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短編闇鍋

デス☆ガチャ(お試し版)

作者: トカゲ

思いつきで書きました。

俺の名前は山本 八馬、今年で18歳になるフツメン男子だ。

彼女は出来た事が無く、魔法使い街道一直線のナイスガイさ!


因みに親は早くに死んでいて、親戚もいない。

更に言うと親の遺産は何もなかった。借金はあったが。


そんなナイスガイな俺だが、別に自分が不幸とは思っていない。

孤児院の院長先生は優しかったし、孤児院を出てからは直ぐに就職できた為、仕事が無くてお金に困ると言う事は無かった。

必死に生きた。休む暇なんか無かったから両親が死んだ悲しみからも直ぐに立ち直れた。

自分で言うのもなんだが、悪い事も殆どしてこなかった。

綺麗な人生だったと思う。


・・・


目を開くと、一面に広がる綺麗な花畑があり、俺は心が奪われた様な気持ちになった。

俺の周りには見たこともないような綺麗な花々が咲き誇っている。

遠くには大きな川が見えた。


さて、突然だが俺は死んだらしい。死因は閉め忘れのマンホールへの落下死だ。

何時の間にか持っていたパンフレット【おいでませ死の国】には俺の死因と死んだ後どうなったか、ここがどんな場所かの紹介が書かれている。


死んだ後、俺は無縁仏として処理されたようだ。

葬式なんかは行われず、焼かれて骨になっておしまい。そんな人生。

結構あっけなかったな。


パンフレットを読みながら歩いて行くと、大きな川に辿り着いた。

どうやらここが三途の川というものらしい。船賃なんかは持っていないが、この大きな川を泳いで渡らないといけないのだろうか?

面倒くさいと思っていたら、無縁仏用の無料渡し船があった。

パンフレットに書かれている死因を見せてそれに乗せてもらう。


死んだ人はこの後、転生審査と言う簡単な手続きをするらしい。

暇そうにしていたら船頭さんがそう説明してくれた。

渡し船には俺以外にも10人程乗っていたが、誰もが暗い顔で俯いている。

そりゃ死んだんだから暗くなるのも仕方ないかもしれない。それにこの船は無縁仏専用の渡し船だ。


(皆に看取られて大往生で死んだ人ならまだしも、孤独死みたいな感じで死んだ人に明るくしろとか無いだろうしな。)


三途の川を渡り終えると少し先に市役所のような白い建物が見える。

あそこで転生審査というものをするらしい。

建物の名前は死者市役所……安直だ。それでいいのか、死者の国。


死者市役所の前には数人の女性が立っていた。

手には【おいでませ死者の国】と書かれた小さな旗を持っている。


「日本の方々はこちらに集まってください。転生審査場所まで案内します。」


声がした方を見てみると着物を着た巫女さん風の女性がそこにいた。

腰まで届く黒髪がサラサラと風になびいている。顔も整っており誰が見ても美人だと答えるだろう。頭に大きな2本の角さえなければ完璧だったと思う。


着物の女性に付いていくと、審査待合室と書かれた場所に案内された。

転生審査は一人ずつ行うものらしく、ここで順番待ちをするようだ。

暇つぶし用の雑誌が置かれた本棚があったり、テレビで地獄ニュースなる番組が流れていたりして、凄く死んだ気がしない。なんか病院で名前呼ばれるまで待っている感じに似ている気がする。


番号札を貰った後、俺は本棚に置いてある雑誌を取ってイスに座った。

手に取った雑誌は【週刊ヘブン】。特集でイエスキリスト本人のインタビューが書かれているらしい。

死後の世界でもこんなゴシップ誌みたいなのがあるのか。


・・・


「1098番の山本 八馬さん。お待たせしました、奥の部屋までお願いします。」


多分3時間位経った頃だと思う。漸く俺の番が来た。

長く待たされた気もするが、結局キリストのインタビュー記事は読み切れなかった。

200ページも使ったインタビュー記事ってなんだよ。それだけで本が出せるよ!


雑誌を元の場所に戻した俺は言われた部屋に向かった。

「失礼します。」

「どうぞ。」


軽くノックをして部屋に入る。

部屋は少し狭くて窮屈な感じがした。奥に机があり、書類が山積みになっている。

そこには眼鏡をかけたオールバックの青年がいた。


「山本 八馬さんですね。これはお若い。どうぞお掛けください。」

「失礼します。」


眼鏡の青年に勧められるままに俺はイスに座る。

青年は大量の書類に目を通し始めた。


「あ、両親は既にこちらに来ているんですね。ではポイントのマイナスは…あ、死因も…そうですね、悪い事も特にはしてないし――」


何か良く分らないが、青年は書類を見ながらポイントがどうこう言っている。

青年は俺の死因が書かれているだろう書類を見た時に鼻で笑ったが、それは俺の死因がマンホールへの落下死だからに違いない。

しかしそれは音楽を聴きながら走ってきた自転車を慌てて避けたからで、決して俺だけのせいじゃないと言いたい。あの自転車とマンホールを開けっぱなしにしたやつが悪いと思う。


・・・


「では山本さん、まず転生システムの方を説明します。」


青年が書類に目を通し終えると、転生システムとやらの説明を始めた。

転生はこの説明が終わったらすぐに行われるらしい。なんとも忙しない事だ。


この後、転生をするまでにやる事は1つだけ。

ガチャガチャだ。ガチャポンでもいい。ほら、100円入れて回すと人形が出て来るアレだ。


【種族ガチャ】と【特性ガチャ】と【才能ガチャ】っていうのがあって、俺が死ぬまでにためた【徳ポイント】を使って来世の才能なんかを決定していくらしい。

因みに転生先はクジ箱で決まるそうだ。遊び心がありすぎる気がする。


「山本さん、あなたの徳ポイントは7723ポイントです。かなり多いですね。」

「多いんですか?それ?」

「多いですよ。その若さなのに親より後に死んでいて、特に悪い事もしていないのが大きいです。聖人クラスのポイント量と言って良いでしょう。」


なんか凄いらしい。

確かに悪い事はしてこなかったつもりだが、良い事もしたつもりはなかった。

でもここで変な事を言ってポイントを没収されるのは嫌だから黙っている事にしよう。


この後は本当に簡単な説明だけをされて転生審査は終了した。

まとめると転生したらこれまでの記憶は無くなります。的な事を言われただけだ。

次に行く場所の地図と俺の徳ポイントが書かれたプレートを貰って部屋を出る。


「ありがとうございました。」

「はい、良い来世を。」


青年はにこやかに手を振って送り出してくれた。


・・・


俺は4階に上がり、転生部屋と書かれている部屋に入る。

徳ポイントが書かれたプレートを部屋の受付の人に渡して奥に進むと、大きなクジ引きの箱があった。


「まずはこちらのクジ箱を引いていただき、転生先を決めてもらいます。」


受付の人に言われるままにクジを引くと、【e-39】と書かれた紙が出てきた。

どうやらこの番号の世界が俺の生まれ変わる世界の様だ。


受付の人に案内されて進んだ先には3つの液晶画面があった。

それぞれに【種族ガチャ】【特性ガチャ】【才能ガチャ】と書かれている。


「では説明をさせていただきます。まずは種族ガチャ、これはあなたの来世の種族を決定する物です。これはポイントを多く使えば使う程、能力が高い生物に転生できます。」


横に居た職員さんが説明をしてくれる。

1ポイントからガチャはできるが、低いポイントだとミジンコとかに転生する可能性もあるらしい。

100ポイント辺りからある程度知能がある動物になれる可能性が高くなり、1000ポイントもあればほぼ確実に人間に近い動物に転生できるようだ。


「次に特性ガチャ、これはその人の特殊能力みたいなものです。人に好かれやすいとか、病気になりにくいとか……これもポイントを多く使う程良い物になります。最後の才能ガチャは名前の通りです。転生先で持つあなたの才能がこれで決まります。」


種族と特性ガチャは1回だけだが、才能ガチャはポイントが許す限り何回やっても良いらしい。その代り才能ガチャは1回500ポイントと使うポイントが固定されている。

徳ポイントが足りない人の為に1回はポイントを使わずに回せるみたいだ。


「では、まずは種族ガチャからどうぞ。」


俺の徳ポイントは7723もある。多少贅沢に使っても問題はないだろう。

来世でも知的生命体になりたいので少しポイントを多めに使う事にする。

1000ポイントもあれば人間になれる可能性が高いようだが、少し不安なので1500ポイント使ってガチャを回す。


「転生先は人間のようですね。おめでとうございます。」


液晶画面には【人間(農家)】と書かれた文字が出ている。

これは農家の家に転生できるということだろう。


次は特性ガチャだ。

これは結構重要だと思う。炎無効とかそういう特性があればそれだけで食っていけそうな気がするし。

使いすぎかもしれないが3223ポイントで特性ガチャを引く事にする。


「……これは、もしかして。」


ポイントを入れてガチャを回すと画面が黒く染まり雷のエフェクトが入る。

何度か雷のエフェクトが入った後、ガチャに雷が落ちてガチャを黒コゲにした。


「すごい、超レア演出なんて初めてみました。」

「そんなのあるんですね。」


なんだよ、超レア演出って。そんなのあるのか。

もしかしなくてもネトゲに毒されすぎだろ、死者の国!


「特性は【超運】ですね。私はここに配属されて500年になりますが、これは初めてみる特性ですよ!」


興奮気味な職員さんの説明によると、この【超運】という特性は事故や病気等で自分に死が迫った時に発動する物らしい。

何でも神の如き幸運で死を回避できるようだ。何それ凄い。

死が迫るような状況じゃないと何の効果もない特性らしいので少し微妙な気もするが。


最後に才能ガチャを残ったポイントで回していく。

因みにどんな才能でも5段階に分けられており、同じ才能にも優劣はあるようだ。

評価1の場合は才能が無い人より少し物覚えが良い程度だが、評価4にもなれば努力次第で歴史に名を残す程の天才と呼ばれるまでに成長できるらしい。


俺の残りポイントは3500、無料分も含めた7回のガチャで良いのが当たる事を祈っておこう。


・・・・


「さて、これで転生準備は完了です。こんなに次の人生が面白くなりそうな人は久々でした。」

「それはどうも。」


俺は職員さんにお辞儀をして転生部屋を出る。

さぁ、いよいよ転生だ。



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