フェーズ5
シュトルムは体勢を崩した。
「ガッシャーーンッ!!」
後ろの方で音がする。そこには自分に刺さるはずだった矢が窓を突き破っていた。床にはガラスの破片が散乱している。シュトルムはひざまずいたまま、暫時放心状態だった。
…何が起きた?今俺は生きているのか?さっき何が?…
その回想を、自分の横から放たれたハンドクロスボウの矢が砕いた。
そのハンドクロスボウをもった男は、敵に向かって矢を浴びせた。敵は隠れながら2階へ逃げていった。
ハンドクロスボウを構えた男はしばらく階段の方にクロスボウを向けていたが、あらゆる雑音が去った後クロスボウをおろした。そしてこちらを見る。グレーの迷彩のミリタリーポンチョにグレーのマフラー、オレンジ色のレンズの軍用ゴーグルを身につけている。
「大丈夫だ。安心してくれ。あんたは生きてるよ。」
「ど、どうやって俺を助けた?」
「ヒザカックンだ。覚えておけ。あんたは俺の膝カックンで救われたとな。」
「膝カックン!?本当か!まあ…ありがとう。」
膝カックンで助けられたことに衝撃をおぼえるシュトルム。
「あんたは帰ってくれ。これは俺の仕事だ。俺が片付ける。」
そう言うと、敵を追って階段を上っていってしまった。シュトルムは立ち上がり、ディクシーを探し出し階段を上った。
三階に着くと、気絶した敵の体が転がっていた。その奥にハンドクロスボウの男が座っていた。
「なんだ。まだいたのか?」
「お前は誰なんだ?」
その男は立ち上がりこちらに近づいてきて言った。
「俺は一度死んだ。本当は死んでいる身なんだ。前の名は捨てた。まあ、ファルカ・クアッドランドとでも名乗っておく。」
「ファルカ・クアッドランド?」
「そうだ。」
シュトルムは怪しんだ。体系、髪の毛、輪郭から言っても日本人っぽかったからだ。
「日本人じゃないのか?」
「違う。」
そういうとファルカは階段を下りて帰って行った。
「プオ!なあ、あやつかなりオラのことチラチラ見てなかった?」
「確かにな。やたらとお前の事気にしてたな。」
確かに怪しかった。まるでディクシーを恐れているかのように気にしていた。
シュトルムは気絶した敵をボディチェックした。ポケットにはウイルスの入っていると思われるビン。他にはクロスボウしかもっていなかった。シュトルムは髪の毛を採取し、その場を去った。
遅れてヴィルフェアー夫婦が到着。気絶した容疑者を起こし、警察署へ連行した。
調べてまた衝撃が走る。この容疑者の名前はランゲル・オリーブドラブ。なんと30年前に王通事故で死んでいるはずである。実はこれまで捕まったパンデミッカー全員が何十年か前に死んだはずの人物なのである。調査班はまた頭を悩ませた。
ランゲルは沈黙を貫いた。
裁判にかけられた。
判決は処刑。
「パンデミックを各地で引き起こしている凶悪犯罪者の一人である。」
処刑をする前、ボソッとランゲルは言った。
みとめさせる
これまでに捕まったパンデミッカー全員…1、ローン・ドッペルゲンガー。長らく尋問を受けていたが、沈黙を貫き処刑判決。2、ラン・ミヤマ。無表情のまま沈黙を貫いた。処刑判決。3、エイビス・ハンセン。警察との銃撃戦を引き起こし、射殺。5、シンフォニ・グラン。沈黙を貫き、処刑判決が出たが、処刑間際「あの花が見たい。」と言い混乱状態。処刑施設内で射殺された。今回のランゲルで6人目。共通している事は「何も話さない」ことと「本当は死んでいるはずの人間」だということ。