フラッシュバック
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コポコポ…コポコポ……コポコポ………コポッ…コポコポコポ…………
泡の音が聞こえる…なぜか自分の体は浮いている…いや、浮いているんじゃない…水の中に沈んでいるんだ……
目の前には厚さ15センチはあると思われるガラス。その前に、自分を見上げている白衣姿の男が見える。その男は手前にあるコンピュータをいじっている。その男は奥へ歩いていく。そして奥にある巨大なガラス管を観察しに行った。そのガラス管にも人が入っていた。
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ピー。ピー。ピー。ピー。ピー。ピー。ピー。……
なんだ、この音は?…薬品の匂いがする…自分の体を動かそうと思っても動かない…
そのとき目の前に輝く白い光玉が現われた。なんだ。ただの電気か…
白衣男が自分を覗きこむ。体に何かをつけたりしながらコンピュータをいたすらいじっている。俺になにをしているんだ?その男は何か独り言を言っている。何も聞こえない。
ピー。ピー。ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…
白衣男が急いで駆け寄ってきた。自分の頬を叩く。白衣男は青ざめた。汗をかき、かなり慌てている様子だ。一定の音が鳴り響く中、男はコンピュータをカタカタうっている。すると自分がスライドし、ガラス管の中に閉じ込められる。足の方から液体が入りこんできた。すこしずつガラス管の中を満たしていく。浮力が働いてきた………透明度の高い、紅い液体が体を包み込んだ………
ブクブクッ!ゴボッ!…コポコポコポ………コポッ…………コポコポコポ…………コポコポ……………………
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ウウウウーーーーーーーーーーーーン…ウウウウウーーーーーーーーーン……
モーター音が聞こえる。自分の体が浮いている。体には何もつけられていない。空中で…なぜ空中で……
白衣男が近づいてきた。お前は誰なんだ?俺になにをしている?俺に何を……
自分は「声」を発しようとしている。だが声は出ない。それどころか口が動かない…
白衣男は何かしゃべった。顔は笑っていた。なんだろうか…うれしさを感じられない。何かを憎んでいるような…何かを馬鹿にするような…そんな顔だった。
そして白衣男は注射針をとり出した。その針を見たとたん、何も感じなかった心に不可解なほどの恐怖心が目覚め始めた。自分が壊れてしまうのではないかというほどの恐怖は空中で宙づりにされている…まるで今の自分のように……
やめてくれ…!それを俺に見せるな…!俺にそれを向けるな…!
勿論、声は出ない。白衣男は針をもって近づいてくる。そして針を肌に近付けた。
もう言葉も出ない。息も出来ない。今、自分の上に巨大なギロチンが迫っている気がした。
針が肌に突き刺さった…
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「ウッ!ヴうヴヴ…はあッ!はぁはぁはあ・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何とも言えない叫びが。頭に物が詰まるような。全身の血液が凍るような。そんな恐怖だった。
「はあはあ。これは現実か…?」
ディクシーが近づいてきた。思わずシュトルムはディクシーをべたべた触った。
「はあはあ。げ、現実だな…。」
「プパッ!だいじけ?20秒ぐらいうずくまってたんだ。」
「20秒?いや、俺には永久に感じられるほど地獄だった。」
「プププ!カーム研究所に行くんでしょ!行くでござる!」
シュトルムはモービルにまたがった。
あのフラッシュバックはなんだったんだ………?