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1、出会いは空から 1

はじめまして、中藤 駿明と申します。こういった投稿は初めてなので、拙い文章じゃねーかよと思うかもしれませんが、優しくこの作品と私の成長を見守ってくれたら幸いです。投稿は不定期ですが、途中で放り投げたりはしませんのでご安心を。それではお楽しみください。

I 出逢いは空から


1

どこまでも続く青々とした草原。所々に聳える丘から眺めても、緑の水平線は果てしなく広がっている。数百メートルおきに挿してある木製の立て札が無ければ遭難してしまいそうなほど、ここ一帯には草と丘しかない。

そんな緑の絨毯の上を、アスランという十七歳の羊飼いの少年は走っていた。

短く切り揃えられた銀髪に、年齢の割に小柄な体型。木綿製の古びたマントを身に纏い、先端がフックになった長杖を右手に持っている。

その少し前を走るのは、雄の灰毛の狼。三年前にアスランが森で拾い、レッジと名付け弟のように世話をしてきた。当時は両手で抱えきれる大きさだったが、たった三年の間にアスランとほぼ変わらない体躯となり、今では立派な牧羊狼としてアスランのパートナーになって働いている。そして今も、仕事の最中だ。

不意にレッジが立ち止まり、足元の地面をすんすんと嗅ぎ始める。

「どうしたレッジ、見つけたか?」

アスランの問い掛けに対して、付いて来いと言うように一吠えすると、左前方の小高い丘に向かって駆け出すレッジ。彼もその後に続いて走る。だが、疲れがきたのか、丘の中腹で足が止まる。その場に片膝をつき上を見ると、レッジは既に頂上で伏せ、アスランの到着を待っていた。

(ったく……野生には敵わないな)

薄く笑って大きく吐くと、アスランは長杖を支えにして立ち上がり、ゆっくりとした足取りで丘登りを再開する。

数分後。

頂上に着くと同時に、その姿をアスランは視界に捉えた。

「見ーつけた」

アスラン達の場所から目測で四百メートルの場所。

のんびりと草を食む白い毛玉ーーに見える大きな一頭の羊。それこそアスラン達がここまで来た理由だった。

二日前の夜のこと。

この辺り一帯を大嵐が通過した。幸いにも家族や家そのものは無事だったが、家の敷地内にある牧場の柵が飛ばされて七頭の羊が逃げ出してしまった。

嵐が過ぎた明け方からアスランとレッジは直ちに捜索を開始した。

彼らが居を構える場所は小高い丘に囲まれており、人以外が外に出るには丘の間を崩して作った道を通るしかない。更にその入り口にも金属製の柵が設けてある。どんな羊でも超えれもくぐれもできない。なので主に丘の麓を探すことにした。

最初の三十分で四頭、次の三十分で二頭捕獲した。その内一頭は丘の中腹まで登っており、転倒させないように平地まで下ろすのが一苦労だった。

これで残りは一頭。この分ならあと十分程度で終わるだろうと安心していたアスランだったが、そこへ彼の祖父が慌てた様子で駆け寄って来た。

祖父を落ち着かせながら何事か尋ねると、どうやら出入口の柵が壊れているとのことだった。直ちに現場に向かうと、両開きの金属製の柵が左右に倒れており、地面に埋めた支柱は根元を残してボキリと無残に折れてしまっていた。

これはもう買い替える他ない。だが同じ金属の柵を街で買ってここまで持って来るのは正直面倒だ。知り合いの運び屋もいない。

いっそのこと木製の柵に変えようかという案が浮かんだ時、アスランは柵に何かが引っ掛かっていることに気づいた。しゃがんで手に取ると、羊毛だった。

まさか。

最悪の事態が頭に浮かんだアスランの横から、これも落ちていたと祖父が赤いリボンと鈴を手渡してきた。

状況を理解したアスランは、これからの行動を考え、乾いた笑いを浮かべた。



そんな経緯があり、現在。

脱走した羊はアスラン達に見つかったことに気付かず、呑気に草を食み続けている。逃亡生活があと数分で終わってしまうというのに。

「作戦を教えるぞ、レッジ」

アスランは腰に巻いたバックパックから赤、黒、白の三つの石を取り出し、自分とレッジの間に置く。

「まず、お前はあいつの前に素早く回り込め。大きく吠えながらこの丘に誘導だ」

黒い石とレッジを交互に指差し、白い石の前に黒い石をスライドさせる。

「僕は羊が走ってきたら正面から取り押さえる。それで仕事は終わりだ」

赤い石と自分を指差し、白い石を挟んで黒い石の反対側に置く。どうだ?と言うようにレッジの顔を覗き込むと、ざらついた舌で頬を舐められた。これが、分かったという意思表示だ。

レッジは賢い狼だ。森で拾ってきてから三年経つが、その間にアスランの指示には忠実に従うようになり、牧羊狼としての仕事内容もすっかり覚えてしまった。更に、普通の飼い犬のような芸をマスターするだけでなく、先程の石を使った戦術までも理解した。

その天才ぶりに驚いた祖父は、毎年街で開催される犬の競技会に参加させることを勧めたが、アスランはキッパリと断った。理由は、競技会に出場して貴族の目に留まれば、強引にレッジを奪われる可能性が高かったからだ。実際、昨年や一昨年の大会で上位に入賞した数匹の犬は、閉会式後すぐに貴族が買っていったらしい。それが小さい子供の遊び相手であってもだ。アスランは、レッジがどこの馬の骨とも知れない輩に物として扱われることが我慢ならなかった。

それに、兄弟がいないアスランにとって、レッジは年の離れた弟のような存在だ。そんな大会に出なくとも、どこの犬よりも狼よりも優秀なのは兄として一番良く知っている。

家族としても、仕事仲間としても。

誰かの物でなく、一匹のパートナーとして側にいてほしい。

それが、アスランの心からの願望だった。

(お前も、そう思ってくれてるよな?)

「?」

レッジの温かい背を撫でると、アスランを見て首を傾げた。

人間味のある仕草に頬が自然と緩んでしまうが。

直後、二の腕を鋭い牙で挟まれた。

「!?いっ……!!」

羊に声が聞こえてしまわないように右手で口を押さえ、噛まれた左腕を上下に振るとレッジはすぐに離してくれた。アスランの驚きなど意に介さず、灰色の尾をぶんぶんと振る。

アスランに歯を立てるのは、大抵何かを催促している時だ。食事をしたい時、散歩に行きたい時。そして今は、早く羊を捕まえようぜと言いたいのだろう。レッジは既にいつでもスタートを切れる姿勢に移行している。

アスランはゴキリと肩を鳴らし、隣の相棒に向けて言う。

「分かった分かった、それじゃあ十秒数えたら行くぞ」

十、九。

レッジはキッと目線を羊に向け、息を整えている。

六、五。

アスランはふと、後方に目を向けた。遠くの草が大きく波打っている。好都合だと心の中でほくそ笑む。

三、二。

準備は万端。

一。

一歩目を踏み出す寸前。

彼らの背を豪風が叩いた。

瞬間。

「行くぞ‼︎」

「ウォウ‼︎」

少年と狼は風と一体化し、丘を駆け下りた。




言いたいことは分かります。検索ワードに出てくる内容ないじゃないか!ですよね?その通りです。今回のはいわゆる導入部分なのです。続きが気になる方、後日の内容を楽しみに待っていてください。頑張ってペンを進めます!

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