プロローグ1
西暦2114年9月9日。100年前は「地球温暖化問題」について議論されていた。
あらゆるところで異常気象が観測され、着実によくない方向へ未来が進んでいる。人間は「温暖化問題」について議論し解決策を日々模索する。模索するのである。ずっと、模索していくのである…
それでも未来はよい方向へ向くことはなかった。昔の人間の議論はなんだったのだろう。地球温暖化対策をしていたのも知っている。教科書には「2020年に電気自動車が普及し始めた」と書いてあった。だが2114年。地球は思わぬ形に姿を変えた。地球は生命の転換期スノーボールアースをむかえようとしていた。人間が原因なのか?自然の成り行きなのか?もはやそんなことはどうでもいい。ただ生きるために…そのためだけに…
国連会議。
「このままでは完全に人類は全滅する。」「もはや打つ手がない。」「自然には勝てない。」
現状はとても悲惨な状況。50年前に化石燃料は枯渇。安定なライフラインを得るために世界は原子力発電に頼っている。しかし、世界平均低下温度はマイナス76度。対策として生命限界領域を設けたり、コールドレジスタントドーム(CRD)を設置。それでも年々、凍死する人は続出。
そんな中、今回の会議ではとある研究者の計画発表に注目が当てられていた。
その研究者の名は「カーム・エキソン」。最先端生命科学の第一人者である。
「私の考えている人類の生き残る方法は一つしかない。人間が寒さに適応することだ。」
やはり天才と呼ばれるだけあって、一般常識では考えられないことを言い出す。
「人間は進化しなければならない。そこで私が考えたのは、人間を冬眠可能な体にすることだ。」
誰もが黙り込んで研究者の顔を見る。その沈黙に懲りず、黙々と発表を進める。しかし、危険が伴うことや、かなり現実味がないことがあってか拍手は誰ひとりしない。氷点下の世界では人の心も冷たくしてしまったのか…そういうものなのか…カームはいら立ちを覚えた。そして質疑応答の時間。研究者にたくさんの罵声混じりの質問が繰り返された。
「成功する保証は?」「人間をロボットと同じにするな!」「進化はさせるものじゃない。自然に起こりうるものだ!」
カームは何も答えず、ただ現実味あふれる質問だと思った。でも、しょうがない。これが現実なのだから。彼はうすら笑いを浮かべながら、人の声と絶望によって鋭さを増したストレスの中を通り抜け、奥の方へと消えていった…