかするにゃ! ……猫は気まぐれ少しの間だけ本能解放にゃ!」


 気まぐれな思考を使い本来はHPが少ない時に発動する本能解放を強引に使い身体能力を上げると魔物に向かって殴りかかっていった。


「あんた凄いわね……」


 その様子をやや引き気味に見ながらクロネも睡眠の剣で応戦する。

 しかしこの魔物には睡眠の効果が発動しないようだ。

 剣そのものの火力のみで戦うしかなく苦戦を強いられる。


「大丈夫かにゃ?」


「大丈夫よ……剣の火力が低いのは仕方ないわ……なら数で押すだけよ!」


 複数同時に襲いかかってくる魔物に対して何度も剣を振るが一回一回の威力が低い為あまりダメージが与えられない。

 ミケの方も武器がない状態ではまともにダメージを与えられない為敵の数は一向に減らず少しずつ後退りをする。


「ミケさん! これを!」


 ベルがミケの武器に能力をつけ終えミケに武器を渡そうとするが魔物が邪魔で渡す事ができない。


「ベル! それをこっちに投げるにゃ!」


「わ、わかりましたー! えいー!」


 ミケの方に武器を投げるが飛距離が足りず途中で落ち始める。 


「ま、まずいです!」


「大丈夫にゃー! 任せるにゃー!」


 ミケは邪魔な魔物の頭を踏みながらジャンプし武器を受け取りすぐさま魔物を引っ掻くと複数の効果が同時に発動した。


「凄いにゃー! 一撃で炎と氷と毒が発動するとか恐ろしい武器だにゃ……」


 両腕合わせて6個の効果を同時に発動させ魔物達の数を一気に減らしはじめる。


  「うにゃにゃにゃ!」


 それでも魔物の数は底が知れず減ってはいるがそれ以上に増えているように錯覚するほどの大群が押し寄せる。

 ベルはハンマーで地面に様々な効果を付加して妨害しつつ逃げ回って時間を稼いでいたがクロネの方は完全に押されていた。


「く、クロネさん!」


「大丈夫よ……はぁ……やっぱり使わないとダメみたいね……」


 クロネは剣で魔物を弾き飛ばすとポケットから赤い液体の入った小瓶を取り出し中身を一気に飲み干した。


「く、クロネさん! な、なんですかそれ飲んでも大丈夫なんですか……」


「大丈夫よ? ただの血だし……」


「え、ええ!? ただの血って……」


 驚いた様子のベルは少しだけ青ざめているが戦うのに夢中なミケは何も聞こえていないようだ。


「あのねぇ……あんたら忘れてるかも知れないけど」


 赤い液体を飲んだクロネの体から赤いオーラが漂いはじめ背中にコウモリのような羽が現れた。


「私は吸血鬼よ!」


 そう告げると同時に空中に現れた赤い刃が近づいてきた魔物を切り刻む。


「く、クロネさんって吸血鬼だったんですか……」


「まぁ血を吸わない限りは姿が普通の人間と同じだからね……」


「吸血鬼ってマルチ推奨の種族だった気がするんだけどにゃ……」


「知らなかったのよ! プレイヤーの血か高いお金払って吸血鬼専用の店から血を買わないと能力使えないなんて酷くない? その分能力の上がり方はやばいけど使いにくすぎるわよ! おまけに集中しないと暴走するとか踏んだり蹴ったりよ!」


 やけくそ気味に魔物に剣を振り殲滅していくクロネは少し苦しそうな表情を浮かべながらもミケを上回る勢いで魔物を狩る。

 ミケもそろそろ能力が切れそうなのか動きが鈍らはじめる。


「だ、大丈夫ですか! わ、私も頑張らないと……」


 既に疲れが見え始めているベルは重たい体を強引に動かしてハンマーを振りおろす。


「あんまり無理しなくていいわよベル! あんた元々戦闘職じゃないんだから!」


「だ、大丈夫です! も、もう少し頑張ります!」


 少しずつ自我を削られながらも魔物を押し返すクロネ。

 時間が経つごとに赤いオーラが濃くなりコウモリのような羽も大きくなっていく。


「うにゃ〜……ここが限界かにゃ……」


 能力が切れた反動によって動きが一気に鈍くなるが持ち前の危険察知能力でなんとか敵の攻撃を避ける。

 しかしそれも長くは持ちそうにない。


「あんたも無理しすぎないでよ! 死んだら……元も子もないんだから!」


「わかってるにゃ〜困ったときは猫の手でも借りるにゃ!」


 ミケが二回手を叩くと小さい猫の獣人が現れ敵に向かって突進し始めた。

 多少は魔物の動きを鈍らせることが出来ているがあまり効果は期待できない。


「あんたの能力……よくわからないわね……」


「まぁ本来の使い方と違うからにゃ〜仕方にゃし!」


「それは……どうでも……いいわよ」


 意識が飛びそうになりながらも必死に堪えるクロネ。

 赤いオーラはもはや濃い霧のようになっている。


「く、クロネさん! そろそろ限界です!」


「まだ……まだ! あともう……少し……いけるわ」


 赤い霧のようなオーラがより一層濃さを増していく。


「うにゃ!」


「痛い! 何するのよ!」


「そろそろ限界だにゃ! 暴走されたらそれこそ終わりだにゃ!」


「……わかったわよ」


 ミケに言われポケットから青い液体の入った小瓶を取り出し飲み干すと赤いオーラと赤い刃が一気に消えた。


「はぁはぁ……」


 反動で凄まじい倦怠感が体を襲うが無理矢理体を動かし剣を振る。


「あ、」


 剣を振るった反動に耐えられず体が引きずられその隙を逃すまいと魔物が襲いかかってくる。


「……」


 しかしその攻撃は届かずかわりに魔物の死体が地面に転がった。

 危険を察知した魔物達は距離を取りはじめる。

 混じり気のない純粋な殺気が静かにそこに立っていた。

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