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全マシの残り香と、異世界の目覚め
「よし、今日のポストも完璧だな。これでまたフォロワーが増えるぞ」
俺、わさらーは、薄暗い部屋の中でスマホの画面を眺め、満足げに口角を上げた。
俺が創設した「ワサラー団」は、つぶやきアプリ界で知らぬ者はいない一大勢力だ。
有能な秘書・わさこが実務を完璧にこなし、天真爛漫な団長・緑茶がその愛嬌で団を象徴する。俺は創設者として、ただ「わさらー」という名を世界に売名することに全精力を注いでいた。
「……さて、腹も減ったし『戦い』に行くか」
俺はスマホをポケットに放り込み、夜の街へと繰り出した。
向かうは、ニンニクの香りが漂う二郎系ラーメンの聖地。
「ヤサイマシマシアブラニンニク!」
呪文のようなコールを唱え、山のような麺を啜り、濃厚なスープを飲み干す。
「はぁ〜、食った食った! やっぱり全マシは正義だな!」
膨れた腹をさすりながら、満足感に浸って夜道を歩いていた、その時だ。
キィィィィィィィィッ!!
背後から響く、鼓膜を劈くような急ブレーキの音。
振り返る間もなく、強烈な光が視界を白く染め上げ、俺の身体は衝撃と共に宙に浮いた。
(え……? 俺の売名、ここで更新停止……?)
投げ出されたスマホがアスファルトに砕ける音を最後に、俺の意識は深い闇へと沈んでいった。




