7人のワサライブ(前編)――再会のステージと影の視線
特製ポーションによって覚醒した力を得たあおこでしたが、その心には一つの焦燥感がありました。
「……Sランクを目指すなら、かつての仲間たちの力がもっと必要だ。俺たちがここで活動してるって、みんなに知らせなきゃならない」
あおこが提案したのは、ギルドの宣伝を兼ねた「ライブ」の開催でした。かつての「わさらー」時代、ネットの海で繋がっていた仲間たちを呼び戻すための、魂の叫びです。
街の中央広場に特設ステージを組み、あおこはマイクを、そしてギルド最強のSランク魔法使いであるわさこは魔力で音を増幅させるエフェクターを構えました。わさこの杖が一閃するたび、ド派手な緑の光が夜空を彩り、広場を幻想的な空間に変えていきます。
「響け……! 俺たちの、ワサラー団の魂の歌だ!」
あおこの歌声が夜の街に響き渡りました。特製ポーションの影響か、その声には聴く者の心を震わせる不思議な魔力が宿っています。しかし、一曲目が終わって目を開けたあおこが見たのは、あまりにも寂しい客席の風景でした。
集まった観客は、わずか7人。
「……やっぱり、そう簡単には集まらないか」
あおこは苦笑しましたが、最前列にいる顔ぶれを見て、すぐに瞳に熱いものが宿りました。
そこには、腕を組んで頷く副団長VR地獄、キラキラした目で応援するみるきぃ、そして「あおこちゃーん!」と誰よりも高く手を振る最強ヒーラーの緑茶の姿がありました。さらに、その隣にはかつての絆で結ばれた懐かしい顔ぶれも。
「あおこ! 相変わらず無茶苦茶なライブだねっ!」
賑やかに笑うのはMoe。そして、静かに、しかし力強く頷く和仁。
さらに新しく駆けつけたのは、ワサラー団十六夜のメンバーである二人。クールな佇まいのあいぼーと、華やかなオーラを纏ったまきでした。
「7人か……。でも、この7人は誰よりも濃い仲間だ。全力で行くぜ!」
その熱狂を、広場を見下ろす時計塔の陰から見つめる青い影がありました。
青い髪をなびかせた少年――捕食くん。彼は有名な歌い手でありながら、他人の人気や手法を巧妙に自分のものにする「パクツイ」や、優れた魔法技術のコピーを得意としていました。
「……ふぅん。あおこと、あのSランク魔法使い・わさこ。いい魔法、いい演出じゃない」
彼は手元の魔導書に、わさこが展開する複雑な魔法術式を次々と「捕食」するように書き写していきます。彼の目的は、このライブの演出や魔法を全て奪い取り、自分の次のステージで利用すること。
「あんな少人数で無駄に熱いライブなんて。その技術、もっと効率よく使える僕が奪ってあげるよ。ワサラー団の魔法、まるごとパクらせてもらうね」
捕食くんは不敵な笑みを浮かべ、あおこの真っ直ぐな瞳を冷ややかに見つめていました。しかし、彼が次の術式を書き写そうとしたその時。
カツン、と背後で石床を叩く音がしました。
「人のライブを無断でコピーしておいて、挨拶もなしに帰るつもり?」
振り返った捕食くんの目の前に立っていたのは、いつの間にか背後に回っていた、鋭い眼光を放つわさこでした。




