フェーズ8
キイイーーーガシャンッ!!
屋上の錆ついたドアを開けて、中に入る。
「ポチッ」
しばらく電源の切れていたディクシーの電源をつける。
「プパッ!キドーキドーキドウ。起動。おはようございます。こんにちは。こんばんは。さようなら。どれですか?」
いや、さようならはねーだろ。と突っ込みたくなったが毎度のことなので慣れている。
「こんばんはだよ。」
「ププ。ガッテン承知!どうします?どこへ向かうべ?」
「カーム研究所を探す。場所を教えてくれ。」
「ブブッ!OK!でもなんで?」
カーム・エキソンに秘密があるらしい。と言いそうになったが、ファルカがディクシーを一時ショートさせた時に「邪魔者はいなくなった。」と言ったことがやけにひっかかった。ディクシーにカームの話を聞かれたくなかったのかもしれない。だが、ディクシーはただのロボット。ファルカの行動は何か?ちょっと不安に感じたシュトルムは安全策をとった。
「いや昔、ウイルスの研究をしてたらしい。」
「ぷぷ…行っても跡地だすよ。まあイイケドヨー。」
ディクシーは検索を始めた。ディクシーの行動からは違和感は感じられなかった。ファルカの言葉はなんでもなかったのかもしれない。考えすぎか。
「ププッ!検索完了。カーム研究所廃墟。は北海道知床半島の北部だべ。」
「うっわっ!ここより寒いだろ…」
「プグ!気温差11℃。-93℃じゃ。」
「今から行けば何時になる?砕氷船は出てるか?」
「ップイ!現在2月11日午後8時29分。到着時刻2月12日午後2時32分。所要時間約18時間。砕氷フェリーの利用。なお生命維持のため各CRDを経由しなければなりましぇん。砕氷フェリーは運航しています。だばって砕氷フェリーを待つより、凍海を渡る方が速いでござら。現在、津軽海峡は全面凍結地帯じゃ。モービルでわたっても問題ないでしょう。」
「ふんッ。津軽海峡の冬景色を見にいこうってか?」
「プププ!約150年前の名曲じゃきゃ。よぐ知ってでゃきゃ。」
「だから津軽弁が多いのか?」
「プッ!んだ。」
はああ。とため息をつくとシュトルムはスノーゴーグルをして、手袋を厚手のものと交換した。そして高層ビルから出た。
「そこにある電気スタンドでモービルの充電。それとどっかコンビニでカイロと食糧を買おう。それとアレも買う。」
そう言ってモービルの止めてある駐車場に向かおうとした瞬間。突如、めまいがシュトルムを襲った。
くらくらと目に映るすべてのものが揺らぐ。二重三重にも重なって見える雪が目の前を乱舞する。立っていられなくなったシュトルムはかろうじて片膝をついて体勢を保つ。世界が薄く、白く見える。そして一瞬、頭に激痛が走った直後、知らない記憶がシュトルムの頭の中を這うように再生され始めたのだ。
砕氷フェリー…この時代になると、オホーツク海や津軽海峡がほぼ凍っている。津軽海峡にかんしては全面凍結が確認され、ある意味、陸路での行き来が可能となった。砕氷フェリーも電気で動く。この時代のモーターというモーターはほぼ電気で動く。
スノーゴーグル…レンズ部分には多少のデータがうつる。ディクシーと連動している。基本の役目は普通のスノーゴーグルと変わらず目の保護である。