覚醒の一滴――ワサビポーションの衝撃
緑茶は完成したばかりの小瓶を胸に抱き、あおこの家へと息を切らせて駆け込みました。
「あおこちゃーん! できたよぉ、特製ポーション!」
リビングでちょうど次の冒険の準備をしていたあおこは、緑茶の勢いに驚きつつも、その手に握られた鮮やかなグリーンの小瓶に目を丸くしました。
「お、おう、緑茶。それが例のわさびで作ったやつか? ……なんか、今まで見たことないくらい光ってるな」
「えへへ、わさこちゃんにも手伝ってもらったんだよぉ。あおこちゃんを応援するために、一生懸命作ったんだからっ!」
傍らにいたわさこが、腕を組んで不敵に笑います。
「Sランク魔法使いである私の魔力を、緑茶の癒やしで限界まで圧縮して閉じ込めたわ。……覚悟して飲みなさいよ?」
あおこはゴクリと唾を飲み込みました。信頼する二人が作ってくれたもの。断る理由はありません。
「よし……。ワサラー団の団長として、ありがたくいただくぜ!」
あおこは小瓶の栓を抜き、一気にその液体を喉へと流し込みました。
「…………っ!!?」
飲んだ瞬間、あおこの時が止まりました。
まず襲ってきたのは、鼻の奥を突き抜けるような、かつてない強烈なツーンとした刺激。涙が溢れ、脳の細胞一つ一つが強制的に叩き起こされるような感覚。そして次の瞬間、その刺激を追うようにして、緑茶の温かな癒やしの波動が全身の血管を駆け巡りました。
「あ、あ、熱い……! 体の中から力が溢れてくる……!!」
あおこの体がエメラルドグリーンのオーラに包まれ、部屋の空気がビリビリと震え始めます。あまりのエネルギーに、あおこは思わず庭へと飛び出しました。
「うおおおおお!!」
あおこが手近な木刀を振るうと、ただの素振りのはずが、鋭い衝撃波となって空気を切り裂きました。その動きは以前の数倍速く、迷宮での疲れなど微塵も感じさせません。
「すごぉい! 大成功だねぇ、わさこちゃん!」
緑茶がぴょんぴょんと跳ねて喜びます。
「ふん、当然の結果よ。でも、その出力に耐えられるかどうかは、あおこ次第だけどね」
わさこはクールに装っていますが、その瞳には満足げな色が浮かんでいました。
あおこは荒い息を吐きながら、自分の拳を見つめました。
「すごい……これなら、どんな強敵が相手でも戦える気がする。緑茶、わさこ、ありがとう! 俺、この力を使いこなせるように、今日からまた特訓だ!」
特製ポーションによって覚醒の兆しを見せたあおこ。しかし、その強烈な魔力の波動は、遠く離れた暗闇の中に潜む「何か」を、確実に刺激していました。




