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皇女のお茶会にて

「ユリウス様、真に申し訳ありませんが、貴方との婚約を破棄させていただきますわ」



俺の婚約者、パンゲロニカ帝国の第一皇女リズターシャは高らかに宣言した。

くるりと見渡すと、彼女の斜め後ろでは俺の腹違いの弟、ゴーデルク王国の第二王子ルシオがニヤリと笑っている。

その隣、というか周り?

ルシオの周りにはゴーデルク王国宰相の娘やら、騎士団長の娘やら、我が国の錚々たる女子がいて、じっとこちらを見ている。

我が国だけじゃないな、パンゲロニカ帝国の魔法師団長の娘やら、帝国の高位の貴族子女も混ざっている。

扇で口元を隠している者もいるが、その誰もが目元に楽しそうな表情を浮かべている。

何ていうか、人の不幸は蜜の味?いや、違うな、何だかとっても嘲けている感じだ。

それでいて、ルシオの側にいる方々はとっても距離が近い。

ルシオとな。

これ、リズターシャがいなかったら絶対腕組んだり、寄り添ったりしてるよな。

うーん、何ていうか、前から結構盛んな奴だなぁとは思ってたけど、まさか帝国の人間にまで手を出してるとはねぇ。

いいのかな?

うちの国の女子含め、皆、ちゃんと婚約者がいるような人たちばかりだと思うんだけど。

ほら、貴族って小さい頃に婚約者が決められることが多いからさ。



「ユリウス様、聞いていらっしゃるの?」

「ん?ああ、ちゃんと聞いているよ」



色々考えてたら、リズターシャに怒られた。

考え事をしている間に、何だか色々と俺に対する不満を言っていたみたいだ。

あと、俺と違って、いかにルシオが素晴らしいかとかも。

俺と彼女の遣り取りを見て、周りの女子からクスクスと笑い声が漏れる。

やっぱり昼行灯ね、何ていう声も。

こちらの世界的にいうと昼間のランプってところかな。

まぁ、言われ慣れているから今さらどうでもいいのだけど。

文武両道、勇猛果敢なルシオと比較して、俺はぼんやりしているらしいからな。



「婚約破棄だろ?それ、ちゃんと陛下も賛成してるの?」

「もちろんですわ!」



ここで言う陛下って言うのはリズターシャのお父さん、皇帝陛下のことな。

そうか、皇帝陛下も賛成なんだ。

仕方ないかな、ルシオは確かに剣も魔法も得意だし、何より第二王子だしな。

第二王子なら婿に取れるってか?

昼行灯と呼ばれているけど、俺はゴーデルク王国の王位継承順第一位だから、リズターシャはうちの国に来るしかないんだよな。

その点、ルシオならば王位継承順第二位だから、帝国に行けないこともない。

ルシオが相手ならば、リズターシャを帝国から出す必要はない。

皇帝陛下に子供は数いれど、リズターシャが一番出来がいいからな。

というか、リズターシャ以外はゴミかな。

はっきり言って。

あれらに比べれば、ルシオの方が全然優秀だと思う。

あ、何か嫌なことに気付いた。

これ、俺の死亡フラグじゃない?

ルシオがリズターシャと結婚した後に俺が死んだら、ルシオが王国を継いで、王国は帝国に併合されるパターン?

うわー、あの皇帝陛下(おっさん)ならそれくらい考えそうだな。

うちの国王には子供二人しかいないからな。

俺が死んだら、次はルシオしかいない。

あー、困ったな。

このまま婚約破棄されたら、バッドエンドまっしぐらだよな。

バッドエンド?


………………。


…………。


……。


なんか、前世の姉貴がやってた乙女ゲーみたいな展開だな。

ゲームの内容はよく知らないし、詳しく知りたくもなかったけど。

でも、これって逆じゃない?

普通、主人公は女の子で、ライバルも女の子のイケメン争奪バトルゲーじゃなかったっけ?

俺、男なんだけど……。



「私達の婚約は、王国と帝国の同盟強化の意味合いもあるものだと思っていたけど……」

「それでしたら問題ありませんわ。私、こちらのルシオ様と婚約することになりましたから」



あー、やっぱり。

この様子だとそうだよな。

俺の後釜はルシオで確定らしい。



「兄さん、すまない。リズが兄さんの婚約者なのは理解していた。それでも俺は……」

「あぁ、別に構わないよ」



あっさりと俺が承諾すると、リズターシャもルシオもとても驚いた顔をした。

いや、だって、俺は元々この婚約に乗り気じゃなかったからな。

リズターシャのことは特に何とも思ってなかったし。

美人だとは思ったけどさ、性格きつそうだなとも思ったわけで、正直好みのタイプではなかったんだよ。

ただ王国と帝国の力関係を考えた場合、断るととてつもなく面倒なことになりそうだったから、了承しただけで。

パンゲロニカ帝国はこの大陸を代表する大国の一つだからな。

弱小国のうちの国に断ると言う選択肢は無かったんだよな。

だから、リズターシャにルシオに乗り換えたいって言われても特に思うことはないんだよな。

バッドエンドにさえならなければ。



「話はこれだけかな?」



にっこりと微笑んでみたが、予想外に俺が淡々としているせいか、周りは皆、困惑した表情を浮かべたままだ。

まあいい、賽は投げられた。

今は一刻も早くここから去ることにしよう。

これからやらなければならない事が沢山できたからな。



「それじゃ、私はお暇させてもらうよ。詳しい手続き等はまた後日ということでいいよね」

「え、えぇ」

「じゃあ、ごきげんよう」



俺は退室の挨拶をすると、部屋を出て、人目につかない場所で転移の魔法を発動させた。


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