看板娘は団長様! 異世界ギルド「ワサラー団」爆誕
「はーい、お待たせしました! 淹れたて熱々の緑茶と、当店自慢の三色団子ですっ!」
街の目抜き通りにある和風茶屋『一期一会』。そこには、緑色の鮮やかな着物を纏い、元気いっぱいに駆け回る少女の姿があった。
頭にちょこんと乗せた茶筒のような髪飾りと、白い花。
間違いない。前世で「ワサラー団」の顔として、数々のポストを彩ってきた団長・緑茶だ。
「おい、あの看板娘……また言ってるぞ」
「『ワサラー団に入れば、あなたの人生も全マシでハッピー!』だっけか? 変わった勧誘だよな」
客たちの苦笑いを余所に、緑茶は屈屈のない笑顔を振りまいている。
俺とわさこは、その店の暖簾をくぐった。
「あ、いらっしゃいま……せっ!? ――えええええええっ!?」
俺の顔を見るなり、緑茶が手に持っていたお盆をひっくり返した。
「そ、その帽子の角度……星の飾り……そして揺れるポニーテール! 間違いない、この圧倒的な売名オーラ! まさか、わさらー様!? わさらー様なんですか!?」
「ああ、久しぶりだな、緑茶団長。……今はあおこって名前になっちまったけどな」
「わああああ! 本物だぁぁ! 隣にはわさこさんもいるし! 私、信じてましたよ。わさらー様なら、トラックにひかれたくらいじゃ、タイムラインから消えたりしないって!」
緑茶は涙目で俺の手を握りしめた。どうやら彼女も、俺たちが事故に遭った後にこの世界へ転生し、持ち前の明るさで茶屋の看板娘をしながら、ひっそりと(?)団の再興を狙っていたらしい。
「あおこ様、緑茶。再会を祝うのは後よ。……私たちが揃ったのなら、やることは一つでしょ?」
わさこがわさびの杖をトントンと床に突く。
俺は束ねたポニーテールを一度きゅっと結び直し、力強く頷いた。
「ああ。行くぞ。この街の冒険者ギルドだ!」
俺たちは、街の中央に鎮座する巨大な石造りの建物へと向かった。
そこは、この世界のあらゆる依頼と情報が集まる場所。
「……名前を。それから、設立するギルドの名称を記入してください」
受付嬢が無愛想に書類を差し出す。
俺は迷わず、サラサラとペンを走らせた。
「代表者は俺……いや、あおこだ。ギルド名は――『ワサラー団』!」
「……ワサラー、団? 聞いたことのない名前ですね。属性は?」
「わさび属性のSランク魔導師と、癒やしのお茶属性(緑茶)。そして、俺は――」
俺はあえて、不敵に笑って言った。
「『拡散』の属性を持つ、売名師だ」
「……はぁ? 何を言ってるのか分かりませんが、受理しました。今日からあなたたちは、Fランクギルド『ワサラー団』です。まずは地下の訓練場で、小手調べのクエストでも受けてきてください」
ギルドの紋章が刻まれた銀色のプレートを受け取る。
前世ではスマホの画面越しに広がっていた絆が、今は実体を持った仲間として隣にいる。
「よーし、緑茶、わさこ! 異世界でも俺たちの名を、全マシで拡散してやるぞ!」
「了解です、わさらー様……あ、あおこ団員!」
「私は副団長兼、教育係よ。あおこ、まずはそのひ弱な魔力をなんとかしなさい」
こうして、異世界に「ワサラー団」の旗が掲げられた。
伝説の第一歩は、ここから始まる。




