記憶の残響――目覚めと「原点」の再確認
「……あ、れ」
あおこがゆっくりと目を開けると、そこは保健室の白い天井でした。窓からは、放課後の柔らかな夕日が差し込んでいます。
無垢王との激闘、そして彼が強制ログアウトされた衝撃で気を失っていたあおこは、深い眠りの中で不思議な夢を見ていました。それは、異世界に来る前の自分――「わさらー」という名の大学生が、生まれたばかりのつぶやきアプリで「ワサラー団」を結成した時の、遠い日の記憶でした。
「懐かしいな……。ただ、みんなと楽しくやりたかっただけなんだよな、俺」
あおこは独り言を呟き、ベッドから身を起こしました。ふと横を見ると、椅子に座って居眠りをしているわさこの姿がありました。
「……わさこ」
あおこの声に、わさこがハッと目を覚まします。「あおこ! 気がついたのね。……顔色が良くなって安心したわ」
あおこは、夢で見た「原点」の話をわさこに語り始めました。ランキングに載りたかったこと、名前を共有することで仲間を増やしたかったこと。そして、自分一人の力では足りず、誰かに団長を託したこと。
「無垢王は、力を誇示するために団を壊そうとした。でも、俺がワサラー団を作ったのは、壊すためじゃなくて、みんながエンジョイできる居場所を作るためだったんだ。今回、そのことを思い出せた気がするよ」
わさこは優しく微笑み、あおこの頭を撫でました。
「そうね。その想いがあるからこそ、今のワサラー団があるのよ。あおこ、あんたが迷った時は、いつでも私たちが引き戻してあげるわ」
そこへ、保健室の扉が静かに開き、みるきぃと緑茶が入ってきました。
「あおこちゃん! 起きたんだね、よかったぁ……!」
みるきぃが安堵の表情で駆け寄り、その隣で緑茶が、ふんわりとした癒やしのオーラを纏いながら、あおこの手をそっと握りました。
「あおこ、おかえりなさいっ。体はもう痛くないかな? 一生懸命がんばったもんね、えらいえらいだよぉ。お茶を淹れてきたから、ゆっくり飲んで元気になってね?」
緑茶の可愛らしい笑顔と、指先から伝わる微かな回復魔法の温かさに、あおこの心もすっかり解きほぐされていきました。
「ありがとな、緑茶。俺、やっぱりこの場所が大好きだわ」
前世で「わさらー」が撒いた種は、この異世界で、かけがえのない絆という花を咲かせているのだと、あおこは心から確信しました。




