大魔道士よ。先ずはお前からだ10
今朝、二人に渡した木剣は帰りには俺の杖代わりとなっていた。双子の幼子に心配されながら家を目指す俺。
こんなにも距離が長く感じるとは思わなかった。
すれ違う人々は俺を心配しながら見ている。
優しい人は俺に声を掛けてくれるだろう。実際、話しかけようと試みた街人もいたが、皆…俺の鬼気迫る表情にたじろぎ後退りした。
「お疲れ様さま〜!」
家の前で待っていたマルカが、此方に手を降っている。
「ママ」
「ママ」
俺を差し置いてマルカのエプロンに飛び込む双子の姉妹。
ママ呼びかよ。随分と懐かれたものだな。
「かった」
「らくしょう」
二人の頭を撫でるマルカ。
そう言う事か…二人の急成長の原因は、【お前】だな。
夕食を囲む俺達。上機嫌なのはマルカとミウとスイの三人で、俺は勿論、【不機嫌】だ。
理由は色々あるが、直近での苛々は座るだけで下半身に激痛が走ることだろうか。
「なかなか見所あるでしょ?」
二人が寝た後に、マルカはゆっくり自分の魔力を二人の魔力に当てて【活性化】していたようだ。
俺には、さっぱり分からない内容だが、二人がマルカの魔力量を見抜いた時に【才能】を感じたそうだ。
ゆっくり二人に銀龍の魔力を干渉させた。
スイは【魔力操作】と【魔力探知】がずば抜けていると言う。
ミウは【魔力制御】と【魔力量】がずば抜けているらしい。
ミウの魔力制御で魔力弾をつくりスイが起爆させる。離れていてもミウとスイは互いの位置を魔力で感じる事が出来る。
なるほど、【天才】なんですね。俺には無理な芸当だ。
魔力量が豊富なスイは大量の魔力弾を設置できて、スイはそれを自分のタイミングで起爆していた。俺が焦って自ら敵陣地の魔力弾だらけの場所に飛び込んだわけか…
何だか、惨めだな俺…
そして魔力で身体強化して、あの素早さが生まれたのか。
「ふぃ〜!!」
俺はグラスの酒を飲み干し、立ち上がる。
家の中でも木剣は俺の杖として仕事をしてくれる。
二人には俺の去り際の姿がどう写っているのだろうか?
二人とも忘れるなよ。
此れが…不貞腐れて拗ねた大人の去り方だ。
俺は部屋に籠もった。ベッドから天井を見つめる。
今朝まで悶々としていたが、今日は幼子に負けた自分に苛々している。
「もう!彼奴等が隊長でいいだろうが!!」
天井に叫ぶ俺。復讐に利用できればと軽く引き受けた
工作部隊の隊長…
別に負けても良いじゃないか?
目的は復讐。
隊長の責務は二の次なのに、どうして俺は悔しがっているのだろうか。
ミーナ隊長に期待されて、俺もその気になって浮かれていたのかも知れない。
俺は幼子にも負ける。弱い【狩人】だ。
浅はかなで自己中心的な人間だ。だから、用意周到に復讐の準備をしよう。
弱いなら、細かくしつこく、ゆっくり相手の自尊心を摘んでやる。
とりあえず、今は下半身の痛みが治まるまで…
ふて寝をしよう。




