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大魔道士よ。先ずはお前からだ3

「結局…野宿かよ。」


街道を進んだが、その日は人の生活圏に辿り着く事はなかった。マルカの【千里眼】で見てももらったがあまり小さな集落は見つけにくいと言われた。


文句を、言ってもしょうがない。実際、マルカの【千里眼】と【加護探知】は俺の復讐に必要不可欠だ。


「そうか。砦がみえるのか。」


おそらく国境警備の砦だろう。人の行き来はあるだろうから、少し強めの情報が欲しいところだな。


「明日中には、到着できると思うよ。クリス兄が、ダラダラしなかったらね!」


「お前が言うな。」


俺の反論を聞いて嬉しそうに薪を焚べるマルカ。近くの小川のせせらぎと暖かいぬくもりが俺を眠りに誘う。


(誘惑に負けた俺が悪いのだが…)


水辺の似たような小岩を並べ焚き火を見ながら横になる俺。眠気の中で復讐を考えていた。


自身の手で殺すなら、不意討ちくらいしかできる気がしないな…


勇者一行と対面で死合…勝てるイメージがわかない。

周囲から大事な人を奪うか…奴等の英雄像を壊すか。

復讐をどれに当てはめれば良いか、実行欲に対して案がない自分が嫌になる。


「はぁ〜気持ち良い…」


暗闇の中で水浴びをするマルカ。彼女は水際に畳んでいた衣服に手を伸ばしていた。


「ちょっと邪魔ですけど!」


なぜだろう。眠気に襲われていたのに、俺は彼女突き飛ばし小川に押し戻した。


「せっかく拭いたのに、また濡れたでしょ!」


突然押し戻し、彼女の前に立ち塞がる俺。


これは俺の支配欲なのだろうか?まだ幻惑の続きを期待していたのだろうか。


わからない。でも俺は昂ぶりを抑える事が出来なかった。


「俺の身体も洗えよ…マルカ。」


彼女は小川で膝をつく腰辺りまでくる水深。その水面が何度も何度も揺れ動く。


「身体冷えちゃう。」


献身的に俺を洗い昂ぶりを抑えようとするマルカ。


「お前は、大丈夫だろう。……」


その先を言えば俺の昂ぶりは治まったかも知れないのに俺は言葉を自ら遮り彼女の口を求めた。


マルカは口を拭く。そして不機嫌そうに俺を上目で睨んだ。


「もう、満足でしょ!」


無理やり‥此れが彼女を不機嫌にした原因だろう。でも、この無理やりが俺の昂ぶりを冷ましてくれることはなく、もっと…もっとと彼女を支配したいと昂らせた。


「嫌だよ!」


俺はマルカを水辺から引っ張り出し、石畳の上に這いつくばらせる。


泣いている?


焚き火の音とせせらぎの音…そこに彼女のすすり泣く声が聴こえてきたが、


俺は自分の欲を優先し這いつくばる彼女を無碍に扱ってしまった。


「悪かったって。どうかしていたんだ昨晩は…」


自分の欲を優先した男と、無理やりされた女。

二人旅で微妙な距離感ができてしまった。勿論、全責任は自分にある。俺から一定の距離をとり座りながら睨見つけるマルカ。


(その顔が、支配欲を強くさせるんだ…)

とは、言えない為に、何度も何度も平謝りをした。


もう、すっかり日は昇りきっていた。

ダラダラしなければ明日中に砦につくとの事だったが、

既にダラダラしていた。


マルカ(銀龍)は【単純】だ。彼女は人になりきろうとしている。だから、【ツガイ】ならこんな日もあると諭した。勿論、根拠のない適当な言い分だ。


「私…こういうの嫌い!」


距離を開けて声を張り上げるマルカ。

埒が明かないと思い俺は…ゆっくり近づき、優しく抱きつき「ごめんなさい」と耳元で囁いた。


「次…無理やりしたら、少し実家に帰らせてもらいますので!」


マルカの口癖なのか?

(銀龍の変な学びの成果なのか?)


とりあえず、マルカの怒りは収まりつつあった。


「ヒリヒリする…もう!」


道中を進み砦が先に見えてきた。彼女のヒリヒリする発言はこれで何度目だろうか?

【単純】だと思っいたが意外と【根に持つ】タイプかも知れない。龍心は良くわからない。


「止まれ!通行証は?」


砦入口で門兵に俺達は止められた。通行証が必要だとは思っていなかった。


「ない?なんだ田舎もんか。」


「田舎もんがグルジア領内に何用だ?」


二人の門兵から問い詰められる俺達。

正直に「勇者一行に復讐したくて」なんて言えば即、縄付き詰所だろうが、まだ運はある。

グルジア領の名前がでたからだ。農村の話しと繋げる事ができる。


「山で狩猟をしている者だが、麓の農村で【徴兵】の話しをきいてな。俺も亜人との戦闘経験はある。」


俺の事実と多少の嘘を混ぜた会話だったが、どうやら正解側に近づけた。


「【志願兵】か其奴は助かる。確かに腕っぷしは良さそうだ。ここの兵長には話しをつけておく、中にはキャラバン隊も滞在している。今晩は砦ないで休まれよ。」


兵になりたいと言っただけで門兵の態度もがらりと変わるものだ。


「あんたは…なんだ?」


しまった。俺の後ろで街人の良くある衣服を身に着けているマルカ。志願兵の同行者にも、旅人にも見えないだろう。


(なんて話しをつける?)

(嫁だとして…なぜ同行させる?)

(知り合い…友人。違う。どれが一番都合が良い?)


「私は…無理やりされた!」


マルカ。それは昨晩の話しだろう。兵達はマルカを見て、俺を見た。そして沈黙したのち片側の同年代の門兵が俺に肩を組み耳打ちをする。


「あんた…やるじゃねぇか。慰み者付きで志願かよ。肝っ玉すわりすぎだろ!まぁ身体も悪くねぇし顔も美人の類だがよ。あれは歳上だろ?なぁそうだろ?俺も女には目がねぇ方でよ。熟れた身体が良いって話しだろう?

…だがなぁ。多少歳が離れると別れがめんどくせぇんだ。【嫉妬】に【執着】様々だ。あんたは見た目も悪くねぇし。腕っぷしもありそうだから…もしかしたら出世が見込めかもしれねぇ。だから早めに切り捨てるのが一番だ。出世したら女は好きなだけ手に入る。今だけの【欲望】で道を外れんなよ!」


門兵はそう言いながら俺の下半身を強く握った。


結局俺達は怪しまれなく砦内に入れたのだが、唯一の誤算は不意な下半身へのダメージだろうか?





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