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修行開始編・動――「わさび地獄」と魔法陣の覚醒

朝日が砂漠の地平線を赤く染める頃、修行の場は「緑茶の庵」から少し離れた岩場へと移っていた。


あおこの前に立ちはだかるのは、かつてのワサラー団リーダー、わさこだ。彼女は鋭い視線を向け、あおこに言い放つ。


「『静』の修行で魔力の密度は上がったようね。でも、それを戦いの中で引き出せなきゃただの飾りよ」


わさこが軽く指先を振ると、彼女の足元に赤紫色の禍々しい魔法陣が幾何学模様を描きながら展開された。


「さあ、実戦形式の魔法組手よ。名付けて『回避不能なわさび地獄』。生き残れたら、魔法陣の構築術を教えてあげる」


猛攻、そして解ける髪

「行くわよ!」


わさこの宣言と共に、赤紫の魔法陣から無数の「わさび弾」が射出された。それは単なる物理的な弾丸ではなく、周囲に強烈な刺激臭と魔力を撒き散らし、呼吸さえ困難にする。


「うわっ、鼻がツーンとする……!」


あおこは必死に地面を蹴り、右へ左へと飛び退きながら回避を続ける。しかし、わさこの攻撃は次第に激しさを増し、あおこを逃げ場のない角へと追い詰めていく。


その時だった。急激な回避の負荷に耐えきれず、あおこの髪を束ねていたゴムが弾け飛んだ。


「あっ……!」


挿絵(By みてみん)


結んでいたポニーテールが解け、長い髪がバラリと肩に広がる。 振り乱された自分の髪が一瞬だけ視界を遮った。その致命的な隙を逃さず、わさこの放った最大級の衝撃波が、あおこの目前にまで迫る。


挿絵(By みてみん)


覚醒の「ワサビ・キャッチ」

(死ぬ――いや、止まってたまるか!!)


あおこは死に物狂いで、修行で培った濃密な魔力を両手のひらに集中させた。視界が髪に覆われようとも、魔力の「芯」だけは見失わない。


「出ろぉぉ!!」


あおこの叫びに呼応するように、彼女の目の前に鮮やかな緑色の魔法陣が具現化した。


「吸い込め! ワサビ・キャッチ!!」


緑の魔法陣が猛烈な勢いで回転を始める。迫り来る赤紫の衝撃波は、あおこに触れる直前でその回転に巻き込まれ、まるで吸い込まれるように魔法陣の中心へと消えていった。


中和された魔力が柔らかな風となって、あおこの解けた髪を優しく揺らした。


合格の証

「……はあ、はあ……。やった、のか?」


あおこが息を切らしてその場にへたり込むと、魔法陣は静かに光を失っていった。わさこは満足そうに自身の魔法を解き、あおこの元へ歩み寄る。


「合格よ。髪が解けるほどの死線で、よく魔法陣を固定したわね。その執念こそが新しい力を生んだのよ」


「……へへ、死ぬかと思ったぜ」


岩陰で見守っていた仲間たちが駆け寄ってくる。ピンク色のロングヘアを2つにまとめたヒストリムは「あおこ、今のカッコよかったよ!」とはしゃぎ、少年の華麗うどんも青いフードを直しながら「……フン、少しはマシになったじゃねえか」と、俺流の言葉でその成長を認めた。


あおこの手には、まだ微かに緑の魔法陣の感触が残っている。それは彼女が掴み取った、確かな一歩だった。

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