ガールフレンド その上に。
僕は、やられていた。
彼女にやられていた。
同窓会で、初恋相手に再び恋に落ちるなんて、歌や小説ではよくあるのかもしれないけれど。実生活で本当にそんなことがそうそう起こるわけないと思っていた。
いや、再び、ではないのかもしれない。
思えば、僕は。
中学生のあの日から。
ずっと彼女に恋に落ちつづけてきたのかもしれなかった。
その年の同窓会は、いつも通り8月のお盆の時期だった。場所は、よくあるっぽい、でもチェーンではない居酒屋。
「とりあえず、桜ヶ丘中学2年8組の再会を祝って、カンパ~イッ!」
クラス委員でもなんでもないが、こういう時だけはなぜかまとめ役になる、おちゃらけモノの柳田が音頭をとった。
その直後、一斉に皆が喋り出したのだが。
「ねぇねぇ、ミサが今日来るってほんと?」
「え、山内さんが?」
「男子があからさまにそわそわしてる~!わかりやすい~!」
「そりゃあ、お前らみたいなのとは違うよな~」
「なにそれ~!」
真っ先に話題に挙がったのは、彼女だった。
「哲さん、哲さん」
僕の名前を「てつ」ではなく「てっ」と発音しながら、園田が隣に来た。
「早速、山内さんが話題になってるね~」
そう言いながら園田は、手にもったグラスの中身をくいっと飲んだ。オレンジジュースの爽やかな香りが一瞬鼻をくすぐった。園田は酒は飲まないんだな。
「でもさ」
なんでもなさそうに、視線は前の料理をみつめながら、次に園田は爆弾を落とした。
「俺、知ってるんだよね、哲さんが山内さんと仲良かったこと……」
僕は園田の顔を見られなかった。
確かに、園田は正しい。僕は彼女と仲が良かった。
とても仲が良かったか、と言われると困るけど、同じ図書委員として、一緒に当番をして、その後一緒に帰って、というくらいには、仲が良かった。男子も女子も、それぞれ異性を強く意識し出す年頃だから、それから考えると、仲が良かったと言えるのではないか。
彼女は吹奏楽部に入っていたから、普段は放課後、吹奏楽部の練習に参加していたはずだ。でも図書当番の日は、僕と下校していた。「今からだと邪魔しちゃうだけだから」と言って、いつも下校時間ぎりぎりまで練習を続けている吹奏楽部には、戻らずに、だ。
もし僕のことを嫌っているようだったら、例え部活動が好きでなくても、なんやかやと理由をつけて、一緒に帰らなかったと思う。
……真面目な彼女が、(認められてはいるものの)さぼるなんて、らしくないと言えば、らしくないんだけど。
その時、部屋の格子状の仕切りの向こうから、なにかきらきらきらしたものが現れた。
「おーっ!山内さんだ~!!!」
「ミサ~、久しぶり~!」
一気に場が盛り上がる。だが、そこに現れた彼女はそれに臆するふうでもなく、かといって、過剰に反応するでもなく、
「久しぶりだね」
と言った。
その顔は、いつものあの笑顔だった。




