4 五つの飾りと新藤さん
「ここ?」
蜜柑さんが止まったので伊予が聞く。
「ええ」
蜜柑さんは静かに言った。
私と蜜柑さんと伊予と圭理の四人でとあるお墓の前にいる。
お墓の名字には新藤家と書いてある。
「どちらの家のお墓ですか?」
私は聞く。
「新藤」という方は親戚の中では聞いたことがない。
「ん~?」
しばらく黙っていたあと、「私と柚が唯一知っている親戚の、よ」といった。
どうしてこんなところにいるのかというと、時は一時間ほど前、私と伊予の二人で蜜柑さんに頭を下げていた。
「もう挫折?」
何やら作業をしていた蜜柑さんにお金を頼む。
なぜなら伊予がやりたいと言い出した怪盗になるためにはかなりの支出がかかりそうだったからだ。
「お金ね~…何かをするには必要不可欠よねぇ~……」
としばらく考えたのち、「私にそんな膨大なお金はない」と言われてしまった。
「ただ、働いてくれるなら話は別よ♡」
と続けた。
「働きますッ!」
即答⁉
何をするかは聞かなきゃ危ない……。
「君たち三人に、ついて来てもらいたい場所があります」
そういってきたのがここだ。
「このお花はお母さんが?」
両脇にある花を添えるところにはそこに来て三日も経っていないような新しい赤いカーネーションが添えてあった。
時期も四か月ぐらい早いのに。
ここに居る人がカーネーション好きだったのかな?
「……私が添えた物じゃない。それに、柚もしばらく行けてないって言ってた……そう。生きているのね」
悲しそうに微笑む蜜柑さん。
柚という名前が出てくるわけだから私の親戚でもあるよね。
でも、蜜柑さんから母や父っていう単語は出て来ないから私たちのお爺ちゃんお婆ちゃんじゃないだろうし、私から見て母方の叔父叔母は知ってる限り、蜜柑さんだけ…。
蜜柑さんから見ての叔父、叔母あたりなのかな?
「生きてるって、誰が?」
「伊予」
ケイが名前を呼ぶ。
家族同士、気を使う必要というのはそんなにないが、蜜柑さんの顔を見ると何年も消息が分かっていないのだろう。
「……いずれ会えるわ。もう、十二年も会ってないけれどね」
そう答えた。
「……掃除は必要ないほど綺麗ね」
このカーネーションを添えたという〝誰か〟が綺麗にしてくれているのだろうか。
そもそも誰なのか。
私たち三人は分からなかった。
「この間、柚が死んで思ったの。私もいつまで生きられるか分からないって。もちろん、生きるつもりよ? でも、先は長いなんて約束されているわけじゃないからね」
そういって取り出したのは五つの飾りだった。
腕輪、指輪、首飾り、髪飾り、耳飾り。
「私のは指輪よ」
「あ。いつもつけてるやつ」
よく付けているなとは思ったけど、いつもつけているらしい。
「二つは私から圭理と伊予へ。あと三つは柚からあなた達…ごめんなさい、檸檬ちゃんへの贈り物」
「お母さんが?」
どれも素敵な白い宝石が入っている。
「圭理には腕輪、伊予には髪飾りよ。そして檸檬ちゃんには耳飾り」
「ありがとう! お母さん!」
「ありがとう」
二人ともお礼を言う。
「ありがとうございます……残りの二つは……?」
「……上が指輪、下が首飾り。この二つはあなたのじゃない。私が言えるのはここまで。柚が望んだ物は来ると信じている。だから、今私があなたに託す。肌身離さず持ってなさい? 校則違反にならないから」
いや、校則違反だって……。
お墓から車に戻ったところでケイが「帰るのか?」と聞いた。
だが、終わらないようで「最後に一か所」と静かに返された。
車に揺られ三十分ほど。
お墓とここは栃木県南部。
関東とはいえそんなに都会なわけじゃない。
少し遠くから電車の音がするから駅が近かったりするのかな?
そんなことを思っていたら少し道が細い住宅地に入って行った。
住宅地に入ってすぐ、「あれぇ……」という声が蜜柑さんから発せられた。
完璧に迷っているな。
蜜柑さんは迷ったという一言は発さないが、絶対迷っている。
この道、何回も通ってるもん!
「蜜柑さん、大丈夫ですか……?」
「いやぁ、十年も経つとどこか分からなくなるわね……」
「一生迷いますよ?」
「檸檬ちゃんに言われると本当になりそうで怖い……大丈夫よ」
すると、蜜柑さんは車を止めて外に出た。
「え……っと、このポストを右に曲がって、しばらく歩いて……道が細くなったら曲がる、そこから………」
蜜柑さんは思い出しながらボソボソ言って歩く。
「おかーさん……」
「今、全力で思い出してるから待って」
目を閉じて昔の記憶を探っているところを申し訳なさそうに伊予が話しかける。
「車に戻ってきた」
「ええっ⁉」
蜜柑さんについていくと、そこはそこらを一周回って車に戻ってくるルートだったようだ。
「さすがに……ギブかな」
う~んと残念そうにうなる蜜柑さん。
「何かお困りですか?」
「うわッ‼」
突然私の後ろから話しかけられ、私は思わず(相手の方を向き構えるだけだが、)戦闘態勢になる。
まあ、無理もない。
匂いが全くしない。
「驚かしてしまったようですね。すみません」
「もう何年も前に引っ越しちゃったかもなんですが、新藤さんの家を探してて……」
さっきの新藤さん?
「新藤………ああっ!」
思い出したように手をパンッと叩く。
「新藤さんの家でしたら、一年ほど前でしょうか。建て壊されてしまいましたよ。何年も前から住人はいなかったようですが? どうかいたしましたか?」
「そうですか。ならいいです。その家主の方のお子さんとか、分かったりしません?」
蜜柑さんも伊予もケイも当たり前だが、こいつに匂いがないのが分からないんだ。
それに、話していても何をいっているのか理解はできるが、声の記憶ができない。
一瞬でも目を離すとどんな顔だったかもわからない。
「役に立てなくて申し訳ない。だが、家主に子どもはいなかったはずだが?」
「そう…じゃあ、知らない間に家主が変わったのかしら。家主は中年と青年、どっち?」
「青年です。それに私が知らない間にお子さんが生まれていたりするかもしれないですから、鵜吞みにしないでくださいね?」
と申し訳なさそうに言った。
「とーさ~~~~んッ」
と奥から走ってくる子どもが来た。
この五歳ぐらいの子も、匂いも顔も分からない。
「こら、出て来るなと言ったろ~? そろそろ失礼しますね」
「ありがとうございます」
お礼を言ってその方とは別れたが、やはり顔も声も匂いも後には残らなかった。
♦♦♦
その日の夜、蜜柑さんにもらったアクセサリーを枕元に置いて眠ると、不思議な夢を二つ見た。
一つ目は私が三歳ぐらいだろうか。
夢の中には同い年ぐらいの子の男の子が出てきた。
完成した積み木を壊されたり、壊しちゃったり、一緒に勉強したり、訓練したり。
私が小さいとき、一人でやっていたことをこの男の子とやっているようだった。
私の知る誰かに似ていなくもないが誰だろう。
同じようなものをたくさん見た。
でも、どれも全部違う。
一年かそれよりも多かったか。
それほどたくさん見るとそのことの別れは唐突に来た。
ある日突然その男の子はいなくなった。
今まで取り合ったおもちゃはあるのに男の子の服、靴、カバンなどの荷物がない。
記憶はあるのに、見当たらない。
泣きながらお母さんやお父さんに「どこ?」と聞いた。
聞いても帰ってくる返事はどちらも泣きそうな顔で「●●●●●はお約束を守るために遠くに行ってしまったのよ」と言った。
でも、その後に続く言葉は「また●●●●●には会えるし、また▲▲に戻れるからね」といって私を強く抱きしめた。
そこで一つ目の夢は終わった。
次の夢は今よりも身長が伸びているのか視線が高かった。
どこかの病室にいて中には従兄の碧と私、私の父方の叔父、飛空社長とその妹であり私の叔母、飛奈さんの四人。
飛奈さんの腕には生まれたばかりほどの小さな赤ちゃんが眠っていた。
「その子が、私の…私たちの■………?」
頭を抱え、突然の情報に混乱する。
むしろサラッと受け流せるほうがどうかしている。
「二人じゃなくて、三人? それに◆◆◆はもういないだろ? どういうことだ……?」
守りが強い碧の「爽やか青少年笑顔」は顔から消え、「もう意味が分からない」という素の顔が出ている。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
謝る飛奈さん(檸檬の父方の叔母)。
飛空社長は自分の判断と伝え方は正しかったのか、今じゃなかったのかともう、どうしたらいいのか分からないようだ。
そこで目が覚めた。
起きると私は泣いていたようだ。
今日見た夢は何も思い出せない。
ただとても大切なものを見たような気がする。
「檸檬、夜中ずっと泣いていたよ。二、三時間ぐらい前から泣き止んだけど、見てた夢は何だったの?」
隣のベッドから心配そうに私を見る伊予。
「夢……? 何見たかな。忘れちゃった」
忘れてはいけない。
そんな気はしたけどもう朝ごはんを食べたころには夢を忘れたことも忘れていたのだ。
翆「推しが……推しがぁ………」
小「話と関係ないので飛ばしまぁ~す。それではこの挨拶はここでは初めて、ここまで読んでくださったのなら星五とか欲しいかなって思ってま((((こ・ぶ・し☆」
翆「確かに関係ないけどさ⁉ 私はそういうのお願いしないタイプなんで~」
小「昔はやってたけどな」
翆「はぁ~……チャンネル登録者は四捨五入したら十五万人! 特徴は広島県民のニート! 弟が二人いて………!」
霧「強制お口チャックボタン、ポチー。じゃね~」
翠(ニートで、チャームポイントのアホ毛があるけど、これがまた《我も含む》リスナーさんにからかわれてるんだよな~引退する日もニートの日だったり~!)
霧「お口チャックボタンが効いてない……だと………⁉」
修整済み




