眠りと目覚め
森の中で金属のぶつかり合う音が聞こえる。
耳障りでうるさい音が聞こえる。
気づけば静かな森の中にいた。
何をすればいいかもわからず何故ここにいるのかもわからない。
でも今やるべきことはわかる。私はあの音を……。
「覚悟してくださいね〜あんなボッチなんてレミさんがすぐさま始末しちゃいますよー! 猫はあっちのハンマーを持ってる悪魔をやってください!」
「わかったニャー!」
やっと追いついた2人に容赦なく先制攻撃を仕掛ける。
森を駆け抜けた勢いをそのままのせて攻撃した。
正直この戦争に飽きてしまっているレミはとっとと戦いを終わらせたいためか接近戦が不利な弓使いのクロネを狙う。
弓で剣を防ぎ切るなど無理な話なので駆け抜けた勢いに乗せてそのまま押し切れると思っていたようだが実際は違った。
「レミさん! あのぼっちの武器おかしいですよ! あれは……剣です!」
魔剣ノイズの言うようになぜかクロネは弓ではなく見たこともない剣を構えている。
勢いそのままに突っ込んでしまったレミは完全に弓を使うものだと思い込んでいたため動揺して手元が狂ってしまう。
「隙ありよレミ! くらえー!」
攻撃を避けられ反撃を喰らう。
スピードをつけて攻撃したところへのカウンターなので通常ならかなりのダメージが入る攻撃だがなぜがダメージはあまり喰らわなかった。
「レミさん大丈夫ですかー!……あれ? なんかそこまでダメージ受けてませんね! やはりボッチ貧弱ですねー! 一気にやり返してやりましょう!」
ダメージが少ないならこのまま押し切ってしまった方が早いと判断しすぐに次の攻撃を仕掛けようとするレミ。
しかし妙な眠気に苛まれ体がふらついているようだ。
「レミさん!? なんですかこれ! 眠りの能力が使えるのは弓だけですよね! チートですか!」
「違うわよ! 逃げてる途中にベルのハンマーで加工してもらったのよ!」
「し、失敗するかと思ったけど親方に鍛えられたおかげでなんとかなったのです!」
ミケと戦ってる最中のベルだが嬉しそうな笑顔を見せるくらいの余裕はあるようだ。
鍛冶屋での経験とベルのハンマーの能力混沌が合わさり武器の種類そのものを変える荒技。
混沌で発動する能力はランダムなはずだが鍛冶屋のジョブ補正により武器の加工に関してはある程度の調整が効くようだ。
「どっちにしろズルイですよー! レミさんは冒険者ですからドロップ率増加ぐらいしかジョブ補正ついてないのに〜!」
「それは私もなんだけど……」
この場にいる4人の中だと冒険者以外のジョブになっているのはベルだけだ。
中立の場合は基本的に冒険者以外のジョブにつくのに条件があるので鍛冶屋のような生産職以外で他のジョブにつく中立のプレイヤーは少ない。
「まぁジョブ補正なんてあってないようなものだし卑怯とは言わせないわよ! ベル! 眠気でふらついてるレミなら攻撃当てやすいだろうからそっちお願い!」
「た、助かります! み、ミケさん早くて全然攻撃が当たらないです……攻撃されては逃げられてを繰り返されちゃって……」
「ねこの素早さを活かしたヒットアンドアウェイってやつだにゃ!」
自慢げに語るミケだが別段ミケの速さがずば抜けて速いわけではなく単純にベルの攻撃が大振りなだけなのだが本人は特に気にする様子はない。
「ミケさん自慢げに言ってますけどレミさんがピンチなんですから少しはアシストしてくださいよー! レミさん安心してくださいね! レミさんの1番の相棒であるスーパー有能な魔剣ちゃんがしっかり守りますから!」
どうやって守るのかわからないが全く信頼できないレミだが眠気のせいでうまく頭が回らない。
ベルの大振りな攻撃ですら避けるので精一杯だ。
「大丈夫かにゃレミ!」
「人の心配してるんじゃないわよ! くらえーミケ!」
「そう簡単にくらわないにゃ!」
一方のミケも流石にクロネの相手をしながらレミのアシストをするのは難しいようだ。
クロネの剣は弓と同じように睡眠の能力があるため一撃でもくらえばすぐにでも眠気が襲ってくる。
一撃もくらうわけにはいかないのでどうしても回避に専念せざるおえない。
しかし苦戦を強いられているのは2人だけではなかった。
「どうしたのじゃ? その程度でよくブレイクを倒せたものじゃな? それともまだ何か隠しておるのか?」
圧倒的な力でRを追い詰めていく魔王。
空間の支配する能力によって擬似的にもう一つの世界を作るこの能力によってRは苦戦を強いられていた。
「……そんなものありませんよ! 全く! ここまで苦戦するのは初めてですよ!」
余裕そうな笑みは消え怒りの感情が見え始める。
戦況は魔王軍が有利な状況になっていた。
「……支配、加速、記憶、反転、眠り、混沌、使役……うるさい」
静かだった森は戦いによりその静けさを失い、激しさを増す戦争の被害は広がっていく。
それは眠りし者を起こすのに充分なものだった。




