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大魔道士よ。先ずはお前からだ7

「へ?部隊長…俺が。」


詰所内で自己紹介を【適当】に終わらせた俺は2階の、

隊長室に通された。


椅子に腰掛け、鎧を外し背もたれに仰け反るミーナ隊長。俺が入隊してくれて良かったと話している。


「君は狩猟を生業にしていたのだろう。身を潜めるのは得意か?」


得意と言えば確かに得意だ。野営も獲物を捕まえるのも、それほど苦ではない。


「まぁ…得意なほうだな。」


「やはりか!」


ミーナ隊長は仰け反るのを止めて机に手を叩きつけ勢い良く俺に近づいた。


(わりと胸あるなぁ…この人。)


最近は、欲が自分でも酷いとは思うが、所構わず嫌らしい顔をしていたらそのうち、酷い仕打ちにあうかも知れない。


「東部辺境隊の【工作部隊】を率いてもらいたい。目的は亜人達の進軍遅延。部隊混乱。情報撹乱。…簡単に言えば【邪魔】をしてもらいたい。具体的な内容は君が決めて構わない。」


(わりと自由ってことか。…悪くはないな。)


でも、隊長となると束縛される可能性もある。


(どちらが良い方向に向く?やるか、やらないか。)


「お前達入れ!」


ミーナ隊長が入口の扉へ向かい声をあげる。弱々しく開いて行く扉の隙間から二人の女の子が顔を覗かせる。


「ミウです。」

「スイです。」


唐突に始まった彼女達の自己紹介。双子なのは即理解できたが、何故部屋に招き入れたんだ。


「クリスだ。こんにちは。」


深々と頭を下げる双子の姉妹。随分小さいが詰所の給仕係りだろうか。


「彼が、隊長だ。今日から君達の上司だ。しっかり働きたまえ。」


(なるほど、この子らの上司は俺か…)


双子は元気よく返事をし、両手の拳を胸辺りで握りしめ

たぶん…【希望】に溢れた顔をしているが…


確認しなければ。


「俺が上司って事は、こいつらが隊員か!!」


突然の俺の大声に身体を仰け反らせ恐怖を感じた顔をしている。先程【希望】を握りしめていた拳は小刻みに震え【恐怖】を現していた。


「人手不足は否めないんだ。」


事前に彼女達には伝えてある。ミーナ隊長の「しょうがないだろう。」と言った顔に俺は自分との【ズレ】を感じた。


「あのなぁ。俺が言いたいのは、こんな幼子を戦場に立たせるのか?何を考えているんだ!」


今度は俺が隊長の机を激しく叩いた。脳裏にチラつく勇者一行を思い出しながら。


「怒るな。彼女達の言い分を聞いてから考えるのも悪くないぞ。」


「お前ら何歳だ?」


「ミウは12歳。」

「スイも12歳。同い年。」


(そりゃあ双子だから歳は一緒だろうがよ。)


「兵隊ごっこは楽しいか?」


「遊びじゃない。」

「スイたちほんきなの。」


親が許さねぇだろ。俺のこの言葉が彼女達の表情を暗くさせた。


無言になった二人。反応に困りミーナ隊長の方に振り向くと隊長は天井を見ながら彼女達の【代弁】をしてくれた。


「この子らは北側の魔族領に近い村の生まれでね口減らしで奴隷商に売られたんだよ。僅かな金でね。でもね、亜人と魔族が手を結んだ時に最初に攻め込んだのが北側さ。此方は予定外の事態だ。【軍】を配備しているわけもなく村…他の街も壊滅したのさ。そして…彼女達にも被害が及んだ。奴隷商が襲われたんだ。倒壊した建物から二人は逃げるように街道を進んだ。雑草や木の実を食べ泥水を啜ってね。」


「それで、ここまで来たのか?」


「いいや。私が拾ったんだ。川岸で手を取り合って倒れているのを戦帰りに見つけたんだ。」


「亜人達が憎たらしくて【復讐】をしたいのか?」


双子の姉妹は首を振る。


「生きる力が欲しい。」


双子の言葉に俺は…折れた。


「隊長さん。俺は狩猟者だ。こいつらには厳しすぎるかも知れないが…構わないか?」


「私は拾っただけ。提案をして決めたのは彼女達だ。」


「ク、クリス隊長。お、おねがいしましゅ。」


ミウが言葉を噛んだ事にいち早く気がついたスイは、ミウの頭を撫でて慰める。この子らはずっと励まし合って生きて来たのだろう。


(復讐の邪魔になったら切り捨てるだけだ。まぁ山で暮らせるくらいの技量は身に着けさせてやるがな。)



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