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あおこという少女、長野という異郷
「……ん……ここは……?」
重い瞼を開けると、そこは見たこともない天井だった。
窓の外からは清らかなせせらぎの音と、鳥のさえずりが聞こえる。
体を起こそうとして、俺は違和感に気づいた。身体が……あまりにも軽い。
「あおこ! 目が覚めたのね! 急にわさび畑で倒れるから心配したわよ!」
「……あおこ?」
聞き覚えのない名で俺を呼んだのは、素朴な服を着た女性だった。
彼女が去った後、俺はおそるおそる部屋にある鏡の前に立った。
「……え、嘘だろ?」
鏡の中にいたのは、179cmあったはずの俺ではない。
透き通るような肌、目が覚めるような金髪のポニーテール、そして星の飾りがついた帽子を被った、17歳の可憐な美少女だった。
「これが……俺? ……いや、俺なのか?」
名前は、あおこ。
ここは、前世の長野県を彷彿とさせる、しかしどこか決定的に異なる異世界の安曇野。
俺は、わさび農家の娘として転生してしまったらしい。
前世の記憶を保ったまま、美少女として生きる第ニの人生。混乱する俺だったが、この世界には「魔法」という名の未知の力が満ちていることを肌で感じ取っていた。




