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大円満の裏話8

マルカはベッドの中で腕枕から離れようとしない。


「朝だぞ。準備はいいのか?」


今日はお店休みだから、ゆっくりしたいと俺がどんな目に遭ったのか話しを聴きたがっている。


正直、思い出したくもない結末があるのだがマルカには知る権利があると思う。


……………………………………



「抜けたな。」


エルフの里の虐殺から一ヶ月…俺達は遂に大森林を抜けた。長かった。しかし、まだ目的のブルワリー山脈の麓についただけだ。山頂までまた長い道のりが始まる。


「あいつら…目障りだな。」


聖騎士ギル・バードが見つめる先で何か奇声とも捉える事ができる声を発し空を駆け回る生物…パピーだ。


容姿は人の姿それと似ている。腕は翼と一体化し脚は鋭い鉤爪が特徴だ。集団行動と多種族からの縄張りへの侵入を極度に嫌がる魔物だ。


「ここいらは彼奴等の縄張りってことか。」


人攫い。パピーを語る上で最初に持つ印象だ。


「山頂まで彼奴等の動向を気にしていたらきりがない。山頂までの道のりは確保したい。蹴散らすぞ。」


勇者ガランの言葉で俺達は戦闘態勢に入った。


…………


(…やめてくれ。)


数百の数の群れをなすパピーに対し勇者一行は圧倒的な火力で制圧した。子供のような容姿の魔物達の血しぶきが舞う。俺はパピーの断末魔が命乞いに聴こえた。幻惑耐性の魔法をユナハートがかけてくれていた筈なのに…


「なぜ放っておくんだ。勇者だろ!」


俺達はパピーの群れを殲滅し、山頂を登りだした。


……パピー達が拐ってきた人族の女性や子供達を見捨てて。


「クリス。勘違いするな。僕は勇者だが優先順位は変わらない。魔王討伐が最優先なんだ。」


だから…女、子供を見捨てるのか?俺はたぶん納得できないという表情をしていたんだろう。


「あの餌達は助からない。逃げたパピー達がいるだろう。奴等の「臭い」がこびりついている。パピーは所有物を絶対に離さない。逃げても逃げても、所有物の居場所を空から監視しているんだ。」


「だったら、残りのパピーも…」


勇者ガランは俺の言葉を遮る。


「お願いだ。何度も言わせるなクリス。「優先順位」なんだ。わかってくれ。」


(わかるわけないだろ…そんな理不尽な順位なんか)


「クリクリ諦め悪いよ!あの人達は何方にしても無理なのよ。帰るにしても大森林の中を無事に抜けれなければならないんだから。無理よ。無理無理。」


ハル・ステアの言葉は端から助ける意味がないように聞こえる。


「はい」


俺は自分の感情を押し込むようにただ返事だけをした。


………………………


「もしかして15年前に街に魔物が押し寄せたのってパピーって魔物が率いていたの?」


マルカの問いに俺は言葉を詰まらせた。

あの時の人達がもし大森林を抜けていたら?


今となっては真相はわからない。


「俺は後悔しているんだ。あの時、ダンさんの言う事を聞いて街に残れば良かったって。」


「残っていたら…クリスはきっと魔物…龍と戦っていたでしょ。そしたらいくらクリスでも…」


マルカが言いたい事はきっと…「死ぬだろう」だ。


魔物の襲撃の原因はわからない。


でも、龍が街を襲った理由は、はっきりわかる。


勇者一行…いや俺達が原因だから。


いざ、マルカに真実を伝えようと思うと胸がつまる。














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