フェーズ12
函館からおよそ8時間。知床半島に到達した。
途中でたくさんのCRDによった。だが見えた世界は一つのような気がした。いや、今はそんなことはどうでもいい。
知床半島の岬に到着した。目の前に広がるのは廃墟の工場のような建物。これが「カーム研究所」だ。中の様子は何も見えない。シュトルムは恐る恐る正面玄関に近づいた。
割れたガラスが散らばっている。玄関のドアは開いている。完全に廃墟だ。シュトルムは安心して中に入った。たくさんの錆びついた配管が設置されている長い廊下を進むと、モーター音が聞こえてきた。
シュトルムは手で合図し、ディクシーのライトを点けた。そのライトでモーター音の聴こえてくる部屋のドアを照らす。そのドアには「温室」と書かれていた。
シュトルムはゆっくりそのドアノブを握り、ドアを開いた。すると水分を含んだ温風の塊がかかってきた。まぶしい光で目がくらむ。
中に入るとやはりそこは温室だった。温度の急変に思わずフードを脱ぐ。さっきまでの雰囲気とまるで違う。完全に現在進行中の温室だった。そこにはたくさんの紅葉葵の花が咲いていた
。スプリンクラーによって濡らされた緑色の葉っぱは綺麗に輝いている。
シュトルムは確信した。カーム研究所は廃墟などではない。カームを継ぐ誰かがいる。そいつが何かを知っている。
温室を出ようとした時、奥の方からドアのあく音がした。
シュトルムは急いでしゃがみ様子をうかがった。幸いなことに植物が生い茂っているおかげで隠れる事が出来た。クロスボウに矢を装填する。
横に目をやるとディクシーがそのドアに向かってくのが見えた。
完全にばれたと悟った。しかし思わぬ声が聞こえた。
「ディクシー。元気だったか?そうか。連れてきてくれたんだな。」
「確かにもうそろそろ最終段階だ。ありがとうディクシー。やはり俺が作っただけはある。」
「シュトルム。久しぶりだな。」
シュトルムのクロスボウの先には機械の脚で白衣老人が立っていた。