映えろわさび! 拡散魔法とクリエイティブの共鳴(シンパシー)
「二郎系」でスタミナを全マシした俺たちは、みるきぃの提案で街の中央広場へとやってきた。
「いい? あおこ様。ただ魔物を倒すだけじゃ『バズ』は一過性で終わっちゃうわ。大切なのは……世界観よ!」
みるきぃが黄金色のフリルをなびかせ、ハートのチョーカーに指を添える。
「私が魔法で最高のステージをクリエイトするから、わさこさんはそこで一番カッコいい魔法を放って。あおこ様はそれを街中に拡散する……これで、ワサラー団のフォロワーは一気にカンストよ!」
「なるほど、面白い。やってやるよ!」
俺はポニーテールをきゅっと結び直し、見習い杖を構えた。
「……ふん、注文が多いわね。でも、やるからには完璧に決めてあげるわ」
わさこ師匠が「生わさび」の杖を抜き放つ。広場の中心に、ピリリとした緊張感が走る。
「いくわよ! クリエイティブ魔法――『黄金の演出』!!」
みるきぃが空中に魔法陣を描くと、広場全体が柔らかな黄金色の光に包まれた。同時に、空中に無数のクリスタル状の「モニター」が浮かび上がる。これはみるきぃの魔力で作られた、戦いを美しく見せるための特殊な空間だ。
「今よ、わさこさん!」
「――『翠緑のわさび乱舞』!!」
わさこが杖を旋回させると、龍のような緑の魔力奔流が黄金の空間を駆け抜ける。
本来ならただの攻撃魔法だが、みるきぃの演出魔法が干渉し、魔力粒子がキラキラと光るエフェクトへと変換され、この世のものとは思えない絶景を作り出した。
「すげぇ……めちゃくちゃ『映えて』る! ――今だ、拡散魔法!!」
俺は広場に集まった群衆の「視線」をターゲットに定め、魔力を流し込む。
「『全マシリポスト(強制トレンド入り)』!!」
俺の魔力が、みるきぃの作った映像とわさこの魔法の美しさを増幅し、街中の人々の脳内に、そしてギルドに設置された遠隔水晶球へと一気に「転送」された。
「な、なんだあの光景は!? 美しすぎる……!」
「わさびの香りが、こんなに神々しいなんて!」
「あのポニーテールの美少女が、この魔法を広めてるのか!?」
街中の人々が足を止め、空を見上げる。みるきぃの計算通りだ。
黄金の光と緑の龍が混ざり合い、広場は熱狂の渦に包まれた。
「見てください、あおこ様! ギルドの『注目度ランキング』が爆上がりですっ!」
緑茶が水晶板を指差して叫ぶ。そこには、新設されたばかりの『ワサラー団』の名前が、名だたる大ギルドを抑えて急上昇している様子が映し出されていた。
「大成功ね。……でも、注目されすぎるのも考えものよ?」
わさこが冷静に呟いた直後。
広場を包んでいた黄金の光を切り裂くように、一際冷たい魔力の矢が撃ち込まれた。
「――浮ついた魔法だ。そんな軟弱なパフォーマンス、我ら『激辛親衛隊』が認めんぞ」
群衆の中から現れたのは、赤いマントを羽織り、唐辛子の紋章を刻んだ鎧を着た一団だった。
「……アンチのお出ましだな」
俺は不敵に笑い、ポニーテールをなびかせた。
売名が成功すれば、当然「競合」が現れる。それこそが、この売名無双の醍醐味だ。




