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大魔道士よ。先ずはお前からだ4

(見られるぞ。やめろマルカ。)


キャラバン隊のテントの片隅を借りれた。野宿よりはだいぶ快適だが、マルカの様子が可怪しい。


俺が、下半身を不意に握られて何とも言い難い【痛み】を味わった際に、マルカも【痛み】を感じたと言う。

小さな痛み。勇者渾身の一撃ですらほぼダメージがなかった銀龍の小さな痛み。彼女はこの不思議な感覚を俺と繋がったからだと理解した。愛する者を癒さねばならない彼女の【愛】はやはり人族よりも野性的だった。


「昨日のように口ですれば良いのだな!」


口調がマルカ時より銀龍よりなのは旦那の一大事と龍本能が直感したからなのか。


場所が場所だから、できれば静かに過ごしたいのだが、


俺も馬鹿な男だ。今回は銀龍よりのマルカに発情してしまった。


テント内で行われた。マルカの【癒し】

咀嚼音に、似たような音がテント内の他の宿泊者の会話に混じりながら俺に快楽的な癒しを与えてくれた。


翌朝、テントをでる二人。

何故か清々しい表情の二人とは裏腹に他の宿泊者は悶々とした男臭い表情で二人を見ていた。


「お前が【志願兵】か?」


砦の広場で複数人の部下を連れて顎髭に小さな青いリボンのような紐で髭先端を纏めている小柄な中年?男性。


「俺は砦の管理を任されているグルジア辺境隊隊長のゴードン・ダリーズだ。」


(…名字もち‥貴族か?)


「慰み者同伴と聞いていたのでな、直ぐに分かったぞ!グハハハっ!」


何か‥ムカつく奴だな。まぁ我慢はするが、使えない様なら直ぐに見切ろう。


ゴードンは俺達を砦の内側の訓練施設に案内した。


(なるほど…俺の実力を見たいのか?)


先ずは、ヒアリングから始まった。

勿論、故郷や勇者一行…【恩恵】持ちの事は伏せた。勇者一行の誰かが俺に勘付いたら動きづらいからな。


(倒した魔物?)


ゴブリン…ビックベア……トレント…コボルトにオーガ…パピー…

俺は大森林やブルワリー山脈で遭遇した魔物の名前を挙げた。

(エルフは魔物じゃない…)

あの日の懺悔を思い出し何故か自分に苛々したが

ヒアリング内容に嘘はない。


「オ、オーガ?パピー?嘘は重罪だぞ!」


いや嘘をついてはいない。経歴は嘘だらけだが。


「獲物は?獲物はなんだ?」


獲物?…ああ武器のことか。

俺は腰の短剣を見せ剣術を少しと【弓】と答えた。


「弓使い?なぜ弓をもっておらん!怪しい奴め。」


確かに俺は弓を持っていない。正解には大魔道士ハル・ステアの助言で進化したのだが…

勇者一行との数カ月の旅で俺の【狩人】としての能力は飛躍的に上昇した相乗効果と言うものだろうか?


…………


「クリクリさぁ。あんた確かに弓の精度は凄いけど。毎回【弓】と【矢】持ち歩いてさ【効率】悪くない?」


「しょうがないだろ。俺は【狩人】で弓が一番馴染むんだ。冷やかしなら近づくな。ハル………様。」


年下のくせに傲慢で見下し俺を魔法の的くらいにしか思っていない嫌な女。


見下すくせに毎回俺に、ちょっかいを仕掛ける。


「あんたも魔力有るんだしさぁ【弓】なんか【魔力具現】で普段は手ぶらになりなさいよ。そしたら私の荷物持ち…ウケるし!」


具現?意味がわからない。


俺が理解できていない表情を見せるとハルは【手本】を見せてくれた。


「どう?弓…っぽい」


地面から拾った短い折れた木の枝。彼女はそれに魔力を流し青白く光る弓の形をしたものを創り上げた。


そして俺が矢を取り出すように背中に手をあてて筒から引き抜く動作を見せる。


「イメージ。イメージで何とかなるって話し!」


「やあ!」


数メートル先に弱々しく地面に垂れた青い矢の姿をした魔力の塊。


「……イメージで私は、【弓】適性ないからこれで良いのよ!」


呆気に取られている俺を杖で殴打するハル。正直痛みより驚きが大きかった。


あんなの出来るわけない。


そう思っていたのだが…


魔物との連戦続きで俺の【才能】が開花した。

恩恵の【狩人】の後の読めない文字が頭に入り込んできた。


   【狩人】→【不道徳の狩人】に変化した。


正直意味はまだわからないが、能力的に数段強くなったのは戦いで実感できた。


………………


「な、なんだそれは!」


弓もないのにと馬鹿にしたゴードンの前で、俺は【弓】を披露した。大魔道士が教えてくれた弓…


俺は【魔弓】と【魔矢】と名付けた。

木像めがけ突き刺さる魔矢。閃光を残し放った魔矢は木像を不可なく貫通し奥の壁に深く刺さり消えた。


「……何発放てる!」


こいつ。威力を見て数は撃てないだろうと言いたいのか?


(まぁバカ面でみてろよ!)


「隊長!!意地をはってないで早く認めて下さい。砦の壁が持ちません。」


ゴードンは苦水を飲んだような表情で俺に攻撃を止めてくれと懇願した。


「百は超えたかな?」


百本以上の【魔矢】を速射した俺をみる恐怖じみた表情。


まぁ気分は悪くないな。


「それで【志願兵】の件は?」


「暫し待たれよ。」朝の馬鹿にした言葉とは真逆の丁寧さ…こいつはゴマすりと家名で隊長になったのだろうか?


「此れが推薦状か?」


俺はゴードンから渡された手紙をしまい砦を後にした。

幸いキャラバン隊も砦を出た。俺の弓を見ていた者がいたのだろう。次の場所まで【護衛】を頼まれた。

食事に報酬…野宿もテントがある。


断る理由は無いだろう。


キャラバン隊の一部の男達が男臭い荒々しい表情を俺達に見せたが


理由はわからない。


推薦状が復讐のピースになってくれれば良いのだが…



 




読んで頂き、ありがとうございます。


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