教室、窓辺にて。
「麻穂ー」
窓に1番近い席。
明弥は椅子じゃなく、窓際にある広めの棚に座って足をぶらぶらさせていた。
「何?」
教室、窓際の1番端っこ。
大きな等身大の窓に寄りかかり、視線を明弥に向ける。
「今日って部活無いの?」
少しだけ開いた窓から、冷たい風が吹き込んできた。
私の頬を撫で、そのまま明弥の髪を掠めてゆく。
「あったら多分、ここにいないよ」
教室内は静まり返っていて、私達の他に誰もいない。
部活のある生徒はさっさと部活に向かっていたし、部活の無い生徒はさっさと帰路についていた。
「明弥は?外でバスケ部やってるけど」
中学時代、野球部に属していた明弥は、『坊主とか、もう嫌だ』とかいう理由で高校では野球部に入らなかった。
…中学時代、野球部は全員坊主にするという伝統があったから。
明弥のなかで『野球部=坊主』が定着していたらしい。
まあ、私の高校も坊主なのだが。
「俺、サボり。体調悪いから」
「…何で体調悪い人間が家に帰らないで、教室に居座ってるの」
「だって麻穂が動かないんだもん」
「私だって、明弥が部活行くの見届けてから帰ろうと思ったの」
思わぬ所で気持ちが重なり、ちょっとずれた重なり方をした結果。
大きな窓によりかかる私と、棚に座って足を揺らしている明弥、という事に。
「ねえ、麻穂」
「はい?」
「俺、微熱あるっぽい」
言うが早いか、机から身軽に飛び下りた明弥は、窓によりかかる私の前に立ちはだかった。
すらりとした長身の明弥は、私より頭2つ分くらい大きい。
不意に明弥が屈んで、私の目線と明弥の目線が重なった。
その清らかな瞳が私の目を覗き込むものだから、私は微かに頬を赤らめる。
「―――どう?」
コツン。
私の額に自分の額を合わせ、明弥が問う。
触れ合った場所は、やや温かく感じられた。
「あったかい」
そう素直に言うと、
「じゃ、風邪だ」
と言葉を返される。
「そーだね」
「…うつしてもいい?」
私はちょっとだけ間をあけ、軽く目を閉じて答える。
「どうぞ」
顎に指がかかって、ふんわりと甘い香りがした。
合わさった唇は、あくまで柔らかい。
その先を求めるキスじゃなく、瞬間を楽しむような、そんなキス。
今度は自分から、明弥の額に自分の額をくっ付けた。
「私が風邪引いたら、看病してよね」
目線を合わせようと、少し上目づかいになる。
距離が数センチにも満たないその顔が、少し紅潮した頬で微笑んだ。
―――紅潮した頬が風邪によるものか、はたまたキスによるものかは、私に理解できるはずもない。
End…
読んで頂きありがとうございましたw
読む人が読めば甘々だし、読む人が読めば可愛らしい青春。
そんな感じに描かせて頂きました^^
…作者的には、可愛らしい青春を推してます←
それでは。
ここまで読んで下さった皆様に、最大の愛と感謝を込めて。
With love...
ありがとうございました!