大円満の裏話4
「クリクリってさ、毎回そんなんするの?」
(なんだよ…この女)
俺は矢の鏃を作っていた。大森林前に廃村跡地があったのは助かった。休憩と下調べができるからだ。
魔物の気配はないが、俺も入った事がない森だ。油断だけはできない。
「なにすんだよ!」
俺は仕上げ前の鏃と完成した鏃を木片に並べ別けていたのだが、【大魔道士】の恩恵持ちのハル・ステアに杖で払われ、地面に落ちた鏃を拾っていた。
「そんなの捨てておいて私と話そうよ。」
俺はハル・ステアを無視し再び鏃の仕分けを始めたのだが、こいつも貴族だ。どうやら平民に無視されるのが、気にくわないらしい。
「熱い!何考えてんだお前…っく。」
俺の無視に興味が無くなったと、その場から離れたハル・ステアに思えたのだが、離れた場所から場所から杖をかざし何度も俺めがけ【火球】を放ってきた。
「あははは…丸焦げにするよ!」
逃げ惑う俺を見て声高らかに笑うハル・ステア。攻撃が終わった時、俺は疲れと恐怖から地面に手をつき肩で息をしていた。そして地面を擦る音が近づいてきて俺は顔を上げた。
「どう私の【無詠唱ファイアボール】は?正直さ、アンタの弓より性能高くない?」
俺は無言でハル・ステアを睨みつけた。
「何その目?気に入らない。」
そう言いながらハル・ステアは杖先で俺の側頭部を殴りその場から立ち去った。
去り際のアイツの「黙って言う事きいてろ平民」は今もはっきり耳にこびりついている。
………………………
「やっぱり貴族って嫌よね。」
俺の話しを聴いているマルカ。ベッドで横になりながら俺を見ているが…ネグリジェから見え隠れする彼女の胸や脚が妙に視線に入ってくる。
(前まで、こんな昂ぶりをマルカに抱くなんてなかったぞ…)
彼女をいやらしい目で見てしまう。急に大人びいた彼女と再開したのが原因か…それとも15年間石化していた俺が溜まっているだけなのか?
何方にしても、この2人だけの部屋は俺の欲を強くさせる。
「暑いわね…今日。」
湯浴み上がりと酒のせいで身体が火照っているのだろうか?マルカの言葉を聞いて俺も頬を伝う汗を払った。
「ま、窓あけるか。」
俺の言葉に小さく彼女は頷いた。
窓縁の軋む音、俺は窓縁の内側に棒を差し込む。風で窓が閉まらない為に…
しかし、その必要は無かった。今夜は風がない。部屋に入って来るのは酔っ払い達の叫び声と猫の鳴き声くらいだった。
「今日は…熱帯夜ね。…暑くなるわ。」
ベッドから起き上がり俺の横で窓から外を見つめているマルカ。
遠くに見える灯り…銀山の炭鉱場の灯りだ。あの灯火だけは様変わりした街並みとは反して当時のままだった。
そして俺は横にいるマルカの腰に手をまわしていた。
15年前ならマルカに触れても何の感情も無かった。
彼女が歳を重ねた15年。当時より少しだけ肉つきが良くなったのだろうか。柔らかな感触が更に俺を暑くさせた。
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