#003:こころ(前編)
・・・。そして今日という日はやって来た。
現在朝の6時12分。そらは晴れている。息が白い。自分でも緊張感が増してきているのがわかった。
少しで冷静になってみる。
「レースか・・・」
今まで本格的な1対1のタイマンレースはした事が無かった。
「あいつ・・・来るのか?本当に・・・。」
音楽プレーヤを片手に涼介はバイトに向かった。
バイト中はバトルの事は考えまいとしていたが、どうしてもそれが脳裏をよぎる。
勝てる
そして時間は無情にもすぎて行った。
約束の場所へ向かう。
レースのルールはセクションと呼ばれる通過点を通るということと、スタート、ゴールのポイントのみ決められている。
より速くゴールラインを通過したものが勝者だ。他に明確なルールは存在しない。
つまり一般車を巻き込もうとライバルの車にぶつけようと関係ないのだ。
全てはライバルより先にゴールラインを通過することだけを目的とする。
鼓動が激しくなる。
「この緊張感・・・勝ち目はある。」
「しゃあー!いっけぇーっ!」
タイヤを温めるという口実でアクセルを強く煽りホイールスピンをさせる。
法定速度をわずかにオーバーする速度で青い流星は走ってゆく。
そして約束の場所に到着した
誰かいる様だ
「ロータリーサウンド!?」
あいつはここへやって来ていたのだ。そして俺は不安げに言った。
「勇人・・・なのか?」
「ああ、涼介久しぶりだな」
何も変わっちゃいなかった。
FDに乗ってやがるし。
「もう道は知っているな」
強気で勇人が言う。
そして俺たちはそれぞれのクルマに乗り込んだ。
合図と同時に激しいホイールスピンの音とともに白煙があたりを覆った。
そうして危険なカーレースが幕を開けた。