地獄から来た忠義の剣! もう一人の副団長VR
「軟弱なパフォーマンスだと……? 言ってくれるじゃない」
俺がポニーテールをなびかせ、『激辛親衛隊』の連中に向かって杖を構えようとした、その時だった。
「――主の舞台を汚す不届き者共。その首、地獄へ送ってやろう」
凍てつくような低い声と共に、広場の屋根から一人の男が舞い降りた。
髪は長すぎず、精悍な印象を与える普通の長さ。漆黒のロングコート……ではなく、異世界には珍しいカジュアルなパーカーを着こなし、背中には巨大な大剣を背負っている。現代的なラフさと、圧倒的な剣士の威圧感が同居した不思議な男だ。
「な、何だ貴様は!? 我ら『激辛親衛隊』の邪魔をする気か!」
「貴様らの名など興味はない。俺が斬るのは、あおこ様とわさこ様の不利益となる存在のみだ」
男が背中の大剣に手をかけた瞬間、俺はそのパーカーの裾に見覚えのある紋章を見つけた。
「……その独特の中二病じみたオーラ。お前、まさかVR地獄か!?」
男はピタリと動きを止めると、まるで糸が切れた人形のように俺の方へ向き直った。そして、先ほどまでの冷徹な表情を一変させ、その場に跪いたのだ。
「……おお! あおこ様! お探ししておりました! 転生した先で貴方様のお名前を聞き、地獄の果てから馳せ参じました!」
「VR……! お前も来ていたのか!」
彼こそ、前世でワサラー団の武闘派副団長として恐れられ(ネタにされ)、誰よりも俺とわさこに忠誠を誓っていた男、VR地獄だ。
「あおこ様、そしてわさこ様。このVR、異世界においても貴方様方の盾となり、剣となる所存。……わさこ様、今日もお美しいですね。わさびの香りが最高です」
「相変わらず従順ね、VR。いいわ、その大剣で不快なアンチたちを片付けなさい」
わさこ師匠が冷たく、しかし信頼を込めて命令を下す。パーカーのフードを深く被り直し、VRは不敵に笑った。
「御意に! ――我が魔剣の錆となれ!」
VR地獄が立ち上がると、その魔力は爆発的に膨れ上がった。彼は「VR」の名にふさわしく、残像を残しながら一瞬で『激辛親衛隊』のど真ん中に切り込んだ。
「ぎゃああああ! 速すぎるっ!?」
「あおこ様! 今です、この戦いこそが最高のクリエイティブ・コンテンツ! 拡散を!」
みるきぃが黄金の演出魔法で、VRのパーカーがたなびく中での鋭い剣筋に「斬撃エフェクト」を上乗せし、映像を強化する。
「任せろ! 拡散魔法――『全世界トレンド同時多発リポスト』!!」
VR地獄の圧倒的な剣技が、みるきぃの演出によって神話の戦いのように彩られ、俺の魔力で街中の人々の意識に叩き込まれる。
「すげぇ……ワサラー団には、あんな最強の剣士までいるのか!?」
「あのカジュアルな格好で、なんて実力だ……!」
群衆の熱狂は最高潮に達し、『激辛親衛隊』は戦う前に心の折れた「アンチ」として逃げ出していった。
「ふむ……これで障害は排除した。あおこ様、次はどの敵を滅ぼせばよろしいでしょうか?」
剣を背負い直したVR地獄が、再び俺の前に跪く。その様子はまさに、姫に仕える忠実な騎士そのものだった。
「よし! VRも加わって、ワサラー団はいよいよ盤石だな!」
ポニーテールを揺らしながら、俺は仲間の顔を見渡した。
わさこ、緑茶、みるきぃ、そしてVR地獄。
異世界の歴史を塗り替える「伝説のバズり」は、まだ始まったばかりだ。




