クリスマス 中編
C君との夢の続きです。あのまま、続いていたら……、と言うクリスマスの話。
状況説明ですが、今更ですね……。
「C君!? なんでここに?」
「なんでって、そりゃあ、ここは家の近所だから」
「え?」
あ、そういえばそうだった。前に彼の家に行ったとき、ここを通ったじゃないか。見覚えがあるような気がしたのはそのためか! と、呑気に考えていると、C君の口から不穏な内容が飛び出してくるのを聞いてしまった。
「まあ、それも間違ってはいないけど、君がここでプレゼント配りをしているのを知ったからね。部活終了しても、まだやっているのが分かったから、寄ってみることにしたんだ。普段通る道より、この道を通ると家までの距離が遠くなっちゃうから、なかなか通らないんだよね。だから、久々にこの公園を見たよ。懐かしいなぁ」
知っていたなら『あれ、何してるの?』っていうさっきのC君の発言はおかしいよね、とか、今日急遽決まったことだし、その時はまだ部活中だったはずのC君が何でここでプレゼント配りをやっていることがわかったの、とか、どうやってまだやっているのを知ったの、とか、聞きたいことはたくさんあるけど、聞けばなにか恐ろしいことが待っていそうで、その恐怖と闘う勇気はないから本能的に私には聞くことをやめた。
「あぁ、何で知っているのかは、聞かないことにしたんだ? 残念、教えてあげようと思ってたのに」
うん、だから何で人の心の中で考えていることがわかるのかな?
これもどうしてなのか大体予想がつくけど、聞かない、聞かない。聞いたら最後! 平穏な生活とグッバイだぞ! 気にするんじゃない!! 気にしたら負けなんだあああっ!! と、自己暗示をかけて精神を落ち着かせる。
てか、この人先日のことがあってから、オープンなストーカーになったよね。前よりも見られてる感があって怖いんだけど。
「だって、もうバレてしまったんだから、隠す必要はないでしょう?」
「バレたって、そっちから自主的にバラしたよね。あと、それでも犯罪行為なのでせめて隠してください」
「あれ? 見られるのはいいの?」
「諦めました」
「…………ふっ、あはははははっ!!」
私が即答で返すと、一瞬、C君は目をこれでもかと言うほど大きく開き、石のように固まってしまった。
その後石化から復活すると、お腹を抱えて大爆笑している。
おい、ちょっと失礼じゃないか、人の発言を笑うなんて。
と、文句を言いたかったけど、彼が作ったものではない、自然な笑顔を見るのが初めてで、つい怒る気力は、まあ、いいか、と言う思いとため息と共になくなってしまった。
うーん、やっぱり、私って甘いかな……?
「まだ終わらないの?」
「え? ……あぁ」
私は自分の考えに浸っていて、一瞬何を言われたのか気付けなかったが、彼の視線の先がプレゼントの入った袋に向けられていて、漸く何の話しかを思い出した。
プレゼントの入った袋の中を覗いてみると、まだ少し残っている。でも、全部配らなければならないとは言われてないし、時間帯的にはもう終わりだろう。それ以前に、何より私にはもう配る気力はゼロに等しい。しかし、ここで終わりと言ってしまっていいのだろうか……?
言ってしまったら、確実に私は彼と帰ることになるのだろう。ストーカーの彼と一緒にいていいのか、前回のように彼の家に強制連行はされないだろうか、そういう思いが私に素直に返事をすることを躊躇わせていた。
そんな私の必死の葛藤は、
「おー! いたいたっ! 妹! もう帰って貰っていいぞ。こんな時間だし、子供たちももう帰っていくだろうから」
私をこの面倒ごとに巻き込んだ張本人、"ヤツ"ことAさんの台詞で全て無に帰すわけだけど……。