7 盗られたし、逃げちゃったし。
伊予と合流すると防犯カメラ外で上着と重ねてきていた服をカバンに入れる。
カバンは木の上に隠しておく。
これならそう簡単には見つからないでしょ。
忘れず私は妖狐になっていざ、出発!
目的地まで残り百メートルほどで圭……Kに連絡。
頭文字っていう簡単なコードネーム的なものだけど、あった方がカッコいいじゃん?
「ちょっとは眠れましたか?」
『…十五分』
「…………」
まだまだ足りないって言いたいところだけど、実際は最終確認も含めれば結構ギリギリまで休んでてくれたらしい。
『このまま裏口から侵入する。裏口の鍵はこちらで開けるから心配するな。警備員は音を立てずに制圧しろ。防犯カメラはこちらですり替えるから心配するな』
注文が多いですな。
「I。敷地に入ったらこちらに気が付いた警備員を静かに制圧する。それだけ」
Iは伊予。
Rは私のこと。
「りょッ!」
「私が先に入る。上の針金に気を付けて、後に続いて」
そう言って私はコンクリートの塀にジャンプして上に手をかけた後塀を蹴ってグルンッと回って中に侵入した後、こちらに気が付いた警備員二人に圭お手製の睡眠薬(効果約十五分)のものをかがせる。
ちなみに手刀で首の後ろをダンッてやるのは実際はできないし、気絶するほど強くたたくと神経や延髄が損傷し、気絶どころか障害が残るので良い子も悪い子も真似しないように。
Iが入って来て一緒に木の裏に隠れる。
『そろそろ警備員の交代が入る。合図をするからその隙にそこから見える裏口に入れ』
Iの方を見る。
頷いてくれたので私たちはそれぞれ黒い布を被り走る体勢を構える。
『三、二、一、GO』
私たちは扉一直線で走り出す。
結構厳重そうな扉なのに鍵もかかっておらず、すぐに開いた。
扉のすぐ隣で布を被りながらKの指示を聞く。
『中の防犯カメラはセキュリティを掻い潜るのが難しかった。ターゲットが置いてある箇所のみ細工をしている。防犯カメラに注意してその部屋まで行くぞ』
Kによると防犯カメラはショボく、画質が悪いので布で多少おかしくても気が付けないそうだ。
奥のほうまで行くと警備員の姿が見えてきた。
防犯カメラにお金はかけないのに人にはお金をかけるのね。
機械を信用していないのかなって疑うぐらい、人メインで防犯カメラ自体が少ない。
まあ、ありがたいけどね。
人と遭遇するとかなり厄介なので、ゆっくりと奥に進む。
ただ、ターゲットが置いてある部屋にはいかつい警備員が二人いるとのことだ。
眠っていてもらうのが一番……何だけど、白眼剥いて倒れてる……?
『おかしいな。防犯カメラ上は正常だ……ッ! ……こちらに来ていた映像もすり替えられたものだった』
「………」
他にも同じことをしている奴がいる……?
こんなことをするのは私の頭の中には一人しか思い浮かばない。
『中もすり替えられたままだ。鍵も開いているし、侵入してもバレない』
Iと行くという合図を出し、突入する。
「おや、さっきのお嬢さんじゃないですか。夜は冷え込むから早く家にお帰りと言ったのに、聞かなかったんですねぇ」
中には身長は百七十ぐらいだろうか。
黒い執事のような服を身にまとった男性がこちらに背を向けていた。
明かりはない中、見失ってしまいそうな黒い服でいつこちらに襲い掛かられても気が付けない。
理由は単純。
こいつの匂いがない!
前にも匂いがしない奴がいたが、これは妖対匂い消しのスプレーがあるからだ。
むしろ、そのスプレーに匂いが付いているのが、こいつが誰なのかが匂いで分からないという結構厄介な代物。
ゆっくりとこっちを向く奴。
その顔には黒い仮面が付いており、手には私たちの目標、サファイアの結婚指輪二つを持っていた。
「怪盗……ワンダー……」
敵ではないだろうし、敵に回したくない相手ではある。
でも、伊予は戦闘態勢になっている。
「ご存じですか。嬉しいですねぇ」
するとKがIに指示を出した。
「その手に持つ二つの指輪はどちらにお返しするつもり? 持ち主のお二方はもうこの世のものではないでしょう?」と言え、と。
持ち主の夫婦はなくなっているの?
相手にペースに呑まれてはならない。
落ち着き相手と静かに戦え。
これが小さいころ晃さんに習ったことの一つ。
「…………君たちはここの盗品をどうするつもりで?」
「あなたの真似事をするつもりだった、と言ったら伝わる?」
「そうですか。我が主に返す予定でございます」
我が主……返す……。
この指輪の持ち主がどの夫婦なんて知らないけれど、その子どもか親か、返す相手がいらっしゃるんでしょうね。
「あなた、人間じゃないでしょう、妖か、悪魔か、ヴァンパイアか……どの種族? それは人間には毒よね」
「なぜそれを聞く? そもそも、君は……ッと時間が来てしまいましたか」
少し焦っている……?
それにしても耳が良い。
人間には聞こえないほどの距離にパトカーの音が聞こえる。
「またお会いしましょうね!」
と奴は何かを下に叩きつけたとたんそこから一瞬で煙が出てきた。
視界が良くなったころには地面にトレードマークの黒い仮面が裏に刻まれたカードを落として闇へと消えて行った。
『今回の手柄はあいつだ。俺らが捕まる前に逃げるぞ』
どうやらKが警察を呼んだらしい。
ただ侵入しただけの私たちはその日、寒い中不服の気持ちで家へと帰った。
「おはようございます……」
昨日…じゃないか。
深夜のこともあって、なかなか寝付けず、今日は珍しく九時に起きた。
「おはよう檸檬ちゃん。三時間の寝坊なんて、珍しいじゃない。ほら。ご飯食べなさい」
私の前には朝ごはんが運ばれてきた。
たまに出るパンをゆっくりと食べていると、ピーンポーンとチャイムが鳴った。
外の玄関前にいる匂いは妖狐で、誰だろう、知り合いかな? なんて思っていると、蜜柑さんが私を呼んだ。
玄関には警察の方がいて、ちょっとドキッとしたけど、捕まえに来たわけじゃなさそう。
「檸檬さま。初のお目にかかりします。こちら、飛鳥さまと柚さまの結婚指輪になります。今夜未明に怪盗ワンダーの手により警察に届けにこられました」
「ッ……」
昨日のは、私のお母さんとお父さんの結婚指輪だったんだ……。
圭への感謝に胸がギュッとなる。
「………ありがとう存じます。お手数おかけいたしました」
私はその手に置かれている二つの指輪を受け取る。
「この恩はいつか返させていただきます」
私は目の前にいる、怪盗ワンダーにお礼を伝える。
こいつが目の前にいるのは私が昨日あの場であった人だと知ってのことなのかは分からない。
でも、怪盗を続けているならまた会えると思う。
だから、今は正体を明かさないでおく。
分かった理由としてはこの人に私の匂いが残っていたから。
ちなみに、「こいつの匂いがない」とは言ったが、私の匂いは完璧に残ってた。
警察に扮したワンダーが帰って、私が部屋に戻ると伊予が扉の方を向いていたので目が合う形になった。
「どうかした?」
「………檸檬は悔しくないの? ワンダーに狙った物取られてさ」
「………悔しくないよ?」
あの時は正直悔しかったけど、届けてくれたしそれどころじゃないかな。
「本当に?」
「うん」
「…………なんで? なんで悔しくないの⁉ 私はとっても…………」
「うるさいっ‼‼」
「…………ッ檸檬………?」
突然大きい声を出してビックリしたのか、ただ単に私が怒ったことにビックリしたのか。
そんな事よりも私は頭の中に昔の会話が流れてくる方が早かった。
+*+
『何で、そんなことするんだよ!』
『………』
『悔しく――――』『ないよ。それに、似たようなことしてる人には言われたくない』
私は会話の相手の横目に作業を続ける。
『………ッ。俺は悔しいよ。こんな場所に……こんなことしなきゃいけないことに生まれたことが‼』
+*+
あ。
違う。
伊予は関係ない。
〝檸檬〟はこんなことで怒らない。
すぐに謝らなきゃ……。
心ではそう思っているのに、私は逃げ出してしまった。
参考・ニコニコ大百科首の後ろを叩いて気絶させるアレ
https://dic.nicovideo.jp/a/%E9%A6%96%E3%81%AE%E5%BE%8C%E3%82%8D%E3%82%92%E5%8F%A9%E3%81%84%E3%81%A6%E6%B0%97%E7%B5%B6%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B%E3%82%A2%E3%83%AC
翆「節分じゃあああああ!」(ギャグ)
?「痛い痛い痛い痛い‼ ちょっと豆、投げないでよ‼」
小「不審者じゃああああああああ!」(ガチ)
?「小雨さん⁉ 不審者じゃないよ⁉ 僕だよ僕!」
霧「オレオレ詐欺……いや、僕僕詐欺……?」(と言いつつ豆を投げる)
翆「今の節分の父親の役目ってこれじゃないの? それに今日は翆雨父は帰らないし、代用品ってことで♡」
小「貴様はどこのどいつだ」
我「……あと数話後に出てくるから今は矛を収めてください」
最近文字を書いている私と翆雨が別人になってきている気がする




