大円満の裏話3
「やっぱり臭い!」
マルカは語りだした俺の話しを止めるように腕をつかみカウンターの奥に向かった。
「早く脱いでよ!」
俺は急かされるように装着していた装備品を脱いだ。
「冷た!」
衣服を脱いで上半身裸の俺にマルカは突然、水をかけた。
「今、お湯準備するからとりあえず身体拭いて!」
15年経過してもマルカはマルカだった。妹…いや今はお姉さんか。何方にしても世話焼きは変わらない。
数分後、俺はタライに張られたお湯に浸かっている。座って腰くらいまでしかお湯はないが身体の芯から温まる感じがした。
(実際、15年ぶりの湯浴みだしな。)
もしかして…世話焼きが増したのか?
「背、背中は洗い辛いだろ…」
背後に気配がしたので振り返ってみたら髪を束ね、裸を隠すように薄い布を纏ったマルカが立っていた。
俺は直ぐに目線を外し背中を見せた。
正直、15年も石だったから異性の裸は刺激が強すぎた。
「な、何してんだマルカ?」
「だ、だから背中…洗い辛いだろって言ってんの!」
優しく背中を洗ってくれるマルカ。
俺は…恥ずかしく終始無言だったが、マルカも不慣れな事をしたのだろう。力加減がわからないのか。偶に漏れる彼女の吐息が俺の心臓の鼓動を早めた。
「あ、ありがとう。」
五分経ったらこっちに来いと言われ、言う通りに行動したら着替え終えたマルカが着替えを渡してくれた。
「す、すまない。」
どうにも照れが取れなくなった俺の手を再びとり部屋に案内するマルカ。年齢を重ねた事も理由かも知れないが
どうにも意識してしまう。
「…私の部屋だけど何か?」
マルカの部屋のテーブルに案内されお酒を注がれた俺。カウンターで呑まないのかと尋ねるとマルカは店内より、ゆっくり出来るからと布団に横になり俺を見ている。
「お話しの続き聞かせて…」
マルカの言葉に俺は…話しを再開した。
「ほらよ。クリス。」
俺は翌朝、店の前でダンさんからネックレスを渡された。自分が若い頃、冒険者だったダンさんが御守り代わりに身につけていた物だそうだ。
「…心強い。」
俺の言葉に、ダンさんは肩を叩きクレアさんは優しく俺を抱きしめてくれた。
あれが二人との最後の思い出だ。
「マルカは街の入口で元気良く最後まで手を振ってくれたもんな。」
「……私、その後、泣きじゃくって3日間、部屋から出なかったんだからね。バカ!」
ベッドから俺を睨見つけるマルカ。この感じだと「随分オバさん」発言も根に持つだろうな。
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