フェーズ10
現在2月12日。午前11時37分。日が昇ってもCRDの外は人が少ない。シュトルムは東北自動車道をおり、青森港に向かっていた。そこからは凍結した海の上で道なき道を進む予定だ。
「ププ!着いたがじゃ~。青森港。」
「ああ。」
港はフェンスで立ち入り禁止と書いてあるが、ガラリと情けなくフェンス扉が開いている。その奥には凍結した海が広がっていた。表面がゴツゴツしていて自然の脅威を感じる。しかし見渡す限り動いているものは何もない。時が止まった世界のようだ。
「プウ!シュトルム!海上は生命限界領域に指定されているでござる。海上でくたばっちまったら助けはこねーぜ!お気を付けください。」
「けー。パーティー会場は海上ってか。笑えねー。」
「ププ!このスカポンタン!ピー!」
「いいから行くぞ。」
シュトルムはモービルを一気に加速させて海に飛び込んだ。ガンッ!と、キャタピラと鋭い海氷がぶつかる音がした。その音がこの海上の氷の厚さの目印となった。
「バピ!この海上を進めば津軽海峡です。そのまままっすぐ行けば函館!」
「了解した。」
「ブブハ!シュトルム!ニュース!」
「ディクシー。後にしてくれ。」
「プーー!いいから黙って聞けよ!神戸CRDのグライメデューサウイルス感染者の症状が悪化したらしいべ。」
「半年前に行ったところじゃないか。また誰かパンデミッカーが現れたのか?」
「ププ!詳細は不明。しかし悪化というのは不思議ですね。グラメデュウイルスの完治確率は84%一回治ってしまえばどうということはないのですが…」
「そういえば2年前に行った京都CRD、大阪CRD、名古屋CRDでも悪化を聞いたことがある。悪化したら意識不明の植物人間状態になるらしい。今のところ回復したやつはいないらしい。」
植物人間状態に陥る。
これってある意味冬眠じゃないのか?
いや、あくまで憶測だが。動かず呼吸するだけで生きているという点では…やはりカームに何らかの関係が・・・
グライメデューサウイルス…超高熱を引き起こすウイルス。2週間の高熱で吐き気、頭痛、意識混乱などの症状。これを耐えることが出来れば完治と言われている。完治確率は84%しかし、16%は死亡してしまっている。空気感染で広まりやすいが寒さに弱い。そのためCRD内では一気に全員が感染してしまう。超極小ウイルスなのでマスクや防護服での保護不可。潜伏期間は2カ月。グライメデューサウイルスの症状が悪化した状態は現在調査中。分かっている事は植物人間状態になること。