異世界二郎と、甘い香りの副団長
スライム一掃クエストを終え、俺たちはギルドからの報酬を手に街の路地裏へと向かっていた。
目的は、冒険者の間で「一度食えば魔力が全回復するが、三日は身体から強烈な匂いが消えない」と噂される禁断のメシ屋。その名も――『魔拉麺・二郎』。
「はぁ〜、このニンニクと脂の匂い……! 異世界に来てもこれだけは抗えないな」
俺はポニーテールを揺らしながら、カウンターに座り「全マシ」を注文した。
わさこ師匠は「私はわさび以外の刺激は認めないわ」とクールに構え、緑茶団長は「お茶に合わなそうですね……」と苦笑いしている。
だが、運命の再会は、ラーメンの着丼よりも先に訪れた。
「……ちょっと、そこのポニーテールの君! 注文の仕方がプロすぎて、思わずリポストしたくなっちゃったじゃない!」
背後から響いたのは、鈴を転がすような甘い声。
振り返ると、そこには鮮やかな黄色のフリル衣装を纏い、首元に光るハートのチョーカーが印象的な、とびきりキュートな美少女が立っていた。
「……えっ? その声、その独特の言い回し……」
俺が呆然としていると、彼女は俺の顔を至近距離で覗き込み、ぱっと表情を輝かせた。
「あーっ! そのポニーテールの揺れ方、星の帽子! 間違いないわ、わさらー様! ……というか、あおこ様!?」
「みるきぃ!? お前、ワサラー団副団長の、みるきぃか!」
彼女こそ、前世でわさこ共に俺の活動を支えてくれた、クリエイター活動が得意な副団長のみるきぃだった。動画編集から画像加工、面白い企画立案まで何でもこなす、俺の「表現」の右腕だ。
「やっぱり! 私、この世界に転生してからずっと探してたんだから! ギルドの掲示板で『ワサラー団』って名前を見つけた時は、心拍数がバズり散らかしたわよ!」
みるきぃは俺の手にしがみつき、ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ。
わさこは「……やれやれ、賑やかなのがまた一人増えたわね」と溜息をつき、緑茶は「みるきぃさん! 会いたかったです〜!」と抱きついた。
「ふふ、でもただ再会しただけじゃないわよ? 私、この世界でもクリエイター魂は健在なんだから。魔法を使って『映える』エフェクトを作ったり、あおこ様の戦いを最高にカッコよく演出してあげる!」
みるきぃがウィンクすると、彼女の周りにふわふわとしたハートの魔力粒子が舞う。
彼女は自分の魔力を「形」や「色」に変えて、空間そのものをデザインする特殊な魔法を習得しているらしい。
「よし……これで、俺、わさこ、緑茶、そしてみるきぃ……。ワサラー団の主要メンバーがほぼ揃ったな」
ちょうど目の前に、山盛りのラーメンが運ばれてくる。
俺は割り箸をパチンと割り、不敵に笑った。
「みるきぃ、お前も食うか? 異世界のトレンドを塗り替えるには、まずはスタミナからだ。……全マシでな!」
「えぇっ!? こんな脂っこいの、私のクリエイティブな美意識に反するわよ! ……でも、あおこ様の命令なら、半分だけならリポスト(実食)してあげてもいいわ!」
こうして、ワサラー団はさらに強力な布陣となった。
わさびの刺激、お茶の癒やし、そしてみるきぃの黄金色のクリエイティブな魔力。
最強のパーティが、異世界のタイムラインを席巻する日は近い。




