大魔道士よ。先ずはお前からだ5
キャラバン隊は各地を転々としているだけあって情報量が多かった。
4年前に大陸一の大国デルデラートの国王マルケス・デルデラート8世が突然亡くなった。そして、娘と婚約していた勇者ガランが新たな王となった。魔王討伐の功績は反対する者すら現れなかったそうだ。
しかし、新たな国政がデルデラート王国と近隣諸国との関係を悪化させてしまった。
多種族混同撤廃。人類神主義。
簡単に言ってしまえば、あの勇者が亜人達に人権を捨て家畜以下になれと言ってしまった様なものだ。
いかにも、あの勇者らしい馬鹿げたスローガンだ。
当然、亜人達の反感はあった。突然街を追い出され路頭に迷う者達。権利や財産は全て国が没収。
家畜以下と言わんばかりの強制だった。国を追われた亜人達は国外の元魔王領内へ追いやられた。
そして、魔族の生き残り達が亜人達に焚きつけ、魔族と亜人の反乱軍が各地で戦を仕掛けるようになった。
グルジア辺境方面は【大魔道士ハル・ステア】を総大将とした軍が亜人達を殲滅しようと領内外で戦を繰り返しているそうだ。
亜人達は、後退気味だったが、先のグルジア大橋の戦で勝利し、最近は王国軍が押され気味だそうだ。
(ざまあみろ。ハル・ステア!)
「お前さん。なかなかの腕なんだろう。国の為に頑張りんしゃい。」
老商人の言葉に俺は笑顔を見せて「勿論」と答えた。
偽善と嘘。俺は視野が狭いのだろうか?
最近は、偽善と嘘でどうにかなると楽観的な考えになっている。
「今回も野宿だが…」
やはりキャラバン隊に同行したのは正解だった。馬に引かせる商隊は全部で10はある。複数の焚き火を囲うテントの数…まるで小さな街ほどの規模がある。
実際、キャラバン隊用の飲み屋も同行しているくらいだ。
「マルカ。大丈夫。大丈夫だから。」
テントに入るなり俺の前で屈みながら口を開き上目で見てくるマルカ。俺の拒否反応を見て、不思議そうな顔をしている。
互いに向き合いながらテントの隅で横になる。
(今日のマルカは質問が多いな…)
どうやらマルカは今。人の【愛】に興味を抱いたらしい。
「私の口…嫌になったの?」
「今日はそう言う気分じゃないんだ。ごめんマルカ。」
テントの片隅で薄い布を身体に掛け俺とマルカは身を寄せている。マルカが寒さを気にするか俺には分からないが、此れが自然な行いだと思う。人間を学びたいなら、
軽々と翼を生やされても困るからな。
「気分?…私はしたい気分だよ!」
俺の前で口を開き何かを食べたそうな仕草を見せるマルカ。俺は「毎回する事じゃない」と彼女を諭したのだが
互いの認識の違いがテントの片隅を熱くさせた。
「この前は、私嫌がった!でもクリス兄は無理やりした。昨日は二人で癒しあった!」
ちょっと待て。マルカ…声が大きいぞ。そう思い俺は彼女の口に手をあてて制止したのだが、反抗的な彼女の力に口から手を滑らせてしまった。
「今日は私がしたい気分なの。何でクリス兄が拒むのよ。…あ。【無理やり待ち】なんでしょ?」
無理やり待ち?
俺にそんな癖はない。断じてない。
結局、マルカに軍配があがった。
俺はマルカの口で【無理やり】襲われた。
気持ちの良い襲撃は、俺を快楽へと誘ってくれた。
「マルカ。街に着いたら新しい服を買おうか?」
テントから出て、日を浴び背伸びをするマルカへの提案。彼女は服ならあると自身が身に着けている衣服を
俺に見せるが俺は首を振った。
「マルカ。男はね、大事な人に色々身に着けて欲しいと
【形】を与えたがるものなんだ。」
【愛】の形は多種多様だ。彼女が俺につくすのも、俺が何か贈りたいのも【愛】のひとつの形だろう。
でもマルカ見てご覧。
一昨日‥そして昨晩。
俺達の【愛】は【敵意】を生むんだ。
テントから出てくる男達。一昨日の男臭い表情に獣が獲物を襲いかかる時に見せる充血した飢えた瞳をしている。欲塗れの野獣…いや男の原点か。
新たな火種は意外と直ぐ傍にあるモノなんだ。
争いの連鎖に争いが追加されたら、収集がつかなくなる。誰が誰を誰の為に誰が誰に何をするのか?
ほら。もう分からなくなるだろう。
そうすると人は【自分が正しい】と自己中心的になるんだ。マルカは【千里眼】を持っているのに、俺みたいに視野が狭いんだね。
(俺は復讐に取り憑かれマルカは俺を求めている。)
だから悶々男臭い野獣化している男達を何とも思っていない。でも、知らぬ間に寝首をかかれてしまったら?
二人の【愛】は終わってしまうんだ。【嫉妬】と【憎しみ】に【愛】は負けてしまう。
【愛】の【敵】は色んな場所に潜んで居るんだ。
だから…だからね。
朝からテント前で、俺の下半身を弄るのを止めてくれないか?




