報酬
「レミさん上機嫌ですねーそんなにその時計が嬉しいんですかー? 確かに綺麗ですけどもう少し私のことかまってくれても良くないですかー?」
レミはそんな魔剣の言うことなどまるで聞こえていないのか日差しにかざした魔結晶の時計を眺めていた。
前回の魔王軍との戦いに参加した冒険者たちには活躍に応じて報酬が配られだがレミは最後の魔法を跳ね返し魔王軍を退けたため追加で魔道具をもらったのだ。
「みなさん! 本当にお疲れ様でした! 皆さんのおかげで魔王軍を撃退できました! 報酬用意してますから順番にお受け取りくださーい!」
魔王軍を撃退したレミ達は無事にハクム村に戻ってきていた。
「な、なんとか生きて帰れた……報酬も手に入りますしこれで親方が肩代わりした修理代が払えます! 本当にありがとうございます! クロネさん! レミさん!」
ベルの感謝の言葉が胸に突き刺さるレミ、戦いのせいで忘れていたがそういえばそんな話だった。
元々レミが(間接的に)工房を破壊しなければこんな危ないクエストに行く必要はなかったのだ。
そう考えると今からもらう報酬も受け取りづらくなってしまうレミ。
「レミさんレミさん! 目の前のポンコツ悪魔は気づいてないみたいですからここはもらっておきましょうよー! それでもらった報酬で私をさらに強化してくださいよー!」
悪魔のように囁く魔剣は相変わらず性格が悪いことを言うがレミにとって今回だけはありがたい言葉になった。
レミは魔剣の提案によって決心を固め報酬をベルにあげることにした。
「はい! レミちゃん……え? 自分の分の報酬はいいからベルさんにあげて欲しいですか?……うーん……まぁレミさんが言うならいいでしょう!」
「え! いいんですか! レミさん!」
ベルが驚いた様子で聞くのに対して少し硬い表情をしながら頷くレミ。
ベルはそれを見て泣きながらレミに抱きつくとひたすらありがとうと言い続け余計にレミの罪悪感を強める結果になったので結果として大ダメージを喰らったのは言うまでもない。
「それじゃあレミさんの分の報酬金はベルさんにあげるとして……レミさんは魔王軍を撤退させるのに大きな貢献をしたので追加報酬として1つ魔道具をあげますね!」
ハルが呪文を唱えると3つの魔道具がハルの目の前に現れた。
「この3つのなかから1つ選んでくださいね! どれも私自慢の魔道具ですからきっと役に立つはずですよ、レミちゃん!」
「レミさん! この魔道具どれもレジェンド級のレアモノなんですけど!? 私たちデザイア武器に匹敵する価値のものとか……どうやって手に入れたんですかねこの女ー!」
「ふふーん! 私だって伊達にギルドの受付やってるわけじゃないんですよ! レジェンド級のアイテムだって用意できますからね!」
悔しそうな様子の魔剣にドヤ顔で言い放つハルに一瞬恐怖を覚えたレミ。
軽い冷や汗をかきながらもレミはハルが出した魔道具に目を向ける。
魔道具はどれも一目でやばいものとわかるぐらいの存在感を放っている。
空が映し出されるグラス、水でできたペンそして宝石でできた時計。
「魔道具というだけあってかなり莫大な魔力によって作られてるみたいですねー……まぁ私には及びませんけどどれもレジェンドと呼ばれるのにふさわしいものだと思いますね〜私には及びませんけど!」
魔剣の負けず嫌いが発動するのを無視しつつレミは悩む様子もなく時計を手に取る。
日差しが反射して神秘的な輝きを放つ時計は確実に時を刻み込む。
「……これがいい」
「これですね! わかりました! その時計は何か特殊な能力があるはずなんですけど……忘れちゃいました!」
「せっかくの魔道具なのに能力忘れるとか使えないじゃないですか〜結局ただのおバカな受付じゃないですか〜レミさんもそう思いますよね〜?」
魔剣のそんな声はすでに届いていない様子のレミは時計を持って自分の部屋に向かうのだった。
「やったー! 私の時計気に入って貰えたみたいですね!」
「……ありがとう!……ハル」
かなり嬉しいのか珍しく声のトーンが上がったレミは上機嫌で部屋に戻るのだった。
部屋の中で1番日差しの当たる窓際に時計を設置ししばらく時計を見つめていたレミ。
「レミさーん! そろそろログアウトしないとまずい時間帯ですよー? 早く寝て明日に備えましょうー!」
魔剣に言われリアルタイムの方を見て慌ててログアウトするレミ。
誰もいなくなった静かな部屋は時計の音で満たされるのだった。
「……ログアウト確認……システム起動」
時計から微かに聞こえたその声を聞くものはいない。
「なんであの時計はあんなにレミさんに見つめられるんですかー! 羨ましいですー!」
「ムキュ……(めんどくさい奴だなー)」
レミのログアウト後休息モードに入った魔剣は目を覚ましてスライムに愚痴を漏らすのだった。




