庸帝、決意の旅路
俺は暗君に転生した。世界は危機に満ちている。苦しむ人々を放ってはおけない。悪を断固として裁き、民を第一とする。
社畜だった俺は転生した。
「陛下、辺境の魔獣が最前線を完全に突破しました。どうか現地へ御視察ください。内通者がいるものと思われます」臣下が一筆の手紙を差し出す。
「我が名は帝皇三世・デランス」目の前で報告する臣下の瞳には、どこか諦めの色が滲んでいる。
そうだ。デランスは愚君だ。何もせずにただ日を過ごす、全くの無為無能な王様だった。
俺は手紙を手に取る。辺境将軍スカイからの書簡だ。
「我が君へ末将は死んでも国を守り抜きます。どうか国事を軽んじないでください」
この文面を見て、胸が締め付けられる。愚かな王よ。お前を全て否定することはできない。だが、お前のせいですでに何百万人もの命が失われてしまったのだろう――それでもなお、俺はお前を敬っている。
俺は即座に三十万の大軍を率いて辺境へ向かうことを決めた。
軍営へ視察に向かうと、あきれ返る光景が広がっていた。兵士たちは皆、何不自由なく贅沢に暮らしているかのような様子で、大将軍エドは極端に肥満していた。
「我が君、なぜここへ?」エドが問いかける。
俺は怒りを込めて問い詰めた。「なぜだ。辺境の状況は危機一髪なのに、何故こんなに悠々自適にしていられるのだ!」
エドは言葉を失い、ただ驚きと恐怖を浮かべて俺を見つめるだけだった。
「…… 至急、兵力を差し向けろ。私と共に最前線へ行き、味方の兵士たちを援護する。分かったな?」
エドは頷いた。
俺は佩剣を握りしめ、ぐずぐずと動くだらしない兵士たちを眺めた。まずは食糧と装備を整えねばならない。俺は側近に用意を命じた。
全ての準備が整い、俺は馬車に乗って辺境へ向かった。佩剣を抜くと、刃に映ったのは、やや疲れた自分の顔だった。
賭けてもいい。この皇帝も、以前は一度は国事に励もうとしたことがあるはずだ。
しばらく馬車が揺れた。突然、俺は違和感に襲われた。
殺気。
強烈な殺気だ。
俺は素早く剣を抜き、暗矢を一刀で受け止め、即座に馬車から飛び出した。エド将軍が配した部下たちだった。
エドが手を叩いて現れる。
「すごいなすごい。我が君が、よもや国事を動かすとは。残念だが、我々にはそんな皇帝は必要ないのだ」言うと、肥えた体から一躍、剣を突き出して俺を刺そうとする。
俺は腕を上げて受け止めた。「この体に格闘の記憶が……!」驚きながらも、俺は速やかにエドを制圧した。
「ちくしょう、こんな腕前があったとは…… 我が部下を相手にできるものならやってみろ!」
エドの叫びと共に、兵士たちが囲みを形成する。
俺は周囲の兵士たちに声を上げた。
「諸君。お前たちは皆、国の功労者だ。私は認める。以前の私は愚かな王だった。だが今は違う。私はお前たちと共に戦う。お前たちの同胞は最前線で戦っている。家族は帰りを待っている。辺境の民は救いの手を渇望している。お前たちは、人々に語り継がれる英雄になりたくはないのか!」




